モーツァルトのピアノ・ソナタは概ね18曲ありますが、その中で短調は2曲のみで、イ短調のK.310と今日聴くK.457のハ短調で、いずれも演奏機会の多い人気曲となっています。
このハ短調のソナタは、1784年10月14日に完成して、テレーゼ・トラットナー夫人のために作曲されたと記録されていて、7ヶ月後に書かれた幻想曲ハ短調(K.475)と共にウィーンのアルタリア社から出版されています。
トラットナー氏は、当時のモーツァルトの家主であり、書籍出版業を営んでいて、夫人はピアノの弟子でしたが、これだけの曲を献呈されたのですから、かなりの技量の持ち主であったと推測されます。
第1楽章は、力強く上昇する分散和音に始まる緊張感に満ちた第1主題と変ホ長調の第2主題が強弱を交え何度も激しい波のようにダイナミックに展開し、エネルギーを保持しながら静かに楽章を閉じます。
このソナタはその激越的な曲想から、来るべきベートーヴェンのソナタ群を予告するものと評されてもいます。
ピアノ・ソナタ ハ短調 K.457/第1楽章 Molto Allegro
<写真>オーストリア ハルシュタットにて
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