2017年4月12日水曜日

K.375 セレナード(第11番) 変ホ長調 第1楽章

1781年に書かれた管楽器のためのセレナードを聴いてみます。
この曲は10月にウィーンの宮廷画家ヨーゼフ・フォン・ヒッケルの義妹のために書かれました。この時にはクラリネット、ホルン、ファゴット各2本の計6管の編成でしたが、翌年7月に何らかの事情でオーボエ2本を追加した版も存在します。この辺はお客様のリクエストに応えながら柔軟に対応していたものと思われます。
セレナードやディヴェルティメントはザルツブルクの大司教に仕えていた頃も沢山作曲しましたが、気に入らない上司のために書くのと、音楽がわかる依頼主のために書くのでは、モーツァルトのモチベーションは随分違っていたことでしょう。
この曲は、当時の楽師たちが、美しい曲へ敬意を表すために、モーツァルトの自宅の中庭に出向いて演奏していった、という逸話があります。
全体は5楽章構成になっていて、この第1楽章は行進曲風のトゥッティで始まり、いくつかのテーマを繰り返しながら、ゆったりと流れていきます。ここでの演奏は初版の6管のものです。


セレナード 変ホ長調 K.375/第1楽章 Allegro maestoso

<写真>新潟県五泉市の水芭蕉公園にて 2017年3月末撮影)

2017年4月10日月曜日

K.448 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 第3楽章

第3楽章はモルト・アレグロ、ニ長調、4分の2拍子。
冒頭、第1ピアノによって示される快活なテーマは、K.331のトルコ行進曲に似た音型を持っています。このテーマが何度か繰り返して演奏されるロンド形式になっています。
途中短調のテーマをはさみながら、終始軽快に走り抜けるように華麗に曲のフィナーレを迎えます。
またこの楽章では「第1ピアノのパートは、高いFis---というモーツァルトが他の鍵盤楽器作品では決して使わなかった音---を含んでいる。……中略……彼女(アウエルンハンマー嬢)が高いFisを(高いGも)備えたより新しい楽器を所有していたため、モーツァルトは面白がって彼女のためにその音を使ったのだと思われる。」(モーツァルト全作品辞典、P375 より引用)とロバート・D・レヴィンは述べていますが、モーツァルトの新しい楽器に対する前向きな姿勢が感じられます。


2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448(375a)/第3楽章 Molto allegro

参考■フォルテ・ピアノでの演奏(YouTubeより)
   Link▶▶ Sonata for Two Pianos in D major, K. 448 - (Ⅲ) Molto allegro 

余談・「きらクラ!」新年度スタート
冒頭でブロ友の山好きかっちゃんさんのお便りが紹介されました。ホームページのイラストについてのタイムリーな内容で、新しいイラストでステッカーを作っては……の提案に、何と!!!!! もう出来上がっているとのことで、素晴らしいリスナーとスタッフのシンクロに感激しました。
また、DONの正解音楽・当選音楽が新しくなって新鮮な感じです。不正解音楽は不朽の名作(?)のため変更なし。
そして今回のBGM選手権のお題は、金子みすゞさんの琴線に触れる詩でしたが、4つ紹介されたBGMはいづれも素晴らしいもので、詩の世界が一層魅力的に響きました。特にベストのオルフ作曲 歌劇「月」のラストシーンは冒頭の子どもの声も効果的で、秀逸な作品でした。カルミナのイメージしかなかったオルフに、こんな曲があったなんて全く知りませんでした。
今週は名付け親の出題がありませんでしたが、来週は「ご無沙汰合唱団」の「愛のあいさつ」特別編成かな?

2017年4月9日日曜日

K.448 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 第2楽章

第2楽章はアンダンテ、ト長調、4分の3拍子、ソナタ形式で書かれています。
はじけるような快活さに満ちた第1楽章から一転して、ゆったりと歌うような優美なメロディーが2台のピアノが対話するように受け継がれていって、美しい均衡美で統一された心安らぐ楽章となっています。


2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448(375a)/第2楽章 Andante ト長調

参考■フォルテ・ピアノでの演奏(YouTubeより)
   Link▶▶ Sonata for Two Pianos in D major, K. 448 - (II) Andante

余談
ここしばらく三寒四温の続いた当地でしたが、ようやく桜の開花宣言が出始めたようです。
もう1週間ほどで満開になるのでしょうか。雪国にも輝かしい春がやって来ました。
そして今日は「きらクラ!」も新年度!! ふかわさんも気合十分のようです。
   Link▶▶ ふかわりょうofficial Blog より「6年目のハーモニー」

2017年4月7日金曜日

K.448(375a) 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 第1楽章

モーツァルトは2台のピアノのためのソナタを何曲か手掛けましたが、完成したのは意外にもこのK.448の1曲のみです。(他は未完成の断片として数曲が残っています。)
作曲されたのは1781年の11月頃で、例の弟子のアウエルンハンマー嬢とのプライベートの演奏会のために書かれました。その演奏会は大成功で、この曲は評判がよく、繰り返して弾いたと、モーツァルトは父親宛ての手紙で報告しています。
実際この曲はその後、何度も演奏会で取り上げられることになったようです。
2台のピアノのためのソナタは、特定のピアニストや演奏会を想定して作曲されていたようで、この曲も当然アウエルンハンマー嬢の力量を十分考慮して作られているものと思われます。
また、この曲は映画「のだめカンタービレ」でも取り上げられて、のだめと千秋の丁々発止のピアノの掛け合いが印象的なシーンを展開していました。


2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448(375a)/第1楽章 Allegro con spirito

<写真>新潟市北区福島潟の菜の花畑とニ王子岳・飯豊連峰の遠景(4月6日撮影)

余談
この曲が作曲された頃は、現代のピアノの前身であったフォルテ・ピアノがどんどん進化しているまっただ中で、その最新の楽器の性能をモーツァルトは敏感に感じ取って、曲作りに反映させていたようです。
当時のフォルテ・ピアノでこの曲を演奏したものを私は聴いたことがありませんが、いずれ機会をみて聴いてみたいと思っています。きっと現代のピアノとは随分違った雰囲気になるように思います。
フォルテ・ピアノでの演奏
ネットで探していたら、YouTubeにフォルテ・ピアノでの演奏がアップされてました。
やはり響きがソフトで親しみやすい感じの演奏になっているように思います。
  Link ▶▶ K. 448 - (I) Allegro con spirito  played by two fortepianos

2017年4月6日木曜日

K.380(374f) ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 第3楽章

モーツァルトがウィーンに定住した1781年に書かれたヴァイオリン・ソナタを聴いていますが、今日は「アウエルンハンマー・ソナタ」集の最後の第6曲目を取り上げます。 全体は3楽章からなっていて、非常に華麗で堂々とした構成になっています。
この第3楽章はアレグロで変ホ長調ですが、特徴的なのは、まるで協奏曲のようなロンド形式の楽章になっていることです。
スキップするような軽やかな主題の後に、ピアノとヴァイオリンの力強いユニゾンがあり、ピアノのオーケストラ風の分散和音の伴奏があり、カデンツァ風のコーダさえついて、とてもダイナミックな音響を生み出しています。曲集の最後を飾るのにふさわしい見事なフィナーレです。


ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.380(374f)/第3楽章 Rondeau(Allegro)

余談
「アウエルンハンマー・ソナタ」集のうちの3曲の一部楽章を聴いて来ましたが、どの曲も実に魅力的で、モーツァルトの涸れることのない豊かな才能の大海を感ぜずにはいられません。
この時期にモーツァルトはザルツブルクの大司教とは完全に決別して、これ以後、自由な作曲家としてその才能の爆発ともいえる、数々の名作を生みだす黄金期を迎えることとなります。

2017年4月3日月曜日

K.377(374e) ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 第2楽章

今日は「アウエルンハンマー・ソナタ」集の第3曲目の第2楽章を聴いてみます。
この曲は K.376 の次に作曲されましたが、調性がヘ長調で同じために、間にマンハイムで作った K.296 ハ長調 をはさんで第3曲目として出版されたようです。
この楽章は物悲しいニ短調で、主題と6つの変奏で構成されています。
ヘルマン・アーベルト(1871-1927、ドイツの音楽学者)はこれらの変奏を「憂鬱な諦念を示唆し、シンコペーション音型の発展は責めさいなむような効果を持つ。」といっています。
またこの楽章は、後に作られる有名な「弦楽四重奏曲 ニ短調 K.421(ハイドンセット第2番)」のフィナーレを予示しているといわれています。


ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.377(374e)/第2楽章 Andante ニ短調

Link ▶▶  弦楽四重奏曲 ニ短調 K.421 第4楽章

余談◆ きらクラ! 重大発表!?
本日の「きらクラ!」は冒頭に「重大発表が最後にある」とのことで、ちょっとドキドキしましたが、ふかわ流ひっぱり戦略?で「次週から放送時間が5分短縮!」とのことで、大笑いしてしまいました。
全国のリスナーさんの「ああーーーっ、もっと聞きたい!!」効果はいかばかりか、来週体験してみましょう!
また、ふかわさんはご自身の口からは言いづらかったようですが、NHKの局内で「きらクラ!」はやはり高く評価されているようで、ファンとしてはとても嬉しくなりました。

2017年4月2日日曜日

K.376(374d) ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 第1楽章

1781年の夏にモーツァルトは6曲からなるのヴァイオリン・ソナタ集、いわゆる「アウエルンハンマー・ソナタ」をまとめています。そしてこの曲集は年末にアルタリア社から「作品(2)」として出版されました。1778年に出版された「選帝侯妃ソナタ」以来の作品集です。
自立した作曲家として楽譜の出版も大切な収入源であったと思われますが、著作権が確立していなかった当時は、海賊版も横行していたためか、モーツァルトに大きな収入はもたらさなかったようです。
このK.376はこの曲集の第1曲にあたります。
第1楽章はフォルテの和音で始まり、これにヴァイオリンの柔らかい旋律が続いています。全体を通して簡明で生き生きとした楽章です。


ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.376/第1楽章 Allegro

<写真>近くの田圃のわき道に顔を出した土筆

余談
この曲集はアウエルンハンマー嬢(オーストリアの実業家アウエルンハンマー氏の令嬢ヨゼファ)に献呈したので、「アウエルンハンマー・ソナタ」と呼ばれています。
このアウエルンハンマー嬢は才能豊かなアマチュア以上のピアノ奏者であったようで、モーツァルトも高く評価していたようです。以後彼女との2台のピアノのためのソナタ K.448や2台のピアノのための協奏曲を共演していたようです。
この才能豊かな彼女はモーツァルトに心をよせていたようですが、モーツァルトは彼女に対して音楽以外には全く興味を示さず、むしろ嫌悪していたようです。
そのことは、1781年8月22日付の父宛の手紙にかなり辛辣に書かれています。
「……では娘はどうか。画家が悪魔を本物らしく画こうと思ったら、この娘の顔に助けを求めるほかない、と言ったところです。……」(岩波文庫「モーツァルトの手紙(下)」P16より引用)
モーツァルトが残した多くの手紙は、彼の音楽とは裏腹に世俗的でえぐい内容も多く当惑してしまいます。普通ここまで書かないよ……。