2017年3月25日土曜日

K.373 ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調

今日はモーツァルトがウィーンに定住してからすぐに書かれた、ヴァイオリンとオーケストラのための小品を聴いてみます。
この作品は、ザルツブルクの大司教の父親にあたるウィーンのルドルフ・ヨーゼフ・コロレードの屋敷で1781年4月8日に演奏されたそうです。
よく知られているように、モーツァルトはヴァイオリン協奏曲を1775年に集中的に作曲して、 それ以後はヴァイオリン協奏曲を書いていませんが、ヴァイオリンとオーケストラのための小品はいくつか残しています。
この曲は弦楽5部にオーボエ、ホルンが各2本の構成で、アレグロ・グラツィオーソの流れるような主題で始まり、ロンド形式で様々なテーマをはさみながら優雅に洗練された統一感を持った、小さな名作です。


K.373 ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調 K.373 Allegretto grazioso

余談
すっかり春めいて来ました。当地の梅も見頃となり、桜の蕾も日に日に膨らんでいるようです。
やはり雪国の住人にとって、春の訪れは格別な喜びがあります。
モーツァルトの音楽が最も似合う時期かもしれません。

2017年3月21日火曜日

K.360(374b)「泉のほとりで」の主題による6つの変奏曲

モーツァルトがウィーンに定住してからは、かなり忙しい日々を送っていました。
以前の宮仕えとは違い、自身の収入は自身の手で稼ぎ出さなくてはいけないのですから。
そんな中で音楽の生徒を獲得することは地味ですが堅実な収入源でした。そしてこの時期モーツァルトは生徒たちのための教材用に多くのピアノ曲やヴァイオリン曲を書いています。
現在のように定番の教材が印刷されて出来上がっている時代とは隔世の感があります。
この曲は、ウィーンで最初のピアノの弟子となったド・ルンベック伯爵夫人のために書かれた2曲のピアノとヴァイオリンのための変奏曲の中のひとつで、1781年の7月頃に書かれたものと思われています。おそらく生徒がピアノを弾いて、脇でモーツァルトがヴァイオリンを合わせていたものと思われます。
この主題は、パリ在住中に親しんだシャンソン歌集の中からの「泉のほとりで」という曲から取られているそうです。哀愁を帯びたト短調の旋律が心に沁みてきます。


「泉のほとりで」の主題によるピアノとヴァイオリンのための6つの変奏曲 ト短調 K.360(374b) Andantino 
<写真>近くの白山神社の松の根元の苔?
余談
しばらく所用のために更新が滞ってしまいました。
その間、きらクラ!のBGM選手権では、ファンの会の幹事長ともいえるBWV1000番さんがベストを取られ誠にわが事のように嬉しかったです。選曲も素晴らしく、その守備範囲の広さに敬服しました。
またBWV1000番さんのブログで知ったのですが、今週名付け親でベストを取られた大受けの『拙者、琢磨と申す』はこれまたブロ友の今日も快調さんだそうで、毎週の大活躍にこれまた拍手!!でした。みんなさんセンスいいです!!
ところで、今週のBGMのお題は、全く新しいジャンルでかなり面白いですね。難しい文学作品と違って、結構気楽に投稿できそうです。とりあえず問題は解けたから、中学は入学出来るかな・・・?

2017年3月11日土曜日

K.384「後宮からの逃走」第3幕 終曲(Vaudeville)

捕えられた4人が、一縷の望みを抱きつつも、死を覚悟して裁きを待っているところに太守セリムが登場して判決を言い渡します。
「それでは俺の決心した判決を下す。…みんなを放免してやるから、一緒に本国に帰るがいい」と言い、予想外のことで一同が唖然としてしまいます。そして太守が続けます……「お前の父親は俺にひどいことをした。俺はお前の父親を心の底から憎んでいる。しかし、お前の父親と同じようなことはやりたくないんだ。」こう言うと、一同はその寛大さに心から打たれ、恥じ入り、心から感謝します。
この最終場面で歌われるのがこのヴォードヴィル(軽喜歌劇)です。
途中にオスミンの怒り狂ったような歌唱をはさんで、太守を讃える大合唱で華やかなエンディングを迎えます。


「後宮からの逃走」K.384 第3幕 Vaudeville『ご恩を決して忘れず、永遠に感謝します 』--『セリム太守をたたえよ!』

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 第17巻より転載)
ベルモンテ(B)
   ご恩を決して忘れず 永遠に感謝します。
   いつ、どんな場所でも あなたの高貴さをたたえます。
   このようなご恩を忘れる者は 軽蔑されてしかりです。
コンスタンツェ(K)、B、ペドリロ(P)、ブロンデ(Bl)、オスミン(O)
   このようなご恩を忘れる者は 軽蔑されてしかりです。
K   あなたの愛に 感謝の気持ちを忘れません。
   愛を捧げられた私の心は あなたに感謝し続けます。
   寛大な愛を忘れる者は 軽蔑に値しますわ。
K,B,P,Bl,O
   このようなご恩を忘れる者は 軽蔑されてしかりです。
P   縛り首寸前だったことを忘れてはいけない。
   罰せられたかもしれないことを 思い起こします。
   恩を忘れる者は 軽蔑に値するのです。
K,B,P,Bl,O
   このようなご恩を 絶対に忘れてはなりません。
Bl  太守様に心から感謝します。食事と床を与えてくださったわ。
   ここから解放してくださり うれしく思います。
   (オスミンを指し)
   あの連中に囲まれて よく退屈しないものね。
O (怒りながら)
   仕事をサボる奴らを 火あぶりにしてやりたい 我慢の限界は近いぞ。
   奴らを処刑するなら…口で言うのももどかしい
   首を切り、吊るして 熱い鉄棒で串刺しだ
   焼いたあと 水に浸して皮をはぐ。
K,B,P,Bl
   復讐ほど醜いものはない。復讐は人の道に外れること
   業を捨て 寛大な心をもつのです!
K   それが分からない者は 軽蔑の目で見られるは。
K,B,P,Bl
   それを理解しない者は 軽蔑されて当然です。

従者の合唱
   セリム太守を万歳でたたえよ! 彼の領国に繁栄あれ!
   歓呼と名声によって 彼の頭上は光輝く。
   セリム太守、万歳! 彼の領国に繁栄あれ!

余談
白鳥もほとんど北国に帰ってしまいました。春はすぐそこです。
「後宮からの逃走」もようやく終幕を迎えました。
太守セリムの寛大な判決によって、めでたくハッピーエンディングで幕を閉じました。
このオペラの初演は大成功をおさめ、繰り返して上演されたようです。そしてモーツァルトはウィーンでの生活の基盤を確立し、このオペラに登場するコンスタンツェと同じ名前の愛妻を獲得します。
数々の美しい旋律、ちょっとコミカルなリズム、エネルギー溢れるオーケストレーション、深い感情を見事に映し出すハーモニー等、傑作揃いのモーツァルトのオペラの中でも、ひと際若さ溢れる魅力的な作品です。これからも何回も味わいたい名作です。

2017年3月6日月曜日

K.384 第3幕 二重唱『 なんという運命だ! 』

オスミンに捕えられた4人は太守セリムに突き出されます。
脱出しようとしたコンスタンツェを、セリムは裏切り行為だと激しく非難します。
さらに、太守が過去に自身の地位や財産を奪われた宿敵の子孫がベルモンテであることを知るに至り愕然とします。
追って処分を言い渡すことを告げて、オスミンは一旦退場します。
そして死刑を覚悟したベルモンテとコンスタンツェが歌うのが、このアリアです。
悲劇的な結末を予感させる哀しいアリアです。


「後宮からの逃走」K.384 第3幕 『 なんという運命だ! 』/変ロ長調 Andante(抜粋)

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 第17巻より転載)
ベルモンテ(B)
   なんという運命だ! 心が痛む!
   世の中のすべてが 裏目に出てしまうのか?
   コンスタンツェよ 君は僕のせいで死ぬのか! 何ということだ!
コンスタンツェ(K)
   どうか自分を責めないで 死が何なの?
   死は安息への道よ あなたのそばで死ねるなら 幸福への第一歩でもあるわ。
  天使のような心よ! なんと優しく善良なのだ!
   僕の震える心を慰めてくれる 死への苦痛も和らげてくれる
   そんな君を僕は 墓へと引きずり込むのか!
   僕のせいで君は死なねばならない! ああコンスタンツェ
   君の目を見つめられない 僕が君に死をもたらした!
  ベルモンテ、私のせいであなたを死に追いやった。
   私があなたを破滅に追い込んだのよ。
   だから私も一緒に死ぬべきなのです!
B&K高貴な心よ、私(僕)は あなた(君)のために生きてきた
   それが希望であり力の源だったのです。
   あなた(君)がいなければ たとえこの世に生きていても苦しみだけ。
   ・・・・・・・

余談
ようやく「後宮からの逃走」もクライマックスを迎えます。
このオペラには21曲の主要な曲(アリアや重唱)がありますが、今回はその中から約半分の曲を取り上げました。この他にも魅力的なアリアが沢山ありますが、容量の関係で割愛させていただきました。
あらためてモーツァルトのオペラを観ると、それぞれの登場人物の生き生きとした的確な音楽表現にただただ魅せられてしまいました。
残念ながら私はまだこのオペラを生で観たことがありません。今度機会があったら是非観劇して、生の音楽に浸りたくなりました。
今日の「きらクラ!」
先週の余韻の残る中、今日の「きらクラ!」は通常モードに戻り、読者の心温まるおたよりの数々にほっこりしました。
きらクラ!DONで沖縄県のケニーさんが「月の光」が余りに好きで、経験のないピアノに挑戦して、1ケ月かけて楽譜の2頁まで弾けるようになったというお話がありました。私も10年以上前に曲は違いますが、同じようなことをしてましたので、とても共感出来ました。好きな曲を自分で弾いて、その和音を直接体感できる幸せは格別なものです。また再挑戦してみたいと思います。
さらに投稿で、「きらクラ!寿司」のお話は親子でちょっとしたことに楽しみを見つけてらっしゃる微笑ましい光景に心和みました。また、「水上(みなかみ)の音楽」から派生した「雪の古町(降る街)」は私の地元ネタなので大笑い! 楽しい放送でした。

2017年3月5日日曜日

K.384 第3幕 『 俺が勝ちどきを上げるのは 』

場面は移って、太守セリムの館の前で第3幕の開幕です。
ベルモンテたちの脱出計画は実行に移されていきます。
コンスタンツェ、ブロンデの部屋に梯子をかけて順次彼女たちを救出していたら、物音に気付いたオスミンが彼らを見付け、取り押さえてしまいます。
もともと彼らには好意を持ってなかったオスミンは、彼らの悪事を暴き、得意になって勝どきを上げます。 その時に歌われるのがこのアリアです。
オスミンが大声で歌う有名なアリアで、リズミカルで生き生きとした音楽です。


「後宮からの逃走」K.384 第3幕 『 俺が勝ちどきを上げるのは 』/ニ長調 Allegro vivace

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 第17巻より転載)
オスミン
   俺が勝どきをあげるのは お前たちが処刑場に行く時 縛り首になる時だ!
   俺は小躍りして喜びの歌を歌うだろう これで厄介払いできる。

   俺が勝どきをあげるのは お前たちが処刑場に行く時 縛り首になる時だ!
   お前たちが屋敷のネズミに足音を忍ばせても 俺たちはだまされないからな
   俺たちの耳はしっかり聞きつけるぞ 首に縄をかけるぞ。

   俺が勝どきをあげるのは お前たちが処刑場に行く時 縛り首になる時だ!

余談
だいぶ途中を割愛しましたが、もうすぐ白鳥も北国に帰ってしまうので、急いで最後の3幕に行きました。
このオペラではオスミンという役は大活躍します。このアリアも彼の独壇場です。
太守セリムが当時の配役の関係か歌う場面がないために、オスミンの活躍の場が増えたのかもしれませんが、豊かな低音を響かせて愛すべきキャラクターが見事に描かれています。