2019年1月27日日曜日

【祝 生誕263年】K.485 ロンド ニ長調 

Happy birthday !!  W.A.Mozart!!!
本日はモーツァルトの263回目のお誕生日です。誠に喜ばしい日です。
そこで、1786年の1月に書かれた、軽快なピアノ曲を聴いてみます。
この作品はその愛らしい旋律によって、ピアノの教材にもしばしば用いられ、広く親しまれています。技術的にも比較的平易なため、おそらく当時モーツァルトの弟子だった貴族の令嬢のために書かれたと思われています。
この曲は「ロンド」となっていますが、通常のロンド形式とは違い、単一主題のソナタ形式をとっています。
モーツァルトはこの主題を、子供のころから大好きだった大バッハの末っ子のヨハン・クリスチャン・バッハの曲からとっていて、 K.478 のピアノ四重奏曲の終楽章にも使っていますので、よほど気に入っていたようです。
そしてこの主題は様々な転調を繰り返しながら何度も現れ、曲を華やかに彩って聴く者を魅了します。


ロンド ニ長調 K.485 Allegro

2019年1月26日土曜日

K.410(484d) アダージョ ヘ長調

このアダージョはバセット・ホルン2、ファゴットの三重奏として書かれた27小節の小曲です。作曲時期はケッヘルの6版では1785年の12月頃となっていますが、諸説あり、はっきりはわかっていません。
フリーメイソンのなんらかの儀式のために書かれ、 K.411 とセットの作品と考えられています。
おそらくフリーメイソンの厳粛な雰囲気の儀式で演奏されたのでしょうが、バセット・ホルンの静かに流れる旋律と、ファゴットの温かい低音が美しい和音を響かせて、心に安らぎをおぼえる小品です。


アダージョ ヘ長調 K.410(484d)

余談
昨年の11月から、主に1785年にモーツァルトが作曲した作品を聴いてきましたが、この他にも以前に取り上げたハイドン四重奏曲やト短調のピアノ四重奏曲などもこの年に書かれています。本当に作曲家として脂の乗りきった年であったと云えると思います。
前年末に入会したフリーメイソンの活動をしながら、この先も歴史的な名曲の数々をモーツァルトは書き続けて行きます。

2019年1月21日月曜日

K.483 合唱つき歌曲「親しき友よ、今日こそ」

モーツァルトはフリーメイソンに1784年12月に入会しましたが、その翌年の1785年には多くのフリーメイソンに関わる曲を書きました。この曲もその一つで、1785年12月の作品です。
この頃皇帝ヨーゼフ2世は、当初彼の国家統治にとってフリーメイソンは有益な組織と考えていましたが、次第に皇帝に敵対する組織になりかねないという危惧から、ウィーンに8つあったロッジを3つに再編成し、政府の監視下におくことにしました。
そのためモーツァルトの属していたロッジも「新桂冠希望団」に組織替えされ、その新ロッジの儀式のためにこの曲は書かれました。モーツァルトの本心は別として、皇帝の意図に沿う内容になっています。
テノールの独唱に、男声3部合唱がリフレインされて、オルガンの伴奏が付きます。
【歌詞大意】
親しき友よ、今日こそ歓喜の歌を歌おう
ヨーゼフの善行は胸に3つの炎を燃やす者たちに
我等の希望の冠を新たに飾る。
ヨーゼフのために賛歌を歌おう。
善行は麗しき義務なり・・・・・
(作詞:シットラースベルク、訳詞:東京書籍「モーツァルト事典」より引用))


合唱つき歌曲「親しき友よ、今日こそ」 K.483 Andante 変ロ長調 2/2

余談今週の「きらクラ!感動のBGM選手権
久々のBGM選手権でしたが、私は詩のイメージに合う曲が思い浮かばず早々に撤退。皆様の投稿を興味津津で聴かせていただきましが、目の覚めるような強烈な刺激を受けました。
第1曲:(ジャック天野さん選)
 マレ作曲「聖ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘」
 初めて聴く曲でした。選者は10回以上採用されてらっしゃる常連さん。この曲をもってこれる守備範囲の広さに脱帽。チェンバロの音と規則的なメロディーが詩のイメージにピッタリ!!
第2曲:(夜半亭あぶらー虫さん選)
 ベートーベン作曲「交響曲第5番 第1楽章」
 この超有名曲をこの詩に・・・・素晴らしいセンス!! 詩と曲が合体した時の衝撃度はメガトン級。そしてプレゼンの文章も素晴らしい!! 圧倒されました。
第3曲:(ブルサムヴィッチさん選・・・どなたかの別ラジネ?)
 アルビノーニ作曲「アダージョ」
 これも有名曲ですが、美しくも陰鬱なメロディーが悩める青年期のうごめくような心情を見事に表現していて、これまた秀逸な作品。
第4曲:(ぼたもち大好きさん選・・・快調家族さんの別ラジネ)
 J.シュトラウス2世作曲 ワルツ「ミルテの花」
 爆笑路線炸裂!! あのお題をここまで発想を広げられる柔軟さに感激!! 流石に超常連の快調家族さん!! 先週は驚異の3本同時採用。そして今週はニアピンとBGM、そしてラジネコールに採用!! やはりその投稿のクオリティーの高さが抜きん出ていて、ディレクターさん(今回は“ひょりはん”)の目に留まるんでしょうね―。
4作品ともそれぞれ全く別の視点に立った個性豊かで意外性に溢れた、どれもベストに値するものでした。今年はスペシャルがなかった分、BGM選手権ファンの情熱が結実したような記憶に残る回だと感じました。本当に素晴らしい投稿をありがとうございました。

2019年1月13日日曜日

K.476 歌曲「すみれ」

モーツァルトが同時代の文豪ゲーテと出会った、唯一の作品として有名な歌曲を聴いてみましょう。
完成したのは1785年6月8日で、作曲の動機はわかっていません。また、当初モーツァルトはこの詩がゲーテの作とは知らず、たまたま創作意欲を起こさせる詩を目にし作曲に取り掛かったようです。
3節からなる詩は物語のような筋があり、モーツァルトはそれに即して、全体を通作にして、当時一般的だった有節形式の歌曲の枠を越えた作品に仕上げています。
明るいト長調のアレグレットで始まり、野に咲くすみれと少女の様子が曇りなく描かれる第1節。すみれの少女に対する憧れを歌った第2節。すみれの悲しい運命、そして死をも喜びとする第3節。それぞれの歌詞に応じて細かい転調がほどこされています。
そして、最後の2行はモーツァルトによって書き加えられ、全体を客観的な視点に戻しています。
この作品は、シューベルト以降に展開されるドイツ・ロマン派歌曲の先駆とみなされています。


歌曲「すみれ」K.476/Allegretto ト長調 4分の2

歌詞
Ein Veilchen auf der Wiese stand
gebückt in sich und unbekannt;
es war ein herzig's Veilchen.
すみれが一本草原に咲いていた
ひっそりと身をかがめ、人に気付かれずに
それはかわいいすみれだった
Da kam ein'junge Schäferin
mit leichtem Schritt und munterm Sinn
daher, daher,
die Wiese her, und sang.
そこへ若い羊飼いの少女がやって来た
軽やかな足どりで、晴れやかな心で
そこからこっちの方へ
草原の中を、歌をうたいながら
Ach denkt das Veilchen, wär'ich nur
die schönste Blume der Natur,
ach, nur ein kleines Weilchen,
bis mich das Liebchen abgepflückt
und an dem Busen matt gedrückt!
ach nue, ach nur,
ein Viertelstündchen lang!
ああ、とすみれは思った、もしも自分が
この世で一番きれいな花だったら、と
ああ、ほんのちょっとの間だけでも
あの少女に摘みとられて、
胸におしあてられて、やがてしぼむ
ああ、ほんの
一時の間だけでも
Ach, aber ach! das Mädchen kam
und nicht in Acht das Veilchen nahm,
ertrat das arme Veilchen.
Es sank und starb und freut' sich noch;
und sterb'ich denn, so sterb'ich doch
durch sie, durch sie,
zu ihren Füßen doch!
ああ、それなのに!少女はやってきたが、
そのすみれには目もくれないで、
哀れなすみれを踏みつけてしまった!
すみれはつぶれ、息絶えたが、それでも喜んでいた
ともあれ、自分はあのひとのせいで
あのひとに踏まれて
死ぬんだから、と!
Das arme Veilchen!
Es war ein herzig's Veilchen.
哀れなすみれよ!
それは本当に愛らしいすみれだった

余談
この歌を聴くと、まるですみれと少女の物語が目の前で展開されるオペラを観ているようです。それぞれの歌詞が最高のメロディーと伴奏に命を与えられ、大きな羽根を広げて私たちを包み込んでくようです。
このゲーテの詩には、様々な作曲家によって現在残っているだけで約20の作品があるそうです。私も出来る範囲で調べてみましたが、耳に出来たのはシューマンの作品だけでした。モーツァルトがこれだけの作品を残していると、他の作曲家の作品は輝きを失ってしまいます。

2019年1月10日木曜日

K.475 幻想曲 ハ短調

1785年5月に書かれた、このピアノのためのハ短調の幻想曲は、ニ短調の K.397 とともに名高い名曲です。
モーツァルトがウィーンに移り住んで最初に書いたハ短調のピアノ・ソナタ K.457 と合わせてお弟子さんのフォン・トラットナー夫人に捧げられ、後にウィーンの楽譜出版社から出版されました。この幻想曲はハ短調ソナタの前奏として演奏されることを意図して作曲されと思われています。
曲はテンポの変化によって5つの部分によって構成されています。 最初は重苦しくうごめくような主題が繰り返されるアダージョで、ハ短調で始まり、転調を繰り返しながら流れを強め、やがてニ長調の穏やかな旋律が現れたかと思うと、突然低音のフォルテが鳴り響き第2部のアレグロが情熱的に奏でられます。
その後、アンダンティーノの第3部では典雅な宮廷舞踏の趣を漂わせたかと思うと、再び嵐のような激しい動きのピウ・アレグロの第4部を経て、最後は冒頭のハ短調の重苦しい雰囲気で曲を閉じます。


幻想曲 ハ短調 K.475

余談
この幻想曲は、モーツァルトのピアノ曲の中で、起伏に富んだ非常に変化の激しい作品として異彩を放っています。
この時期にモーツァルトの内面で何か劇的な変化でも起こったのだろうかと詮索してしまうほどです。多くの手紙などの資料からそれを示すようなことが記載されて部分は残っているのでしょうか? 何かモーツァルトの深い魂の叫びを聴くような感じもします。
それはさておき、この作品は非常に変化の激しい曲想にもかかわらず、高い次元での統一感と深い安らぎとを感じさせ、不思議な引力に取り込まれるような魅力に溢れた作品です。
一般的にモーツァルトの作品は長調の明るく屈託のない伸びやかな音楽が広く知られていますが、この作品はそのような認識の対極に位置しています。

2019年1月1日火曜日

【謹賀新年】K.165(158a)/第3楽章「アレルヤ」

あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとりまして幸多い年となりますようお祈り申し上げます。

新年、最初の曲は名高い「アレルヤ」です。モーツァルトが16歳の1773年1月に旅行中のイタリア・ミラノで作曲したモテット「エクスルターテ・ユビラーテ」("Exsultate,jubilate"「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」)の第3楽章にあたります。
イタリアへは計3回、延べ約22か月間滞在して、少年モーツァルトは多大な音楽的刺激を受けたと思われますが、宗教曲においても伸びやかで大衆寄りの音楽をまのあたりにしていたようです。
この曲でも宗教的なのはラテン語のテクストのみで、全体は華やかなオペラ風の仕上がりになっています。特にこの「アレルヤ」はソプラノとオーケストラの輝かしい協奏曲のような賛歌になっていて、演奏会でも独立してよく取り上げられる人気曲です。


モテット「エクスルターテ・ユビラーテ」ヘ長調 K.165(158a)/第3楽章 Allegro "Alleluia"
Link >> 第1楽章 Allegro

余談
昨年末は所用のために、更新が滞ってしまいました。ごめんなさい。
今年も当ブログは稚拙な内容で、気ままな更新となるかと思いますが、お時間のある時にお立ち寄りいただければ幸いです。