ベルモンテが歌い終わると、そこにオスミンが現れます。彼は太守セリムの護衛長で、がっしりした大男で、豪快で粗野、感情の起伏の激しい人物ですが、センチメンタルで滑稽な一面もある人物です。
そのオスミンがザクロの実を取りながら、上機嫌で歌っています。
そこへベルモンテは幽閉されているコンスタンツェらのことを聞きだそうとしますが、オスミンは一向に耳を貸そうとしません。
そんな二人のやり取りを、最初はアンダンテから始まって、転調を繰り返しながら次第に激しくなる音楽に乗せて、実に生き生きとした場面を展開していきます。
「後宮からの逃走」K.384 第1幕 リートと二重唱『純粋そうなかわいい娘を見つけたなら』/Andante ト短調 - Allegro ト短調(抜粋)
<訳> (小学館 魅惑のオペラ 第17巻より転載)
オスミン(O)
純粋そうなかわいい娘をみつけたなら
たくさんのキスをして 彼女の人生を楽しくしてやりな
恋人になって心を癒してやることだ。トララレラ トララレラ!
ベルモンテ(B)(語る)
おい、ここは太守セリムの宮殿では?
<オスミンはベルモンテを無視して、庭仕事をしながら歌い続ける。>
O 彼女の操を守らせるため 用心深く囲うのさ。
ふしだらな男どもが寄ってきて 蝶に手を出さないように
ワインを飲むように味見されては困る。トララレラ トララレラ!
B おい! 聞えないのか? ここは太守セリムの宮殿か?
<やはり無視して歌い続ける。>
O 月が明るい夜は 特に注意が必要だ!
世間知らずの娘を 誘い出されたら一大事
そうなったら操なんて、おさらばだ! トララレラ トララレラ!
B いまいましい奴め いまいましい歌め!
歌は聞き飽きた 僕の問いに答えない気か!
O 厚かましい奴め。何様のつもりだ。何を聞きたい?
さっさと言え 俺はもう行く。
B ここは太守セリムの屋敷か?
O 何だ?
B 太守セリムの屋敷か?
O 太守のお屋敷だとも。
<オスミンは行こうとする。>
B 待て!
O 俺に何の用だ。 ・・・・・・
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