2018年3月28日水曜日

K.398(416e)6つのピアノ変奏曲 ヘ長調

今日から1783年の作品を主に取り上げていきたいと思います。
モーツァルトがウィーンに定住して2年目、自立した作曲家としてとても充実した時期を迎えます。
演奏会も頻繁に開かれましたが、この変奏曲は3月23日の皇帝ヨーゼフ2世も臨席した会で即興で演奏されたものです。この会は大成功で、大変な盛り上がりを見せ、この変奏曲はアンコールでも再演されたようです。
曲の主題は、当時コミック・オペラ作家として活躍していたパイジェルロのオペラ『哲学者気取り』の中の「主よ、幸いあれ」から取られています。この主題は22小節と長いものであるため、変奏は繰り返しなしで、非常に自由な形で進行していて、実際の演奏会での即興で弾かれた雰囲気が伝わってきます。
この曲の楽譜は、演奏会の後にモーツァルトが書き留めたと思われています。そして1786年にはウィーンのアルタリアから印刷譜として出版されました。


6つのピアノ変奏曲 ヘ長調 K.398(416e) (フォルテ・ピアノによる演奏)

<写真>新潟市・白山公園の梅(2018.3.28撮影)

余談
連日さわやかな晴天が続く今日この頃、当地は梅が満開の時期を迎えています。 青空の下、梅の可憐な花々は、春の喜びに光り輝いているようです。
モーツァルトの音楽が一番似合う時期が到来しました!

2018年3月26日月曜日

K.427(417a)ミサ曲 ハ短調

ウィーンに移り住んでから、モーツァルトは純粋な教会音楽をわずか3曲しか書いていません。ザルツブルクの大司教に仕えていた頃、その命に従いあれだけ頻繁に作曲していたことを考えると隔世の感があります。
その僅か3曲は、遺作となったレクイエムK.626、アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618、そしてこのハ短調ミサ曲で、いずれも大きな存在感を放っています。
このミサ曲は、モーツァルトが他人からの注文・依頼でなく、自発的な動機で書いた極めて稀な曲と考えられています。というのは、1782年に父親の反対にあったコンスタンチェとの結婚に際して「結婚にこぎ着けられたならば、ミサ曲を1曲書いて奉納いたします」と神に願をかける旨の手紙が残っているからです。
そして1783年にコンスタンツェを連れてザルツブルクに帰省した際に、この曲の未完だった部分を何らかの形で埋めて、聖ペテロ教会で演奏されたといわれています。 最終的にキリエとグローリア以外は未完に終わり、その後の補完された形で演奏されています。曲の編成は非常に大きく、演奏時間も1時間近くかかります。
ここで聴く第1曲のキリエは、弦楽の悲痛な前奏で始まり、雄渾な合唱が歌い上げ、典雅なソプラノ独唱が続きます。このソプラノは妻のコンスタンツェに歌わせる事を想定したものといわれています。


ミサ曲 ハ短調 K.427(417a)/Kyrie Andante moderato ハ短調

余談
関東は桜が満開のようですが、当地はもう暫くかかりそうです。雪融け後で花の開花前という今の時期は、なんとも殺風景ですが、これから緑も芽吹き待ちに待った百花繚乱の季節がやってきます。こころも浮き立ちます。
そんな今日の「きらクラ!」で、ドビュッシーの幻想的で浮遊感のある音楽は、心を夢心地にさせてくれました。比類ない独自の世界を切り開いて下さった偉大な作曲家に感謝!!

2018年3月19日月曜日

K.386 ピアノと管弦楽のためのロンド イ長調

この曲の自筆譜は、モーツァルトの死後、1799年に妻のコンスタンチェによって、他の多くの自筆譜と一緒に出版社に売却されました。その際この曲の最後の1枚が欠けていたため、この曲はさらに転売を繰り返され、散逸してしまう運命を辿ります。
その後、近年まで何人かの研究者の努力によって再収集され、そして再現され現在の形で演奏されています。
このように、モーツァルトの自筆譜の中には、部分的に散在していたり、散逸しているものも少なくありません。この曲のように幸い再収集・再現されたものもあれば、失われてしまったものもあります。
このロンドは1782年に、本来はピアノ協奏曲第12番 K.414(385b)の終楽章として書かれていたと思われますが、途中で放棄されてしまった草稿、または代用楽章と考えられています。確かに K.414の主題との共通点があります。
アレグレット、4分の2拍子で、軽快なピアノのメロディーとオーケストラの明るい音色の協演が、心地よく響きます。フォルテピアノの演奏で聴いてみます。


ピアノと管弦楽のためのロンド イ長調 K.386 /Allegretto

<写真>ヴァッハウ渓谷 デュルシュタインにて

余談今日の「きらクラ!
「びっくりシンフォニー」の投稿(同郷の≪調子のよい鍛冶屋のせがれさん≫)がふかわさんに大受け!!放送事故級の涙の大笑いを誘いました。私も小学校の時に似たような音楽の黒歴史があり、つられて大笑いしてしまいました。
「はじクラ」ではジョージ・ウィンストンの演奏が流れました。ジャズとクラシックが上品に融合されていて、とても心地よく聞かせていただきました。
そして、BGM選手権のお題が発表されました。当然のドビュッシーからの選曲となりますが、ドビュッシーの曲はBGM選手権で最も採用の多い作曲家のような気がします。今回のお題には私も久しぶりにボツ覚悟でトライしてみますが、どの曲をあててもそれなりに収まり、なかなか個性を出しにくく、ドビュッシーの作品数を考えると、選曲が他の投稿者と大いにかぶりそうな気がします。

2018年3月13日火曜日

K.383 アリア「わが感謝を受けたまえ、やさしい保護者よ」

1782年に書かれたソプラノのためのコンサート・アリアを聴いてみます。
この年、モーツァルトはオペラ『後宮からの逃走』K.384の作曲に傾注していましたが、このアリアはその間にアロイジア・ウェーバーの音楽会のために書かれたと推測されています。
アロイジアは申すまでもなく、モーツァルトが恋い焦がれたソプラノ歌手で、素晴らしい技量の持ち主でした。彼女のために書かれた何曲かのアリアはその高い技量を存分に発揮させる作品になっていますが、この曲に限っては平易なつくりになっていて、彼女のたのために書かれたものではないという説もあります。
メロディーは『後宮からの誘拐』第2幕フィナーレの四重唱に似ています。
作詞者は不明ですが、ドイツ語の歌詞の内容は……
『私の感謝をお受けください、心やさしい保護者(パトロン)たちよ! その感謝を、私の心が語る通りに、そんなに熱烈に声高くあなたに告げることは、男ならできもしましょうが、女にすぎない私にはとてもできは致しません。でも、お信じください、私は生涯の間あなた方の仁慈をけっして忘れることはないでしょう。』
となっていて、コンサートの最後に感謝の気持ちで歌われていたことも考えられます。


アリア「わが感謝を受けたまえ、やさしい保護者よ」K.383 Andante ト長調

余談今日の「きらクラ!」BGM選手権
今回のお題の「ロメオとジュリエット」というと、プロコフィエフの「モンタギュー家とキュピレット家」の音楽が私の頭に貼りついてしまっていて、どうにも新しいイメージがわかず無念の不投稿。 しかし、採用されたリスナーの皆様の作品は、今回も粒ぞろい!!
1曲目「テレマンのアリア」…しっとりした抒情的な旋律がピッタリ。
2曲目「ハンガリー舞曲第1番」…全く予想外の選曲。切迫感が伝わってきて意外なマッチング。
3曲目「エクリプス」……尺八と琵琶の音楽を当てるなんて…ショッキング。凄い発想。参った。
4曲目「スクリャービンのノクターン」…シンプルで繊細なピアノの調べが二人の心情に寄り添うようで実に美しい。この作品の投稿者・出入飛鳥さん(やぱげーのさんの分身)は兄弟合わせて17回目(?もっとかも知れません)の採用かと思われます。驚異的な採用実績で正にMr.BGM選手権!
どれも甲乙つけがたい高レベルの作品ばかりで、たくさんの感動をいただきました。ありがとうございました。

2018年3月4日日曜日

K.415(387b) ピアノ協奏曲(第13番) ハ長調/第1楽章

同じ時期に予約演奏会のために続けて書かれた、ハ長調のピアノ協奏曲を聴いてみます。
モーツァルトのハ長調の管弦楽曲によくみられるように、この曲もトランペットとティンパニーが用いられていて、祝祭的で堂々とした曲想を奏でています。同じハ長調の名作ピアノ協奏曲(第21番) K.467やジュピター交響曲を彷彿させる風格を感じさせます。
また、当時モーツァルトが研究していた対位法的な手法が、ピアノ協奏曲では初めてこの曲に反映されているともいわれています。
初演は1783年3月11日、ブルク劇場におけるアロイージア・ランゲの演奏会でした。そして引き続き3月23日に皇帝ヨーゼフ2世の臨席をあおいだ演奏会でも取り上げられ、大成功であったという記録が残っています。


ピアノ協奏曲(第13番)ハ長調 K.415(387b)/第1楽章 Allegro

<写真> ウィーン フォルクス庭園にて

余談◆  いしかわ・金沢の音楽祭がすごい!!
ここ最近の陽気で、1mもあった雪も瞬く間に溶けてしまいました。春の足音が聞えてきました。
春といえば、当地で開催されていたラ・フォル・ジュルネが緊縮財政のため今年から開催されなくなりました。残念です。
ところで、同じく金沢も昨年からラ・フォル・ジュルネを止めましたが、こちらは何と!!独自企画で、今年はモーツァルトの音楽祭をやるそうです!!
「風と緑の楽都音楽祭2018」のプログラムを見てビックリ!!!!
参加ア―ティストが・・・・・ウラディーミル・アシュケナージ、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、アマデウス室内オーケストラ、ライナー・キュッヒル(Vn)、辻井伸行(pf)・・・・・・等々、錚々たるメンバーのオンパレード!!!
各公演はラ・フォル・ジュルネと同じ形式で、1時間以内で料金は3千円以内!!
こういう企画を見てしまうと、私の全ての自己抑制機能は崩壊してしまいました。
夢中で先行予約に申込、11公演に申し込みました。特にアシュケナージ指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢、辻井伸行さんの、ピアノ協奏曲21番、26番が取れたことはとても嬉しかったです。それにしても、これだけのアーティストを集められる金沢の企画力・都市力は凄いです。『加賀百万石』の威光にただただ平伏すのみです。感謝・感謝で参加させていただきます。
今年のゴールデン・ウィークは、数年ぶりに金沢でモーツァルト三昧です!!!。