2018年4月22日日曜日

K.333(315c) ピアノ・ソナタ(第13番)変ロ長調/第1楽章

軽やかな流れるような出だし、変幻する豊かな旋律、見事な構成で織なされる音のタペストリーに、モーツァルトのピアノ・ソナタの最高峰ともいわれるこのソナタは、交響曲「リンツ」と同時期に書かれたと最近(1980年代)の研究でわかりました。
冒頭の旋律がJ.C.バッハの≪ソナタ≫作品17-4に似ていることから、以前は1778年にパリで作曲されたと思われていました。
この第1楽章は、愛らしく流れるような軽快な旋律のアレグロで、ソナタ形式で書かれています。流麗さの中にシンコペーションや強弱の対比などの効果がバランス良く配置されています。


ピアノ・ソナタ(第13番)変ロ長調 K.333(315c)/第1楽章 Allegro 4/4 ソナタ形式

<写真>ムスカリ (in Mari garden 2018.4.20)

余談 ケッヘル番号について
所用に時間を取られ、暫く更新をお休みしておりました。
このK.333のソナタは私も大好きな曲のひとつです。いかにもモーツァルトという繊細な美しさに溢れています。
ところで、これから順次取り上げるK.330~K.333の4曲のソナタは、ケッヘルの6版(1964年出版)まで1778年から1779年にかけてのパリ滞在中に書かれたものだと考えられていました。
しかし1980年代にプラートの自筆譜の筆跡研究と、タイソンのX線を用いた用紙の透かしの研究で、1783年末の作品であることがかなりの精度で判明しました。
とすると、このK.333(315c)の場合、ケッヘル初版の番号「333」→6版の番号「315c」→7版?の番号「425a」という番号を変遷する形になってしまい、一体どれれが本来の年代順の番号なのかと……混乱を招いてしまいます。
そこで最近では、一般に普及している初版の番号で呼称し、括弧書きの最新の年代順番号は添書程度に扱うことが普通になってきました。
これからも研究によって作曲時期に変更が加わる可能性は十分考えられますから、その方が現実的です。
ということで、この愛らしいソナタは「333」というとても覚えやすい番号とともに、これからも広く親しまれていくでしょう。

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