アラ・トゥルカ(トルコ風)とは、トルコの軍隊風にということで、第1拍に強烈なアクセントを置いたリズムを指していると思われます。
当時オスマン・トルコは、バルカン半島を越えハンガリーのあたりまで支配下に置いていて、ウィーンの人々にとっては脅威であると同時に、異国文化として興味の的であったと考えられます。
モーツァルトもトルコを舞台としたオペラ『後宮からの逃走』を作曲した後にこのソナタを書き、異文化に対する関心を示しています。
この楽章のみ主調が短調で、中間部に長調部分を持つ複合3部形式をとっています。
ピアノ・ソナタ(第11番)イ長調 K.331(300i)/第3楽章 Alla turca, Allegretto イ短調
<写真>新潟県五泉市のチューリップ畑
◆◆金沢・風と緑の楽都音楽祭2018 見聞録(下)◆◆
私にとってモーツァルトをテーマとするこのような音楽祭に参加したのは4回目になります。1回目はラ・フォル・ジュルネ東京2006年(生誕250年記念)、2回目はラ・フォル・ジュルネ金沢2009年、3回目は地元でラ・フォル・ジュルネ新潟2013年です。いずれも同じ音楽事務所の企画になるため、内容は似たものも多かったので、今回の金沢は違う音楽事務所のアーティストが主体のためとても新鮮でした。また、このような音楽祭に参加するに際して、貪欲にチケットを取るのはいいのですが、結局体力的に後半はきつくなるのが常でした。今回はかなりセーブして公演を絞ったのですが、それでも常に人ごみの中での集中力の維持は大変でした。特に単独行で知ってる人に一人として会わないという、アウェイ感一杯の中での鑑賞は孤独感も疲労に拍車をかけました。
そんな中で、その疲労感を吹き飛ばした公演の事を書きたいと思います。
■刺激的な爆演だったモーツアルテウムの交響曲第39番
先回も述べましたように、ヘンリック・シェーファー指揮ザルツブルク・モーツアルテイム管弦楽団(MOS)は、ビブラートを殆んどかけない、ピリオド奏法の演奏のように聞えました。
初日にこのオケでアイネ・クライネを聴いた時(指揮はリッカルド・ミナーシ)にすごく驚きました。輪郭のはっきりした響きで、強弱のめりはり、テンポのめりはりをことさら強調させているように感じました。その演奏のゾーンに入れば、それはそれで非常に楽しめるものではないかと思いますが、慣れるまでは少し抵抗があります。
集中力の途切れかけた2日目の4つ目の公演で、このオケで交響曲第39番を聴きました。座席の上で半分眠りながら演奏を聴いていたら「このオケと39番の相性は凄くいいのではないか・・」との思いが突然湧きあがり、俄然目を覚ましました。特にメヌエット楽章は必聴だと思いながら、その第3楽章が始まりました。予想通りのアップテンポでめりはりの効いた素晴らしいリズム感が楽章を支配し、正にのりのりの演奏で体中の血液が躍りだしました。
興奮冷めやらぬうちに始まった、最終楽章。これは物凄かった!! あの極端にテンポを揺らす演奏が「ど・ストライクゾーン」に入るのです。正に爆演!!音楽の爆発を目の前にする興奮に打ちのめされました。こんなにエキサイティングな音楽を聴いたのは何年ぶりだろう。この演奏を聴けただけでもこの音楽祭に来た価値はありました。
帰りにこのCDを買おうと売り場に行ったら、売り子の方が、同じ質問を何度もされてうんざりした様子で、この演奏のCDは出てないとのことを告げられました。残念です。
■アマデウス室内オーケストラの広範なエンターテイメント
最終日の最後に聴く公演に、アマデウス室内オーケストラ(ACO)とシン・ヒョンスのヴァイオリン協奏曲第3番を聴きました。
ヒョンスさんの演奏は10年近く前に2度ほど聴いていて、その美しい響きと容姿に魅了された記憶があります。
2曲目に舞台に現れたヒョンスさんを見てびっくり!メイクのせいか、以前と顔が変わった印象を受けて戸惑いました。演奏は相変わらず繊細で美しく、まるでお姫様が天上界の音楽を奏でているような、夢心地の気分になりました。
ACOはオーケストラ・アンサンブル金沢より小編成で第1ヴァイオリンは5名程だったと思います。それだけにアンサンブルは緻密で、その優雅さに魅了されました。管楽器は邦人のエキストラが加わったようでした。
このオケの驚きは3曲目に待っていました。地元ポーランドの作曲家キラールが1986年に書いたという「オラヴァ」という初めて聴く曲でした。簡潔な機関車のようなリズムを刻んで始まった曲は、うねるようなダイナミックな変奏を繰り返しながら盛り上がり、今まで耳にしたことのないような独自のハーモニーの世界を展開しすっかり心を持っていかれました。
世の中にはまだ知らない魅力的な音楽が一杯あるんだ・・という思いを後に満足感一杯で帰路に就きました。関係者の皆様、本当に素晴らしい企画をありがとうございました。
風と緑の楽都音楽祭のレポート、ありがとうございました。情報の少ない音楽祭の様子が伝わってきて、興味深く拝見しました。金沢はラフォルジュルネで2回ほど訪れたこともあり、後継の音楽祭がどんなものか気になっていました。MOSの交響曲第39番、聴いてみたかったです。この曲は昨年聴いたノット&東響による演奏も素晴らしかったです。
返信削除ノヴァーク様、コメントいただきありがとうございます。
削除私のレポートは底の浅い個人的感覚に過ぎませんので、どうかお許しください。
それにしても、国内外からあれだけのアーティストを集められる、金沢の都市力には敬服します。経済界のバックアップも強力なんでしょうね・・・。
ノヴァーク様はピンポイントで東京のLFJをお楽しみなられたようですね。
私も1日に多くの公演は体力的に無理になって来たので、次回からはセーヴしたいと思います。