第3楽章は主調のト短調には戻らないで、ト長調をとっているのがこの曲の特徴的なところです。
そのため通常のモーツァルトの短調の作品で感じるような痛切感がありませんが、主楽章でみせた烈しさを内に含みながら、美しい透明感に溢れた楽想で、いきいきとしたテーマが見事な構成力で進行します。
テーマのひとつに40番ト短調交響曲の冒頭のモティーフが何度か現れます。この頃からモーツァルトの中ではあのト短調交響曲の構想が出来上がっていたのかも知れません。
ピアノ四重奏曲 ト短調 K.478/ 第3楽章 Allegro moderato ト長調
◆余談◆
このピアノ四重奏曲は、ウィーンの出版社ホフマイスターからの依頼で書かれました。
この第1曲が出来上がったら出版社が「この楽譜を見たら、みんなが難しすぎるので受けないだろう」と嘆いたため、モーツァルトは嫌気がさしたのか自ら連作の契約を破棄して、次作の第2番をアルタリア社から出版したと伝えられています。
もし、ホフマイスターが作品そのものの素晴らしさを正当に評価し、モーツァルトに賛辞を送っていたら、もっと多くのピアノ四重奏曲が残っていたと思われます。
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