2017年12月31日日曜日

K.284(205b) ピアノ・ソナタ(第6番)ニ長調

2017年の大晦日を迎えました。
今年、最後の曲はピアノ・ソナタ(第6番)ニ長調を聴いてみます。
1775年の初頭にミュンヘンで書かれた、6曲のソナタ(K.279~K.284)の最後にあたる曲です。音楽の後援者であったタデーウス・フォン・デュルニッツ男爵のために作曲されました。
この曲は前の5曲に比べ、フランス風のギャラントな作風となっています。
ここで聴く第2楽章はフランス語で「ポロネーズ風ロンド」と書かれています。A-B-A-C-B-Aという形をもっていますが、ポロネーズのリズムはさほど強調されておらず、細かな装飾を散りばめた、優美な歌が支配的になっています。


ピアノ・ソナタ(第6番)ニ長調/第2楽章 Andante イ長調 3/4 ポロネーズ風のロンド形式

余談
今年も1年間、長い中断等を挟みながらの拙い内容のブログでしたが、お付き合いいただき誠にありがとうございました。
オーストリア旅行後の9月から、普段あまり聴かないザルツブルク時代の作品を多く取り上げました。このことは私にとりまして、とてもよい勉強になりました。
またこのブログは、今までランダムにモーツァルトの作品を取り上げて来ましたが、長く経過すると統一性に欠ける印象が拭えません。時系列でもない、ジャンル別でもない・・・と見ていただく方には分かりにくいと思われますが、どうかお許しください。
全体像を掴みやすくする新たなサイトの開設も考えておりますが、かなりハードルの高い作業になります。
それでは音楽を愛する皆様、よいお年をお迎えください。

2017年12月16日土曜日

K.195(186d) 聖母マリアのためのリタニア

モーツァルトはザルツブルク時代に4曲のリタニア(K.109、K.125、K.195、K.243)を残していますが、その中からこの時期(1774年)に書かれた第3曲目のリタニアを聴いてみます。
この曲は、イタリアのロレートのサンタ・カーザの聖マリア礼拝堂の壁に刻み込んであったテクストによるため「ロレートのリタニア」とも呼ばれます。
5曲から構成されていて、前作から一段と充実した内容になっていて高く評価されています。
ここで聴くアニュス・デイは深い感情を湛えたソプラノの独唱で始まり、広い音域のコロラトゥーラを繰り広げるソロにコーラスが2回応答し、祈りの言葉で静かに曲を閉じます。


聖母マリアのためのリタニア K.195(186d)/第5曲 アニュス・デイ(神の仔羊)Adagio ニ長調

<写真>オーストリア デュルンシュタインの修道院教会にて

◆ 追悼 岩本賢雄先生 ◆
私の部屋にはいつも右のモーツァルト像が飾ってあります。
岩本先生から頂いたもので、イラストは先生のご友人の大関氏が描かれた作品です。
先生は高校で英語の教鞭を執ってらっしゃいましたが、音楽への造詣も非常に深く、赴任された高校で吹奏楽部を立ち上げ、ご自身で指導されて県下トップレベルに導かれました。また県下の高校文化部活動をまとめた組織を立ち上げられたり、そのご活躍分野は多岐に渡ります。
そんな先生とお会いできたのは、当地に以前あった「モーツァルト愛好会」という会の集まりでした。その会の中でモーツァルトの全曲をCDで鑑賞しようという企画が始まり、既に退職されていた先生が講師としてお話をしてくださいました。
スコアを片手にした各楽曲への先生の解説は、深い知識に基づいた、とても啓発される内容でした。また先生の語り口からモーツァルトへの愛情・敬愛の念が溢れ出ていて、私は先生のお話を聞くたびに心が暖かくなりました。
その会が事情で解散した後も、先生は個人で「モーツァルト全曲観賞会」を続けられて、数年をかけて全曲観賞を達成されました。その達成記念の会で、右のポートレートをいただきました。

その先生が今月の10日に他界され、先日お通夜に参列させていただきました。
以前より闘病中とは伺っていましたが、何度かコンサートでお姿を拝見していました。
先生に最後にお会いしたのは、7月21日の「前橋汀子 バッハ無伴奏ソナタ演奏会」でした。
当日開演前に近くの公園を散歩していたら、先生が池のほとりで休んでいらしゃる姿が目に入り、僭越ながら声をかけさせていただきました。先生の近況を伺い、私の近況もお伝えしてとても楽しい時間を過ごすことが出来ました。また帰りは車で先生のお自宅までお送りすることができました。
本当にお世話になりました。有意義なお話を沢山聞かせていただき感謝しております。
どうか天国で安らかにお休みください。

2017年12月12日火曜日

K.358(186c) 4手のためのピアノ・ソナタ 変ロ長調

モーツァルトは若い時期に4手のための、つまり1台を2人で弾く連弾用のピアノ・ソナタを3曲書いています。その3曲目が今日聴くK.358(186c)です。
当初1780年頃の作品と思われていて、K番号358が振られましたが、その後の研究で1774年頃ザルツブルクで書かれたとわかり、K6版では「186c」の番号になっています。姉のナルネンと一緒に弾くために書かれたものと思われます。
モーツァルトはこの作品を気に入っていたようで、その後1777年の母とのパリ旅行の際に、この楽譜を送って欲しい旨を父宛の手紙に書いています。またウィーンに移ってからも、コンスタンチェやお弟子さんと連弾した記録が残っています。
全3楽章ともソナタ形式で、ここで聴く第2楽章はミラノ四重奏曲第6番(K.160)の冒頭主題が用いられています。


4手のためのピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.358 (186c)/第2楽章 Adagio 変ホ長調

<写真>ザルツブルク 旧市街広場から望むホーエンザルツブルク城

余談 今回の「きらクラ!
すっかり師走ムードになってまいりました。
当地は寒風が吹き荒れています。NHK-FMではバイロイト音楽祭の放送が始まりました。
今週の「きらクラ!」では先週のコンサートの拍手の件での投稿がいくつか読まれました。 冒頭のチャイコモチさんの御意見に私も全く同感です。コンサートの雰囲気を台無しにするフライング拍手を防ぐためには、指揮者(演奏者)が演奏を終えて挨拶体勢に入ってから心を込めて拍手をすればいいのだと思います。先を争うように拍手する必要は全くないと思います。むしろ早すぎる拍手は余韻を壊してしまう弊害があります。
放送の後半はクリスマス協奏曲、マーラーの歌曲、バッハのカンタータ等しっとりと聴き入ってしまいました。「きらクラ!」も年末ムード加速中!!
最後のラジネコールで不肖私の2ndラジネ「ひま人28号」を読んでいただき感激! 今度こそ本採用を目指して頑張るぞ!!・・・・と言っても最近のコダマッチの壁は高い・・・

2017年12月9日土曜日

K.191(186e) ファゴット協奏曲 変ロ長調

ファゴットという楽器は、どこかユーモラスで暖かい響きをもっていて、オーケストラの中でも独自の存在感を放っています。
モーツァルトはこのファゴットのために5曲もの協奏曲を書いた可能性があるそうですが、残念ながら現存しているのはこの1曲のみです。
1774年6月にザルツブルク大司教に雇われたファゴット奏者のために書かれたと思われます。モーツァルトが宮廷音楽家として生活し始めた時期でもあり、ギャラントな作風になっています。
この作品は、ファゴットという音域と音量に限界がある楽器の欠点を補う、音色の豊かさ、ユーモア、幅広い音程跳躍などの特質をモーツァルトが熟知し、見事に引き出した名曲として愛され、数少ないこの分野の最高傑作に数えられています。


ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191(186e)/第1楽章 Allegro

<写真>ザルツブルク 旧市街 広場の大道芸人?(2017年9月)

2017年12月5日火曜日

K.192(186f) ミサ・プレヴィス ヘ長調【御命日に寄せて】

今日はモーツァルトの226回目の御命日です。
この世に残してくださった多くの音楽に感謝しつつ、天上界での御冥福をお祈り申し上げます。(勝手なお願いですが、もし天上界で我が家にいた猫たちをみつけたら遊んでやってください。)

そこで今日は、ザルツブルク時代の多くの教会音楽の中でも高く評価されているミサ曲を聴いてみます。作曲されたのは1774年、モーツァルト18歳の時、ザルツブルク大聖堂のために書かれました。
独唱4部、4部合唱、トランペット2、トロンボーン3、ヴァイオリン2部、バス、オルガンという簡略な編成ながら、対位法を駆使した緊密で充実した作品となっています。全体は6曲からなっていて、ここでは最終の第6曲<アニュス・デイ>を聴いてみます。
オーケストラの悲痛な序奏に始まり、ソプラノ独唱に引継がれます。途中からヘ長調、アレグロ・モデラートとなり軽やかなイタリア的な雰囲気で曲を閉じます。


ミサ・プレヴィス ヘ長調 K.192(186f)/VI アニュス・デイ Allegro ニ短調

<写真>ザルツブルク大聖堂 天上壁画

余談 今日の「きらクラ!
最近の「きらクラDon」は白旗降参続き。ドニゼッティさんは守備範囲外。今回も皆目見当がつきません。世の中にはまだ知らない名曲が山のようにあります。「きらクラ!」を通じて大いに楽しませていただきます。本当に有難いことです。
空耳の『芋飯(いもめし)にカレー』には大笑い!瞬間芸ではなく、おどろおどろしく畳みかけてくるインパクトは強烈で、歴史的な名作(迷作)ではないかと思いました。さんちゃんさんの空耳力には感服!
そしてBGM選手権は今回もとても刺激的でした。3つの曲の雰囲気が実に好対照で、詩の世界が音楽によってがらりと変わる様は正にBGMの真骨頂。
ベストに選ばれた奈良県の≪障子破れてさんがあり≫さんはラジネで座布団1枚! さらに選曲された間宮芳生作曲の「ヴァイオリン協奏曲」…(知ってることが凄い)…はこの詩のためにあるのではないかと思われるほどのマッチングでした。
リスナーの方々の素晴らしいセンスと、それを選ばれるスタッフの方々には感謝・感謝です。
「きらクラ!」がますます素晴らしい番組になっていくので、本当に日曜日が楽しみです。

2017年12月1日金曜日

K.172 弦楽四重奏曲(第12番)変ロ長調 

1773年に書かれたウィーン四重奏曲の5番目にあたる曲を聴いてみます。
この曲は格別新しい試みをしたものではなく、むしろ伝統に即した作品といえるもので、新味はないかわりに安定した美しさを具えています。
この第2楽章は第1ヴァイオリンが歌いあげる抒情的な旋律に、第2ヴァイオリンとヴィオラが拍をずらしながら分散和音を刻み豊かな背景を彩っています。
この第1テーマの旋律は「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「愛の神様」を思い起こさせます。


弦楽四重奏曲(第12番)変ロ長調 K.172/第2楽章 Adagio 変ホ長調

<写真>新潟市西蒲区夏井のハザ木と弥彦山(11月撮影)

余談---愛猫に捧げる---
早いものでもう師走を迎えました。
実は先月下旬、我が家の4匹の愛猫が相次いでインフルエンザに罹患し、2匹は回復したのですが、残念ながら高齢(17才:人間でいうと80~90才)の2匹が何度かの点滴治療も効果なく天に召されました。
生き物を飼っていると必ずお別れは来るとはわかっていても、やはり辛いものです。特に家人は自身の子供のように可愛がっていたので、その悲しみ・喪失感を思うと言葉を失います。
17年間本当にありがとう。ゆっくり天国で休んで、気が向いたらまた遊びに来てね。