2019年3月24日日曜日

K.488 ピアノ協奏曲(第23番)イ長調 /第3楽章 

1786年の春、『フィガロの結婚』の作曲が進む中、モーツァルトは自身の予約演奏会のために2曲の性格の異なるピアノ協奏曲を書いています。 その中の1曲がこのイ長調の協奏曲で、自作目録では1786年3月2日完成となっていますが、自筆譜の用紙の研究で、その2~3年前から作曲にとりかかっていたという説もあります。
この協奏曲の特徴は、オーボエのかわりにクラリネットが使用されていること、トランペット、テンパニ―が使用されていないこと、管楽器が控えめに使われていること等で、全体的に非常に柔らかく細やかな情趣に溢れています。形式的にも一般的で安定した印象を与え、親しみを持たれます。
作品自体、非常に入念に作られていて、第1楽章のカデンツァはきっちりと書き込まれていて、さらに第2、3楽章ではカデンツァは置かれていません。それだけ緻密な構成になっていて、ピアニストの即興演奏を入れる余地を与えていません。
第1楽章第2楽章 は以前取り上げましたので、ここでは第3楽章を聴いてみます。
イ長調のアレグロ・アッサイで、ロンド形式で書かれています。
快活でのびのびした主題と豊富な転調、時々現れる短調の見事な対比で、澄み切った情感あふれる美しい曲になっています。


ピアノ協奏曲(第23番)イ長調 K.488/第3楽章 Allegro assai

余談
すっかり春めいてまいりましが、今朝は当地では2~3cmの積雪がありました。三寒四温です。
しばらくボーッと生きていて、更新が滞ってしまいました。これからモーツァルトの絶頂期の作品が次々に登場しますので、楽しみながらボチボチ更新させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

2019年2月28日木曜日

K.486 第3曲 三重唱「私がプリマ・ドンナよ!」

「劇場支配人」からもう1曲、3重唱を聴いてみます。
登場人物はいずれもこの劇団に応募してきた歌手で、ソプラノのヘルツ夫人とジルバークラング嬢、そしてテノールのフォーゲルザングの3人です。
前半のアレグロ・アッサイの部分では二人のソプラノが、自分こそがプリマドンナだと言い張って、技巧をこらした歌唱で激しく争います。そこにフォーゲルザングが「芸術家たるもの、他の芸術家にケチなんかつけちゃいけない。そういうことは芸術の品位を汚すことになるんだから、慎まなくてはいけない」と仲裁に入りますが、二人は争いをやめないため「小さな音で、一番小さな音で、弱く・・・」という風にピアニッシモで結ばれます。
モーツァルトが得意とした、喜劇的でユーモアあふれる人間描写と、生き生きとし音楽で、活力に満ちた作品に仕上がっています。
ちなみに初演の時、ヘルツ夫人役はかつてモーツァルトが恋い焦がれたアロイジア・ウェーバー(結婚してランゲ夫人)が歌っています。

「劇場支配人」 K.486/第3曲 三重唱「私がプリマ・ドンナよ!」Allegro assai 変ロ長調

余談 明日3月1日は「FM50三昧」
最後の15分しか聴けなかった25日の「きらクラ!」ですが、なんとブロ友のいーともさん、BWV1000番さんのお蔭で、放送内容を概ね知ることができました。本当にありがとうございました。
実は私、今回のBGM選手権のお題が「夏でもないのに・・何で??・・。よもやこだまっち様、御乱心!!か・・?」と思っていたのですが、ブロ友さんのお蔭で納得しました。渡辺徹さんの奥様が榊原郁恵さんなんですね!!
納得はしたけど、いざ音楽を当てるとなると難しい!! 全く影を感じさせない輝くような明るさとパワーに満ちた詩と、ふかわさんのハイテンポな朗読に合わせられる音楽がなかなか見つかりませんでしたが、当然ボツ覚悟で一応記念なんで投稿してみました。
懐かしの鈴木大介さん、伊藤恵さん、渡辺徹さんのお声も聞けるんで、明日の放送の【やわらかクラシック】コーナー(午後4時半頃~)が楽しみです。

2019年2月25日月曜日

K.486 第2曲 ロンド「若いあなた!」

『劇場支配人』の中から、ソプラノのロンドを聴いてみます。
歌うのは劇団に応募してきた女流歌手ジルバークラング嬢。
前半のアンダンテの部分は、若い人に求婚されたジルバークラング嬢が「あなたの愛を受け入れましょう。あなたの優しいまなざしの中に、私の幸福が発見できるからです。でも、この恋の後に暗い悩みが続く場合、恋の喜びがその償いになるかどうか、そのことはよくあなたが考えてみてくださいよ」と、互いの年齢差を憂慮します。
そして後半のアレグレットのところでは「私には、あなたの手と心ほど大切なものはないのです。この上なく清らかな愛の炎に燃えながら、愛の保証として私の心を差し上げましょう」と華やかなコロラトゥーラをはさんで曲を閉じます。
音楽はモーツァルトの瑞々しい感性を見事に表現しています。
(※訳詞:学研「モーツァルトその音楽と生涯(吉田秀和解説)」より引用)


「劇場支配人」K.486/第2曲ロンド「若いあなた!」Andante - Allegretto 変ホ長調

余談今日の「きらクラ!」想定外のリメイク放送
昨日の日曜日は放送なし。今日はひふみんの再放送で録音等で何度も聴いていたので、本日の朝は『すっぴん』にチャンネルを合わせていました。
そしたら9時から国会中継が始まったので、FMに切り変えて懐かしのひふみん節をに耳を傾けていたら・・・なんか只の再放送ではなく、BGMのお題が出たり、思わせ振りなギターの「別れの前奏曲」なんかが流れてきて意表を突かれました。
そしてこの時期の恒例のふかわさん「この番組は4月から・・・・継続になりました!!」とのコメント!! なんと!!このあたりリアルタイムの話題だったんです!!
ということで見事に勘違いして最後の15分しか聴けませんでしたが、大事な4月からの番組継続、そして3月1日の「今日は一日“ありがとうFM50”三昧~クラシック編~」にふかわさん、真理さんが出演されて(多分夕方あたり?とおっしゃってました)BGM選手権を紹介するとのことでした。楽しみですね。
しかし、今日の放送が私のように単なる再放送だと思った方は多かったのではないでしょうか? 先週の公開収録の録音を改めて聴いてみたら最後のところでふかわさんが「ゲスト加藤一二三さんのリメイク版を放送します。是非聴いてください」とおっしゃってましたが・・人間は勝手に思い込んでしまうんですね・・。

2019年2月7日木曜日

K.486 ジングシュピール「劇場支配人」/序曲

前回より1786年(モーツァルト30歳)の作品を聴いてます。
この年の最も大きな仕事は『フィガロの結婚』で、前年末から作曲に取り掛かっていました。
そんな忙しい中、オランダ総督ザクセン=ティシェン夫妻がウィーンを訪問することになりました。総督の奥さんは皇帝ヨーゼフ2世の妹にあたり、皇帝は妹夫妻を歓待する企画を練り、その一つとして、当時ウィーンでいちばん人気のあったサリエリとモーツァルトにそれぞれオペラを書かせて、それをシェーンブルン宮廷で上演することにしました。
皇帝の依頼とあってモーツァルトも断るわけにはいかず、1月から2月初めにかけて作曲しました。
台本は「後宮からの逃走」を書いたゴットリープ・シュテファニーで、話の筋はごく単純で、全1幕10場からなり、曲はこの序曲を入れて5曲しかありません。音楽以外の部分は殆んど台詞で語られていて、内容が退屈なのか、現在、全部の台詞を含めたレコード・CDは見当たらないようです。
ここで聴く序曲は、現在でも単独でよく演奏されている人気曲です。
明るく快活なハ長調 プレストで、厳格なソナタ形式で書かれていて、こうした劇の序曲としては規模が大きく、立派な構成になっています。


ジングシュピール「劇場支配人」 K.486/序曲 Presto ハ長調
【あらすじ】
劇場支配人は新しい劇団を結成しようと団員を募集する。
しかし応募してきた歌手や役者たちは、それぞれ自分が優れていることを主張し、給料のことで言い争いになるので、支配人は募集を中止すると言い出す。
困った一同は、今度は支配人の条件を飲んで、めでたく一座が誕生する。
(東京書籍「モーツァルト事典」より引用)
<写真>シェーンブルン宮殿/ウィーン

2019年1月27日日曜日

【祝 生誕263年】K.485 ロンド ニ長調 

Happy birthday !!  W.A.Mozart!!!
本日はモーツァルトの263回目のお誕生日です。誠に喜ばしい日です。
そこで、1786年の1月に書かれた、軽快なピアノ曲を聴いてみます。
この作品はその愛らしい旋律によって、ピアノの教材にもしばしば用いられ、広く親しまれています。技術的にも比較的平易なため、おそらく当時モーツァルトの弟子だった貴族の令嬢のために書かれたと思われています。
この曲は「ロンド」となっていますが、通常のロンド形式とは違い、単一主題のソナタ形式をとっています。
モーツァルトはこの主題を、子供のころから大好きだった大バッハの末っ子のヨハン・クリスチャン・バッハの曲からとっていて、 K.478 のピアノ四重奏曲の終楽章にも使っていますので、よほど気に入っていたようです。
そしてこの主題は様々な転調を繰り返しながら何度も現れ、曲を華やかに彩って聴く者を魅了します。


ロンド ニ長調 K.485 Allegro

2019年1月26日土曜日

K.410(484d) アダージョ ヘ長調

このアダージョはバセット・ホルン2、ファゴットの三重奏として書かれた27小節の小曲です。作曲時期はケッヘルの6版では1785年の12月頃となっていますが、諸説あり、はっきりはわかっていません。
フリーメイソンのなんらかの儀式のために書かれ、 K.411 とセットの作品と考えられています。
おそらくフリーメイソンの厳粛な雰囲気の儀式で演奏されたのでしょうが、バセット・ホルンの静かに流れる旋律と、ファゴットの温かい低音が美しい和音を響かせて、心に安らぎをおぼえる小品です。


アダージョ ヘ長調 K.410(484d)

余談
昨年の11月から、主に1785年にモーツァルトが作曲した作品を聴いてきましたが、この他にも以前に取り上げたハイドン四重奏曲やト短調のピアノ四重奏曲などもこの年に書かれています。本当に作曲家として脂の乗りきった年であったと云えると思います。
前年末に入会したフリーメイソンの活動をしながら、この先も歴史的な名曲の数々をモーツァルトは書き続けて行きます。

2019年1月21日月曜日

K.483 合唱つき歌曲「親しき友よ、今日こそ」

モーツァルトはフリーメイソンに1784年12月に入会しましたが、その翌年の1785年には多くのフリーメイソンに関わる曲を書きました。この曲もその一つで、1785年12月の作品です。
この頃皇帝ヨーゼフ2世は、当初彼の国家統治にとってフリーメイソンは有益な組織と考えていましたが、次第に皇帝に敵対する組織になりかねないという危惧から、ウィーンに8つあったロッジを3つに再編成し、政府の監視下におくことにしました。
そのためモーツァルトの属していたロッジも「新桂冠希望団」に組織替えされ、その新ロッジの儀式のためにこの曲は書かれました。モーツァルトの本心は別として、皇帝の意図に沿う内容になっています。
テノールの独唱に、男声3部合唱がリフレインされて、オルガンの伴奏が付きます。
【歌詞大意】
親しき友よ、今日こそ歓喜の歌を歌おう
ヨーゼフの善行は胸に3つの炎を燃やす者たちに
我等の希望の冠を新たに飾る。
ヨーゼフのために賛歌を歌おう。
善行は麗しき義務なり・・・・・
(作詞:シットラースベルク、訳詞:東京書籍「モーツァルト事典」より引用))


合唱つき歌曲「親しき友よ、今日こそ」 K.483 Andante 変ロ長調 2/2

余談今週の「きらクラ!感動のBGM選手権
久々のBGM選手権でしたが、私は詩のイメージに合う曲が思い浮かばず早々に撤退。皆様の投稿を興味津津で聴かせていただきましが、目の覚めるような強烈な刺激を受けました。
第1曲:(ジャック天野さん選)
 マレ作曲「聖ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘」
 初めて聴く曲でした。選者は10回以上採用されてらっしゃる常連さん。この曲をもってこれる守備範囲の広さに脱帽。チェンバロの音と規則的なメロディーが詩のイメージにピッタリ!!
第2曲:(夜半亭あぶらー虫さん選)
 ベートーベン作曲「交響曲第5番 第1楽章」
 この超有名曲をこの詩に・・・・素晴らしいセンス!! 詩と曲が合体した時の衝撃度はメガトン級。そしてプレゼンの文章も素晴らしい!! 圧倒されました。
第3曲:(ブルサムヴィッチさん選・・・どなたかの別ラジネ?)
 アルビノーニ作曲「アダージョ」
 これも有名曲ですが、美しくも陰鬱なメロディーが悩める青年期のうごめくような心情を見事に表現していて、これまた秀逸な作品。
第4曲:(ぼたもち大好きさん選・・・快調家族さんの別ラジネ)
 J.シュトラウス2世作曲 ワルツ「ミルテの花」
 爆笑路線炸裂!! あのお題をここまで発想を広げられる柔軟さに感激!! 流石に超常連の快調家族さん!! 先週は驚異の3本同時採用。そして今週はニアピンとBGM、そしてラジネコールに採用!! やはりその投稿のクオリティーの高さが抜きん出ていて、ディレクターさん(今回は“ひょりはん”)の目に留まるんでしょうね―。
4作品ともそれぞれ全く別の視点に立った個性豊かで意外性に溢れた、どれもベストに値するものでした。今年はスペシャルがなかった分、BGM選手権ファンの情熱が結実したような記憶に残る回だと感じました。本当に素晴らしい投稿をありがとうございました。

2019年1月13日日曜日

K.476 歌曲「すみれ」

モーツァルトが同時代の文豪ゲーテと出会った、唯一の作品として有名な歌曲を聴いてみましょう。
完成したのは1785年6月8日で、作曲の動機はわかっていません。また、当初モーツァルトはこの詩がゲーテの作とは知らず、たまたま創作意欲を起こさせる詩を目にし作曲に取り掛かったようです。
3節からなる詩は物語のような筋があり、モーツァルトはそれに即して、全体を通作にして、当時一般的だった有節形式の歌曲の枠を越えた作品に仕上げています。
明るいト長調のアレグレットで始まり、野に咲くすみれと少女の様子が曇りなく描かれる第1節。すみれの少女に対する憧れを歌った第2節。すみれの悲しい運命、そして死をも喜びとする第3節。それぞれの歌詞に応じて細かい転調がほどこされています。
そして、最後の2行はモーツァルトによって書き加えられ、全体を客観的な視点に戻しています。
この作品は、シューベルト以降に展開されるドイツ・ロマン派歌曲の先駆とみなされています。


歌曲「すみれ」K.476/Allegretto ト長調 4分の2

歌詞
Ein Veilchen auf der Wiese stand
gebückt in sich und unbekannt;
es war ein herzig's Veilchen.
すみれが一本草原に咲いていた
ひっそりと身をかがめ、人に気付かれずに
それはかわいいすみれだった
Da kam ein'junge Schäferin
mit leichtem Schritt und munterm Sinn
daher, daher,
die Wiese her, und sang.
そこへ若い羊飼いの少女がやって来た
軽やかな足どりで、晴れやかな心で
そこからこっちの方へ
草原の中を、歌をうたいながら
Ach denkt das Veilchen, wär'ich nur
die schönste Blume der Natur,
ach, nur ein kleines Weilchen,
bis mich das Liebchen abgepflückt
und an dem Busen matt gedrückt!
ach nue, ach nur,
ein Viertelstündchen lang!
ああ、とすみれは思った、もしも自分が
この世で一番きれいな花だったら、と
ああ、ほんのちょっとの間だけでも
あの少女に摘みとられて、
胸におしあてられて、やがてしぼむ
ああ、ほんの
一時の間だけでも
Ach, aber ach! das Mädchen kam
und nicht in Acht das Veilchen nahm,
ertrat das arme Veilchen.
Es sank und starb und freut' sich noch;
und sterb'ich denn, so sterb'ich doch
durch sie, durch sie,
zu ihren Füßen doch!
ああ、それなのに!少女はやってきたが、
そのすみれには目もくれないで、
哀れなすみれを踏みつけてしまった!
すみれはつぶれ、息絶えたが、それでも喜んでいた
ともあれ、自分はあのひとのせいで
あのひとに踏まれて
死ぬんだから、と!
Das arme Veilchen!
Es war ein herzig's Veilchen.
哀れなすみれよ!
それは本当に愛らしいすみれだった

余談
この歌を聴くと、まるですみれと少女の物語が目の前で展開されるオペラを観ているようです。それぞれの歌詞が最高のメロディーと伴奏に命を与えられ、大きな羽根を広げて私たちを包み込んでくようです。
このゲーテの詩には、様々な作曲家によって現在残っているだけで約20の作品があるそうです。私も出来る範囲で調べてみましたが、耳に出来たのはシューマンの作品だけでした。モーツァルトがこれだけの作品を残していると、他の作曲家の作品は輝きを失ってしまいます。

2019年1月10日木曜日

K.475 幻想曲 ハ短調

1785年5月に書かれた、このピアノのためのハ短調の幻想曲は、ニ短調の K.397 とともに名高い名曲です。
モーツァルトがウィーンに移り住んで最初に書いたハ短調のピアノ・ソナタ K.457 と合わせてお弟子さんのフォン・トラットナー夫人に捧げられ、後にウィーンの楽譜出版社から出版されました。この幻想曲はハ短調ソナタの前奏として演奏されることを意図して作曲されと思われています。
曲はテンポの変化によって5つの部分によって構成されています。 最初は重苦しくうごめくような主題が繰り返されるアダージョで、ハ短調で始まり、転調を繰り返しながら流れを強め、やがてニ長調の穏やかな旋律が現れたかと思うと、突然低音のフォルテが鳴り響き第2部のアレグロが情熱的に奏でられます。
その後、アンダンティーノの第3部では典雅な宮廷舞踏の趣を漂わせたかと思うと、再び嵐のような激しい動きのピウ・アレグロの第4部を経て、最後は冒頭のハ短調の重苦しい雰囲気で曲を閉じます。


幻想曲 ハ短調 K.475

余談
この幻想曲は、モーツァルトのピアノ曲の中で、起伏に富んだ非常に変化の激しい作品として異彩を放っています。
この時期にモーツァルトの内面で何か劇的な変化でも起こったのだろうかと詮索してしまうほどです。多くの手紙などの資料からそれを示すようなことが記載されて部分は残っているのでしょうか? 何かモーツァルトの深い魂の叫びを聴くような感じもします。
それはさておき、この作品は非常に変化の激しい曲想にもかかわらず、高い次元での統一感と深い安らぎとを感じさせ、不思議な引力に取り込まれるような魅力に溢れた作品です。
一般的にモーツァルトの作品は長調の明るく屈託のない伸びやかな音楽が広く知られていますが、この作品はそのような認識の対極に位置しています。

2019年1月1日火曜日

【謹賀新年】K.165(158a)/第3楽章「アレルヤ」

あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとりまして幸多い年となりますようお祈り申し上げます。

新年、最初の曲は名高い「アレルヤ」です。モーツァルトが16歳の1773年1月に旅行中のイタリア・ミラノで作曲したモテット「エクスルターテ・ユビラーテ」("Exsultate,jubilate"「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」)の第3楽章にあたります。
イタリアへは計3回、延べ約22か月間滞在して、少年モーツァルトは多大な音楽的刺激を受けたと思われますが、宗教曲においても伸びやかで大衆寄りの音楽をまのあたりにしていたようです。
この曲でも宗教的なのはラテン語のテクストのみで、全体は華やかなオペラ風の仕上がりになっています。特にこの「アレルヤ」はソプラノとオーケストラの輝かしい協奏曲のような賛歌になっていて、演奏会でも独立してよく取り上げられる人気曲です。


モテット「エクスルターテ・ユビラーテ」ヘ長調 K.165(158a)/第3楽章 Allegro "Alleluia"
Link >> 第1楽章 Allegro

余談
昨年末は所用のために、更新が滞ってしまいました。ごめんなさい。
今年も当ブログは稚拙な内容で、気ままな更新となるかと思いますが、お時間のある時にお立ち寄りいただければ幸いです。