2013年11月30日土曜日

K.279 ピアノ・ソナタ(第1番)ハ長調 第1楽章

モーツァルトは生涯で18曲のピアノ・ソナタを残していますが、この曲はその第1番です。

この頃「ピアノソナタ」というジャンルはまだ新しく、ピアノフォルテとの出会いや、ヨーゼフ・ハイドンとエマヌエル・バッハの作品との出会いに触発されて作曲したとも推測されています。1775年ミュンヘンで書かたれ「デュルニッツ・ソナタ集」と呼ばれる6曲のソナタ集の第1番でもあります。

ピアノ・ソナタ(第1番)ハ長調 K.279 (189d)第1楽章 Allegro ハ長調

余談
あれほどの早熟の天才モーツァルトが、19歳までピアノ・ソナタを書かなかったことは意外に感じられます。
同じ時期に交響曲は既に30曲くらい書いています。
なぜこのジャンルの作品の誕生が遅かったのか。モーツァルト研究家アインシュタインの言葉を借りれば

『モーツァルトははじめのうちはピアノ・ソナタまたは変奏曲を書きとめる必要を感じなかったが、それは、彼がそういう曲を即興演奏したからである。だから、1766年のはじめハーグで出版された変奏曲(K.24, 25)は、天才児の即興演奏の公開された記録にほかならない。ごく僅かあとの数曲のソナタは、一時は姉が所有していたが、失われてしまった。四手のための作品はどうしても書きとめられなくてはならないので、そういう数曲の作品だけが書きとめられている。』

と述べられています。もっともな理由です。 つまり、自分で即興で演奏できて、作品は全て頭の中に残っているのですから、わざわざ書き留める必要がなかったのです。
しかし、こういう作品を楽譜にして出版できるようになってからは事情は変わってきます。

2013年11月28日木曜日

K.183 交響曲 第25番 ト短調 第1楽章

冬の日本海は厳しい寒さと、横殴りの強風で容易に近づくことは出来ません。
そんな季節がもうすぐやってきます。今日も雪こそ降りませんでしたが、凄まじい風でした。
こんな日本海の光景に接すると、モーツァルトの交響曲第25番ト短調を思い出します。

冒頭の疾風怒涛の旋律が極めて印象的です。
モーツァルト17歳の時、3回目のイタリア旅行からザルツブルクに帰って間もなく書かれた9つの交響曲(第22番から第30番まで)の一つですが、他の交響曲とは異質で切迫した緊張感に支配されています。
彼の数ある交響曲の中で主調が短調なのは後の第40番 K.550 とこの曲だけで、しかも共にト短調であるということはあまりにも有名で「宿命の調性」ともいわれています。

交響曲 第25番 ト短調 K.183 (173dB)第1楽章 Allegro con brio ト短調

2013年11月26日火曜日

K.113 ディヴェルティメント(第1番) 変ホ長調

クラリネット五重奏曲が書かれた日から、遡ること18年、15歳の少年モーツァルトがクラリネットを最初に用いた作品を聴いてみます。

当時クラリネットはまだ発展途上の楽器で、演奏出来る人も少なかったようです。
楽器編成はヴァイオリン2、ヴィオラ(自筆譜では複数)、バス、クラリネット2、ホルン2となっていますが、後にクラリネットのない場合のバージョンも残しています。
ゆったり流れる旋律と管楽器の柔らかい響きに心がなごみます。

ディヴェルティメント 変ホ長調 K.113  第2楽章 Andante 変ロ長調

2013年11月24日日曜日

K.581 クラリネット五重奏曲 イ長調 第1楽章


晩秋の物悲しい季節になるとこの曲が心に染み渡ります。

室内楽の至宝ともいわれる、あまりにも有名な曲です。モーツァルトの盟友であったクラリネット奏者のシュタドラーを想定して、1789年9月に書かれています。
晩年のモーツァルトの澄み切った境地を映し出すような、自然体で流れる豊かな楽想と慈愛に溢れた響きは正に『人類の至宝』というにふさわしいものです。

クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 第1楽章 Allegro イ長調

◆余談◆
この曲はクラリネット五重奏曲というジャンルで、歴史上最初に書かれた作品かと思われます。
最初に書かれていながら、既に完璧な作品となっているために、その後に同じジャンルの曲を書いている作曲家にとっては超えられない壁となっているように思われます。