2015年12月5日土曜日

K.477 フリーメイソンのための葬送曲 【御命日に寄せて】

今年もこの日がやってまいりました。モーツァルト224回目の命日です。

命日に寄せて、引き続きフリーメイソンの音楽を聴いてみます。
この葬送曲はフリーメイソン関連の曲の中でも有名な作品です。
1785年11月5日と6日に相次いで死去した結社員メクレンブルク公爵とエステルハージ伯爵の葬儀のために書かれたとされています。ただ自作作品目録の日付が7月の作曲になっているため、作曲経過には異論があるようです。
弦5部、オーボエ2、クラリネット1、バセットホルン3(うち2本はのちに追加)、コントラファゴット1、ホルン2で構成され、重々しい厳粛な歩みで音楽が展開され、オーボエとクラリネットにグレゴリオ聖歌の定旋律が用いられています。


フリーメイソンのための葬送曲 ハ短調 K.477(479a) Adagio
余談
気が付いたら3週間もブログが未更新でした。失礼いたしました。
この時期日本海側の当地は、垂れこめるような暗い雲に覆われた毎日が続きます。ついつい気が滅入ってしまいます。今年はまだ降雪がありませんが、昨日から厳しい暴風雨で、雪景色もすぐそこまで来ているようです。皆様も時節柄どうぞご自愛ください。
明日は「きらクラ!」で遠藤真理さんが復帰されるそうでとても楽しみです。2児の母となり、ふかわさん、コダマッチさんとともに番組を一層盛り上げていただきたいものです。

2015年11月13日金曜日

K.468 歌曲「結社員の旅」

ここでモーツァルトのフリーメイソンの音楽を聴いてみます。
この曲はオルガンまたはピアノの伴奏で歌われる、28小節の比較的シンプルな曲です。
「不協和音」完成後の3月26日にウィーンで作曲されています。モーツァルトの勧めで入会した父レオポルドの第2位階に昇進した際の儀式のために書かれたといわれています。
歌詞はフランツ・ヨーゼフ・ラチュキーという人のもので、
   『今や理解の新しい段階に進もうとする君は、
    知恵に至る道と信じて迷わずに君の道を行きたまえ。
    なしとげた者だけが光の泉に近づくものと知れ。』
といった内容になっています。


   歌曲「結社員の旅」K.468
余談
私は宗教的な素養がないもので、モーツァルトに関しても宗教曲はついつい疎遠になりがちですが、このフリーメイソンの啓蒙思想はモーツァルトの音楽を理解するうえでとても重要であると思われます。
この思想が表現された名高い作品があの名作オペラ『魔笛』であるといわれています。
<写真>新潟県南魚沼市 魚沼の里 長森のそば畑

2015年11月10日火曜日

K.465 弦楽四重奏曲(第19番)ハ長調 第4楽章

ハイドン・セットもいよいよ最終楽章に来ました。アレグロ(初版ではアレグロ・モルト)ハ長調、4分の2拍子。
まず冒頭の澄み切った第1主題で豊かな軽やかさに満たされます。
その後の第2主題、軽快な16分音符のパッセージ、そして変ホ長調でうたわれる印象的な旋律と、明確な4つの素材から構成された楽章になっています。
展開部での転調過程は、第1楽章の序奏部のハ長調を得るまでの過程の再確認とも考えられます。
コーダでは第1主題が再現して、混沌とした不安定感で始まったこの曲は明快な躍動感のうちに力強く閉じられます。


弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465/第4楽章 Allegro
余談
モーツァルト創意に満ちたハイドン・セットが完結しました。
この曲集をハイドンに献呈する際にモーツァルトは次のような献辞を添えていました・・・・

『親愛なる友ハイドンに  

 ・・・ここに私の6人の息子をお贈りします。
 いずれもまことに長い間の辛苦の末の成果です。
 何人かの友人が、少なくともいくらかは労苦も報われるだろうと言ってくれたのに励まされ、この子らがいつの日か私にとってなんらかの慰めになることもあろうと期待するに至りました。
 ・・・どうかこの子らを優しくお迎えください。そして彼らの父とも導き手とも、また友人ともなってくださいますよう!・・・

              あなたの誠実な友 W.A.モーツァルト ウィーン 1785年9月1日 』

2015年11月8日日曜日

K.465 弦楽四重奏曲(第19番)ハ長調 第3楽章

第3楽章はメヌエット アレグロ ハ長調。
モティーフと強弱の対比でスケルツォ的な雰囲気を持っている楽章です。
ハ短調のトリオは、シンプルな伴奏の上に第1ヴァイオリンが情熱的なメロディーを歌います。
全体的に他の楽章に対しても印象的なコントラストを作り出しています。


弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465/第3楽章 Menuetto
今日の「きらクラ!」
今回のBGM選手権は科学的な記述で一体どんな曲がつくのだろうかと楽しみにしておりました。
どれも異なったアプローチで素晴らしく、ふかわさんも困って全部ベストとなった歴史的な放送でした。
①なよこぶたさん:シベリウス/即興曲 作品5-5 ----きらめく無数の星が降り注ぐような音楽でした。
②悪魔の胃袋さん:ストラヴィンスキー/火の鳥 終曲 ----壮大な宇宙を連想させるスケール感!
出入飛鳥(ディーリアスか)さん:バッハ/チェンバロ協奏曲 BWV1056 第2楽章 ----淡々と流れる柔らかいピアノの響きが科学的な記述にピッタリ。私的にはベストでした。
本当にこの企画は面白いです。感動させていただきました。

2015年11月2日月曜日

K.465 弦楽四重奏曲(第19番)ハ長調 第2楽章

第2楽章はアンダンテ・カンタービレ ヘ長調。
展開部を省いたソナタ形式になっていて、平明で淡々と進行する緩徐楽章ですが、モーツァルト特有の奥深い安らぎに満ちています。
オットー・ヤーン(19世紀のモーツァルト研究家)はこの楽章を「私たちを、苦しみと激情の記憶の浄化された、霊的な平安の領域に高めてくれる」と評しています。


弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465/第2楽章 Andante cantabile ヘ長調
写真に寄せて
先日、谷川岳の付近を散策してきました。
好天に恵まれ、美しい紅葉と気高く険しい一ノ倉沢の岩壁を望むことができました。
若い頃何度か東京から帰省する際、上野発の夜行電車で早朝土合駅で降りて、日の出とともに西黒尾根で谷川岳を目指したり、清水峠越えをした記憶がよみがえりました。何にも縛られない自由を満喫できた青春でした。

2015年11月1日日曜日

K.465 弦楽四重奏曲(第19番)ハ長調「不協和音」 第1楽章

ハイドンセットの最後の第6曲目です。この四重奏曲は冒頭の22小節からなる不協和音に満ちた序奏があることから、「不協和音」と呼ばれて大変有名です。
当時この和声は理論的に間違いとして書き改められて演奏されたこともあったようで、それほど大胆な試みをモーツァルトがなぜ敢えてしたのかは謎です。
現代の私たちは多様な音楽に接していますから、この序奏を聴いてもさほどの違和感は感じません。むしろこの後に来るハ長調の明るい主題と見事な対比をなして、緊張感をはらんだより一層の魅力を感じさせる作品になっています。
前作 K.464 イ長調の四重奏曲完成のわずか4日後の1785年1月14日に完成していています。
ハイドンに捧げる曲集の最後を締めくくるモーツァルトの意気込みがうかがえます。


弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465/第1楽章 Adagio - Allegro
余談
この「不協和音」の序奏部分については、モーツァルトの前年末のフリーメイソン入信と深い関係があるという説があります。それによりますと、
●フリーメイソンの最も重要な標語の一つにみられる《混沌から秩序へ》を表現している。
●入門志願者は目隠しをされたままフリーメイソン結社の儀式のなかへ案内され、その後突然目隠しがはずされ、燦然と輝く光に目が眩んでしまうという体験の感動表現である。
という考えです。真偽は定かでありませんが、私には納得できる説です。以前にも申しましたが、フリーメイソン入会後のモーツァルトの作品にはより一層の奥深さを感じるからです。
<写真>谷川岳・一ノ倉沢への遊歩道からマチガ沢を望む

2015年10月25日日曜日

K.415(387b) ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 第2楽章

このハ長調のピアノ協奏曲はウィーン時代の1782年から83年初頭に作曲され、モーツァルト自身の予約演奏会のために作られました。
K.413、K.414ととも1785年3月にウィーンのアルタリアから「作品4」として出版されています。
これらの作品はモーツァルトが聴衆の耳に心地よく受け入れられるように配慮されて作られているようで、特にこの13番の第2楽章は終始ゆったりとした牧歌的な雰囲気でとても安らぎます。


ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 K.415 (387b)/第2楽章 Andante ヘ長調
写真に寄せて◆ 
冬の使者が到来しました。
先日近くの上堰潟公園を歩いていたら、白鳥が湖面で羽を休めていました。誠に優雅な姿でした。
毎年何千キロもの旅をして帰ってきてくれるのですが、本当に野生のたくましさには脱帽です。蒔くことも刈ることもしなくても彼らは厳しい自然の中でちゃんと生きています。

2015年10月23日金曜日

ショパン/24の前奏曲 op.28 No.24 ニ短調

先日、ショパン国際ピアノコンクールの本選結果が発表されました。今年の1位はチョ・ソンジンさんで、韓国人の1位入賞は初めてだそうです。山口県出身の小林愛実さんは惜しくも入賞を逃したそうです。
動画サイトでいくつかの演奏を聴きましたが、本選に残っている方々は超絶テクニックでただただ感心しました。弛まぬ研鑽を積まれたことと敬服しました。
この時季はなんとなくショパンが聴きたくなります。先日の「きらクラ!」でも取り上げられていた前奏曲集から最後の24番を聴いてみます。曲集を締めくくる重厚で、深い哀愁を感じさせる激烈な作品で、胸をかきむしられるようです。


ショパン 24の前奏曲 op.28 No.24 ニ短調

心に残るピアニスト(ド素人の鑑賞MEMO)
私も今まで数多くのピアニストの演奏を聴いてきました。素人感覚ですが、その中で特に心に残っている演奏は・・・・
内田光子 第8回(1970年)ショパン国際ピアノコンクール 第2位
2006年サイトウ・キネン・フェスティバル松本
 ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」 指揮:小澤征爾
 内田さんの奏でる音は最弱音に至るまで実に明快で、あいまいな音がひとつもなく、緻密にかつ大胆に壮大なベートーヴェンの音の大伽藍が構築される様に度肝を抜かれました。演奏が終わった後、感動でしばらく立てませんでした。
ダン・タイ・ソン 第10回(1980年)ショパン国際ピアノコンクール 第1位
 2011年ラ・フォル・ジュルネ新潟
 ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第4番 指揮:井上道義 仙台フィルハーモニー管弦楽団
 震災の年、開催が危ぶまれた演奏会に急遽代役で世界のダン・タイ・ソンが駆けつけて下さいました。間近にそのピアノの音に接し、そのあまりに美しい音色にただただ感嘆!! 言葉で表現出来ないほど繊細なタッチでした。
ジャン=マルク・ルイサダ 第11回(1985年)ショパン国際ピアノコンクール 第5位
 2011年ジャパン・ツアー 新潟
 シューベルト ピアノ・ソナタ 第15番 「レリーク」
 はじめはルイサダの独特の音の間合いに戸惑いましたが、このシューベルトの演奏を聴いた時、私は未体験の音楽領域に連れて行かれるような感覚を味わいました。彼は楽譜を追っているのではなく、音楽が内包するエネルギーを熟成させながらその場で音楽を紡いでいっているように感じました。素晴らしく感動的な体験でした。
辻井伸行 第13回(2009年)ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール 第1位
 2015年 日本ツアー 新潟
 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」
 辻井さんのチケットはなかなか取れないため、今まで行けませんでしたが、今年ようやく行くことができました。
 聴いて驚きました。彼の演奏には何かいいようのない異次元の世界を感じました。ベートーヴェンのソナタは非常に緊張を強いられる求心的で鋭角的なイメージを持っていましたが、それを根底から覆されるような演奏でした。こんなにも豊饒なベートーヴェンの世界に接したことはありませんでした。何度も聴いてみたくなる演奏でした。

2015年10月17日土曜日

K.281(189f)ピアノ・ソナタ(第3番)変ロ長調 第3楽章

 
 このピアノ・ソナタは1775年(モーツァルト19歳)の初頭書かれた「ミュンヘン・ソナタ集」あるいは「デュルニッツ・ソナタ集」と呼ばれるソナタ集の第3曲目です。
この作品集はモーツァルトがヨーゼフ・ハイドンやヨハン・クリスティアン・バッハの作品を手本にして書いたといわれていますが、アインシュタインはこの第3楽章のことを次のように述べています。
『はじめの二楽章はハイドン自身よりもハイドン的だと言えようが、終楽章では突如として全く本然のモーツァルトが目ざめる。 ハイドンが忘れ去られているだけでなく、ヨーハン・クリスティアーン・バッハも忘れ去られている。そしてひかえめなコンチェルト風の曲相と旋律的な優雅さを持つ、このロンドの作曲の日付がそんなに確実でないとしたら、われわれはこの曲を十年後のヴィーン時代のものとするところであろう。』


ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.281(189f)/第3楽章Allegro 2/2 ロンド形式
写真に寄せて
日差しに誘われて近くを散歩してたら、きれいなススキが風にそよいでいました。やはり日本の秋にはススキが似合います。ただこの付近では外来種のセイタカアワダチソウが凄まじい勢いでススキの生息域を侵しています。そんな光景を見ると少し悲しくなってしまいます。

2015年10月11日日曜日

K.292(196c)ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調 第3楽章

ユーモラスな光景がでたところで、ちょっと変わった楽器の組み合わせのデュオを聴いてみます。
モーツァルトのピアノを伴わない二重奏曲は数少ないですが、その中でこの曲はファゴットとチェロという唯一の組み合わせの作品です。
1775年頃ミュンヘンの熱烈なファゴット愛好家のために書かれたと思われています。
ファゴットのユーモラスで表情豊かなメロディーにとても心和む作品になっています。


ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調 K.292(196c)/第3楽章 Allegro

2015年10月10日土曜日

K.237(189c)行進曲 ニ長調

モーツァルトの作品に「行進曲」というジャンルがあります。
当時、主にセレナードやディベルティメントの前後に演奏されていたようです。
このK.237は、K.203(189b)のセレナード ニ長調に付随して1774年8月ザルツブルクで作曲されました。オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット各2本、ヴァイオリン2部、バッソで構成されています。
この種の音楽は、富裕貴族の祝賀や表敬などの行事の際に演奏され、雰囲気を盛り上げるために明るく娯楽的に作られています。現在のように再生装置のない時代ですから、常に生BGMだった訳で、今思うと随分贅沢な話です。
現在演奏会などで取り上げられることはほとんどありません。


行進曲 ニ長調 K.237(189c)
写真に寄せて
当地新潟では現在「水と大地の芸術祭」というイベントが行われています。
写真はその一環の上堰潟公園のワラアートです。美術大学の学生さんたちが一生懸命作ってくださいました。

2015年10月1日木曜日

K.303(293c) ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 第2楽章

早いものでもう10月です。コスモスが風に吹かれて愛らしく揺らいでいます。
この爽やかな秋の日にK.303のヴァイオリン・ソナタを聴いてみます。
以前第1楽章を取り上げましたが、第2楽章はテンポ・ディ・メヌエットでこのソナタはこの楽章で曲を閉じます。
いかにもメヌエットらしい愛らしくのびやかな旋律と細かいパッセージが交互する変則的な形式の音楽になっているそうですが、聴いていて全く不自然な感じはしません。


ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.303(293c)/第2楽章 Tempo di Menuetto
余談
ここ最近穏やかな秋の日が続いていましたが、今夜から暴雨風雨の予想が出ています。
収穫時期を迎えている果実などに被害が出ないことを願っています。
<写真>角田山を望む上堰潟公園のコスモス。

2015年9月26日土曜日

K.425 交響曲(第36番)ハ長調 「リンツ」第4楽章

モーツァルトは1783年7月に妻コンスタンツェを紹介するためにザルツブルクに帰郷しました。その滞在の帰途にリンツに立ち寄った際に書かれたのがこの交響曲です。
リンツでは大歓迎を受け、トゥーン伯爵の邸宅に迎えられしばらく滞在しました。その際伯爵が企画した音楽会のためにこの曲が書かれたといわれています。
手紙などの資料によると10月30日から書き始めて11月4日の音楽会に間に合わせたようです。コピー機などない時代、各パート譜に写す手間等考えると信じられないスピードです。
曲は4楽章からなっていて、全体にのびやかで気品のある快活さに溢れた魅力的な作品です。
この第4楽章は短くてきびきびした主題がリズミックに展開して知的な感じがします。


交響曲 ハ長調 K.425「リンツ」/第4楽章 Presto
写真に寄せて
実りの秋です。ここ新潟平野もたわわに実った稲穂で埋め尽くされていましたが、現在はほとんど収穫も終えています。写真は1週間前の19日に角田山を望む蒲原平野で撮影しました。

2015年9月22日火曜日

K.464 弦楽四重奏曲(第18番)イ長調 第4楽章

最後の楽章です。アレグロ・ノン・トロッポ(自筆譜はアレグロ)イ長調 2/2拍子。
第1楽章から派生した第1主題をヴァイオリンが奏でたあとすぐに対位法的な発展が始められます。
この展開は『あらゆる室内楽曲中、「学問的」様式の最も完璧な例のひとつ』という評論家もいます。
確かにジュピターの最終楽章のような均衡美を感じさせます。
そして最後はアインシュタインが「聴衆をきわめて瞑想的にして立ち去らせる」と評したppで静かに全曲を閉じます。


弦楽四重奏曲 イ長調 K.464/第4楽章 Allegro non troppo
余談
全楽章を通してこの曲の深い味わいに魅了されます。この季節にいつも抱きしめていたいような作品です。
よく知られているように、この曲の完成した1月前(1874年12月14日)にモーツァルトはフリーメイソンに入団しています。そのことが創作上何らかの影響を及ぼしていると考えることは自然なことだと思いますが、入団を境に彼の作品は一段と深さを増したと感じるのは私だけでしょうか?

2015年9月21日月曜日

K.464 弦楽四重奏曲(第18番)イ長調 第3楽章

第3楽章はアンダンテ ニ長調 2/4拍子。主題と6つの変奏曲からなっています。
それぞれの変奏は強い特徴を示すものではなく、全体的にゆったりと調和した空気感を保っています。
第4変奏はニ短調になっています。最後の第6変奏の後には長いコーダがついて静かに楽章を閉じます。


弦楽四重奏曲 イ長調 K.464/第3楽章 Andante ニ長調
余談
今朝も爽やかな朝日に包まれています。素晴らしい秋の一日のスタートです。
このような日に、ゆったりとモーツァルトの音楽を楽しみながら家事をするというのも素敵な過ごし方です。

2015年9月20日日曜日

K.464 弦楽四重奏曲(第18番)イ長調 第2楽章

第2楽章はメヌエット、3/4拍子、イ長調で、第1楽章がメヌエットに変容したような印象を受けます。
主要な2つのモティーフが順に登場して、少し経過してから対できかせて、その後ソナタ形式の展開部のように発展します。
ゆったりと気の向くままに、4つの音色が対話しながら散歩しているような雰囲気の楽章です。


弦楽四重奏曲 イ長調 K.464/第2楽章 Menuetto

<写真>北方文化博物館(旧伊藤邸)の100畳敷の大広間

2015年9月18日金曜日

K.464 弦楽四重奏曲(第18番)イ長調 第1楽章

この弦楽四重奏曲は有名なハイドンセットの第5曲目にあたり、1785年1月ウィーンで書かれています。
名前のついている4曲目のK.458「狩」、6曲目のK.465「不協和音」にはさまれてやや控えめな存在ですが、とても魅力的な作品です。
全体を通して透明感にあふれる柔らかな雰囲気に包まれ、半音階的な繊細なハーモニーは曲に奥深い陰影をもたらしています。緻密で卓越した作曲技法が駆使されているそうで、絶賛する専門家も多いようです。
第1楽章はイ長調 3/4拍子、ソナタ形式で書かれ微妙な転調を味わうことができます。


弦楽四重奏曲 イ長調 K.464/第1楽章 Allegro
余談
この四重奏曲には特別キャッチーな旋律があるわけではありませんが、しっとりと落ち着いて淡々と旋律を紡いでいきます。年齢のせいなのでしょうか、このような音楽が深く心をとらえる今日この頃です。
<写真>新潟市北方文化博物館(旧伊藤邸)の大広間からのぞむ庭園

2015年9月14日月曜日

K.270 ディヴェルティメント 変ロ長調 第2楽章

第2楽章はアンダンティーノ へ長調 4分の2拍子。
主題は第1オーボエが奏で、第2オーボエとファゴットがカノン風の模倣を添えていて、実に愛らしく親しみのもてる楽章です。
このような小品の中にもモーツァルトの才気がほとばしり、何度聴いても魅了されます。


ディヴェルティメント 変ロ長調 K.270 第2楽章 Andantino ヘ長調
余談
この管楽六重奏用のターフェルムジーク(食卓音楽)の連作は1775年7月から1777年1月の間にザルツブルク宮廷のために作曲されたと思われています。
へ長調 K.213、変ロ長調 K.240、変ホ長調 K.252、へ長調 K.253、変ロ長調 K.270 の5曲によって構成されています。いずれも小規模な4楽章形式(K.253のみ3楽章)で、極めて簡素な外観の作品ですが各楽器の絶妙なハーモニー、洒脱な曲想、親しみやすさなど、ちょっとリラックスしたい時に聴くにはもってこいの作品の数々です。これからも機会をみて取り上げたいと思います。

2015年9月13日日曜日

K.270 ディヴェルティメント 変ロ長調 第1楽章

モーツァルトは管楽のためのディヴェルティメントをいくつか書いていますが、この曲はザルツブルク宮廷のためのターフェルムジーク(食卓音楽)として書かれた5曲の連作の最後のものです。
貴族の方々の食事の折に演奏されていたようです。
オーボエ、ホルン、ファゴットが各2本の構成でシンプルでリラックスした心から楽しめる音楽になっています。
1777年1月ザルツブルクで作曲されています。この第1楽章はこのシリーズの中では最も長い楽章になっています。


ディヴェルティメント 変ロ長調 K.270 第1楽章 Allegro molto
余談
ご無沙汰しておりました。長らくお休みをいただきました。
私も寄る年波には勝てず、あれ以後体のメンテナンスが必要となり、仕事もリタイアして療養に努めております。
早く元気になっていろいろな山に登りたいと願っています。
また時々気が向いたらこのサイトを更新させていただきますので、お時間がありましたら是非遊びにいらしてください。

2015年5月9日土曜日

K.466 ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 第2楽章

今日は有名なニ短調のピアノ協奏曲を聴きます。
暗雲漂う第1楽章とは対照的にこの第2楽章はゆったり語りかけるようなピアノのソロで始まります。
そして、中間部はト短調の鬼気迫る旋律が展開した後、またはじめの優しい歌に戻ります。
作曲されたのは1785年の2月。モーツァルトの予約演奏会で彼自身の独奏で初演されました。
それまでの社交的で明るい協奏曲とは一線を画し、それ以後のこのジャンルの作品に多大の影響を及ぼした歴史的な作品です。モーツァルトの魂の叫びを聴くようです。


ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466/第2楽章 Romanze 変ロ長調
余談
この協奏曲は私にとってとても思い出深い作品です。
クラシックを聴き始めて、まだそんなにモーツァルトに魅力を感じなった20代後半、仕事で落ち込んでいてやや自暴自棄の頃がありました。或る夜、ふと暗い自室でこの曲のレコードに針を置きました。
第1楽章のニ短調の切迫した旋律は自分の気持ちを代弁してくれているようで心を奪われました。
そして第2楽章にきて、一転してシンプル極まりないピアノの旋律が流れたとき、言いようのない感覚に包まれました。「美しい」心の底からそう感じました。モーツァルトの音楽が腹の底に落ちた感覚でした。
それ以後、私は心からモーツァルトを愛し楽しむようになりました。
■ブログの更新お休みします■
唐突ですがしばらくゆっくり休みたくなりましたので、ブログの更新を期間未定でお休みさせていただきます。長い間お付き合いいただき本当にありがとうございました。
いままで載せた曲はまだほんの一部で、数えきれない名曲の数々がモーツァルトの宝箱には残っていますが、またいつか再開できる日が来ましたら、唐突に更新させていただきます。本当にありがとうございました。

2015年4月29日水曜日

K.303 (293c) ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 第1楽章

新潟県加茂市・粟ケ岳麓の公園にて(2015.4.29)
温暖な春の陽射しの中、新緑が鮮やかな輝きを放っています。心地よい季節です。
今日はヴァイオリン・ソナタ聴いてみます。
このソナタは1778年マンハイムで書かれた一連の作品のひとつで、自由で斬新な形式上の実験を大胆に行った曲と言われています。
ゆったりとしたアダージョで始まり、情熱的なアレグロが続いています。アダージョが第1主題でアレグロが第2主題となっていますが、展開部を欠くソナタ形式となっています。


ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.303(293c)/第1楽章 Adagio - Molto allegro
先日のきらクラ!
またまたBGM選手権には感動をいただきました。
鈴木三重吉の童話「命の泉」よりからのメルヘンチックな詩でしたが、レニーシュカさんの芥川也寸志の交響三章から第2楽章は素晴らしいマッチング!!! 脱帽です。日本の作曲家の作品にこんなに魅力的な曲があるなんて全く知りませんでした。選者の方は驚くべき見識の広さをお持ちです。他の2作品も普段だったらベストでもおかしくない充実の作品でした。この選手権の最近のハイレベルには驚くばかりです。
投稿者の方、選考されるコダマッチさんともにスーパーブラボウです。

2015年4月19日日曜日

K.138 ディヴェルティメント ヘ長調 第3楽章

上堰潟の菜の花と満開の桜(2015.4.12)
第3楽章はプレスト、2/4拍子。A-B-A-C-Aのロンド形式で、快活に曲を閉じます。


ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/第3楽章 Presto

2015年4月18日土曜日

K.138 ディヴェルティメント ヘ長調 第2楽章

第2楽章はアンダンテ。 穏やかな弦の調べに優しさが溢れ、うっとりと聴き入ってしまいます。
若きモーツァルトのたおやかな感性が伝わってきます。
尚、この楽章は11年後の1783年に作曲されたヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423 第2楽章ととても類似した楽想になっています。


ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/第2楽章 Andante ハ長調
先日のきらクラ!
先日のBGM選手権はとても聴きごたえがありました。お題がちょっと取っ付きにくさがあり、私はパスしてしまいましたが、選ばれた3作品はそぞれに違った色彩を放ち、同じ詩がこのように違って感じられることにとても感心しました。
中でもじゃくさんのシューマン/ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 第3楽章はとても新鮮でした。私には初耳の曲で、穏やかなピッチカートの旋律がノスタルジーを感じさせてとても感動しました。早速CDを購入して私もシューマン島に上陸しました。これから少しずつ探索していきます。
他にも感性豊かなリスナーの方々の素敵な投稿がたくさんあり、ますます魅力的な番組になっています。

2015年4月16日木曜日

K.138 (125c) ディヴェルティメント ヘ長調 第1楽章

写真は先日の日曜日の上堰潟公園の満開の桜と一面の菜の花です。1年で最も輝いている季節です。
今日はモーツァルトが16歳の時ザルツブルクで書いたといわれる3曲のディベルティメント(K.136, K.137, K.138)の第3曲を聴いてみます。前年のイタリア旅行での印象を反映しているような澄み切った明るさに満ちていて地中海の陽光が思い浮かぶようです。
弦楽合奏としても弦楽四重奏としても演奏されますが、ここでは四重奏版で聴いてみます。


ディヴェルティメント ヘ長調 K.138/第1楽章 Allegro 

2015年4月12日日曜日

K.285 フルート四重奏曲(第1番)ニ長調 第3楽章

つづいてフランス風の明るいロンド楽章です。
快活なフルートの音色にのびやかな弦の旋律が心地よく、華やかな盛り上がりの中で曲を閉じます。
桜の季節にふさわしい軽やかで心華やぐ名曲です。


フルート四重奏曲 ニ長調 K.285/第3楽章 Rondeau
写真に寄せて
4月9日、満開の桜の下、多くの市民がりゅーとぴあ周辺の公園を散歩していました。みんな笑顔で平和で満ち足りた時間を楽しんでいました。これほど多くの人々を幸福にするのですから桜は千両役者です。
バックの大きな建物は「りゅーとぴあ」でアリーナ形式のコンサートホール、劇場、能楽堂などを有する施設です。
このコンサートホールの音響は、世界的にも第一級であるといわれています。
私は外国のホールは知りませんが、首都圏をはじめいろいろなホールで音楽を聴いてきましたが、このりゅーとぴあの音響に勝るホールをまだ知りません。
このホールで5月8日~10日にラ・フォル・ジュルネ新潟が開催されます。

2015年4月11日土曜日

K.285 フルート四重奏曲(第1番)ニ長調 第2楽章

新潟市・りゅーとぴあ周辺公園(2015.4.09撮影)
第2楽章はアダージョ、ロ短調。
フルートの哀愁を帯びた美しい旋律と、シンプルな弦のピチカートがとても印象的な楽章です。
モーツァルトの音楽の中で弦のピチカートがこれほど続く音楽は記憶にありません。
途中の和音で終止して、そのまま第3楽章へと続いていきます。


フルート四重奏曲 ニ長調 K.285/第2楽章 Adagio ロ短調

2015年4月10日金曜日

K.285 フルート四重奏曲(第1番)ニ長調 第1楽章

新潟市・りゅーとぴあ周辺(2015.4.9撮影)
桜が満開になりました。みなが笑顔で見上げています。1年で最も華やぐ季節です。
このような心弾む日にはフルート四重奏曲を聴いてみます。
モーツァルトは4曲のフルート四重奏曲を書いていますが、このK.285はその中の第1番で最も有名なものかも知れません。特にこの第1楽章はよく耳にします。
1777年の12月にマンハイムで書かれました。この年の9月のザルツブルクでの職を辞して母とともに就職活動の旅に出ていた時期で、ここで裕福な音楽愛好家ド・ジャンの依頼で2つのフルート協奏曲(K.313, K.314)と、3つのフルート四重奏曲(K.285, K.285a, K.285b)を書いています。
モーツァルトは当時音程の不安定なフルートをあまり好んでいなかったといわれていますが、この曲はフランス風の優美さとモーツァルト一流の憂愁を帯び、瑞々しい感性に溢れています。


フルート四重奏曲 ニ長調 K.285/第1楽章 Allegro

2015年4月5日日曜日

K.414(385p) ピアノ協奏曲(第12番)イ長調 第1楽章

新潟市・上堰潟公園(2015.4.4撮影)
当地も桜が開花し始めましたが、満開にはもう少しかかりそうです。晴天の昨日近くの公園に行ってきました。菜の花が素晴らしい黄色の絨毯を敷いていました。晴れがましい春の訪れです。
久しぶりにピアノ協奏曲を聴いてみます。
この12番の協奏曲は、1782年の晩秋に作られました。前年にザルツブルクでの宮仕えに決別したモーツァルトが、新天地ウィーンで作曲家・ピアニストとして自立した生活を始めた頃の最初のピアノ協奏曲のシリーズの1作です。
「……これらの協奏曲はやさしすぎもせず、むずかしすぎもせず、ほどよい中間を保っています。非常に華麗で耳に快くひびき、からっぽにおちいることなく自然さを保っています……」(モーツァルトの手紙から)。
と手紙に書いているように、ウィーンの聴衆に配慮した穏健な伝統の枠組みの中で、美しくのびやかな音楽を展開しています。同じイ長調のK.488は4年後の1786年に作られています。


ピアノ協奏曲イ長調 K.414/第1楽章 Allegro

今日のきらクラ!
今日の放送では“「懐中時計」のその後”というユニークな投稿に驚きました。
調べてみたら、夢野久作さんのあの詩はお題で出題された内容で完結しているようで、それに音楽に合わせてその後のお話を作ってしまうなんて、常人にはとても思いつきません。
またその追加されたお話が実に温かく、原作に見事にマッチ、BGMにもピッタリでした。
「宇宙エレベータが待てない」さん、ブラアボ!!!!! 歴史的名作になると思います。

2015年3月29日日曜日

The Beatles / Here comes the sun

本格的な春がやってきました。
当地では桜はまだ蕾ですが、梅が美しい開花を迎えています。
ちょっとモーツァルトからは離れて、この時期によく流れるビートルズの名曲を聴いてみます。
ビートルズの最後のアルバム「アビー・ロード」に入っていて、私の超お気に入りです。作曲したのはジョージ・ハリスンで、この曲をきっかけに私は彼が大好きになりました。
多くのカバーが出ていますが、今日はフルート、ハープ、ヴィオラのトリオで演奏されているものを聴いてみます。暖かい春を迎えた喜びがリズミカルに表現されています。


George Harrison/Here comes the sun/played by Aureole Trio

<歌詞>
Here comes the sun, here comes the sun, and I say it's all right
Little darling, it's been a long cold lonely winter
Little darling, it feels like years since it's been here
Here comes the sun, here comes the sun and I say it's all right

Little darling, the smiles returning to the faces
Little darling, it seems like years since it's been here
Here comes the sun, here comes the sun and I say it's all right

Sun, sun, sun, here it comes...
Sun, sun, sun, here it comes...
Sun, sun, sun, here it comes...
Sun, sun, sun, here it comes...

Little darling, I feel that ice is slowly melting
Little darling, it seems like years since it's been clear
Here comes the sun, here comes the sun, and I say it's all right
It's all right

2015年3月28日土曜日

ハイドン/弦楽四重奏曲第77番 第2楽章

今日はモーツァルトが敬愛したハイドンの作品を聴いてみます。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)はモーツァルトの生涯をすっぽり見守るように長命でした。
「交響曲の父」「弦楽四重奏曲の父」とも呼ばれて、交響曲は108曲、弦楽四重奏曲83曲という膨大な作品を残しています。
その中で最も有名な、弦楽四重奏曲第77番ハ長調は「皇帝」という副題をもっていて、第2楽章が「オーストリア国家及び皇帝を賛える歌」の変奏曲で、主題はドイツ国歌になっています。
シンプルで崇高な美しさを感じさせ、心に深く残る旋律です。


ハイドン/弦楽四重奏曲第77番 第2楽章 Poco Adagio. Cantabile

余談1
私はハイドンの作品のCDは数枚しか持っていません。ハイドンには誠に申し訳ありませんが、バッハとモーツァルトに挟まれて、その存在感は薄れがちになっているように感じます。機会があったら少しずつ聴いてみたいと思います。
余談2
年度末です。新聞紙上に多くの人事異動が掲載されています。以前はその中に友人・知人の名前を発見して「彼は随分出世したなーーー」などと思いに浸りましたが、今年は殆ど退職して名前を見つけることは出来なくなってきました。ちょっと寂しいですが必然の流れです。

2015年3月22日日曜日

K.387 弦楽四重奏曲(第14番)ト長調 第4楽章

第4楽章は一転してモルト・アレグロ。
出だしのモチーフはジュピター交響曲の最終楽章を彷彿させます。
フーガのようなポリフォニックな響きと和声的な響きが交互して、緻密な構成になっています。
モーツァルトがバロック音楽を研究した成果が感じられ、非常な高みに到達した作品といえます。


弦楽四重奏曲 ト長調 K.387/第4楽章 Molto allegro

モーツァルトのハイドンセット
この曲を含めて6曲の弦楽四重奏曲はのちにまとめて出版され、ヨーゼフ・ハイドンに捧げられました。
その序文の中でモーツァルトは次のように述べています。(要約)
「私は弦楽四重奏曲の書き方については、あなたから深く教えられました。それを習得するのは決して楽なことではありませんでした。今、感謝の心を込めてあなたにこれを捧げます。どうぞあたたかい父親の気持ちで受け取ってください。」
モーツァルトほどの天才がこれだけの敬意をはらっていたのですから、ハイドンもすごい作曲家だったんですね。
■参考■ハイドンセットは下記の6曲からなっています(これからも順次取り上げていきます。)
                                (このブログで取り上げた楽章)
第1曲 K.387 ト長調 「春」       第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章
  2曲 K.421 (417b) ニ短調    第1楽章 第2楽章 第4楽章
  3曲 K.428 (421b) 変ホ長調   第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章
  4曲 K.458 変ロ長調 「狩」    第1楽章
  5曲 K.464 イ長調
  6曲 K.465 ハ長調 「不協和音」

余談
今日は「きらクラ!」がありません。なんか調子狂います。
古今和歌集に『世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし』とかいうのがありましたが・・・
『世の中に絶えてきらクラ!のなかりせば 日曜の心はのどけからまし』
というところでしょうか。なんかはりあいがありません。

2015年3月21日土曜日

K.387 弦楽四重奏曲(第14番)ト長調 第3楽章

福寿草(mari-garden)
春分の日です。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよくいったもので、すっかり春めいてきました。我が家の庭にも福寿草がかわいい姿を現してくれました。
今日は引き続き、通称「春」と呼ばれている弦楽四重奏の第3楽章を聴いてみます。
優美でゆったりとしたアンダンテ・カンタービレで、ハ長調で書かれていますが、どこか物憂い雰囲気をもっています。
今までこのジャンルでは第1ヴァイオリンが旋律を奏でて、他の楽器は伴奏に回ることが多かったのですが、この楽章では4本の弦楽器がそれぞれの独立した存在感を示しながら、全体として調和を保っています。慎重な楽想の運びで重厚さをも漂わせている力作です。


弦楽四重奏曲 ト長調 K.387/第3楽章 Andante cantabile ハ長調

余談
モーツァルトの音楽はすでに彼の頭の中に完璧に描かれていて、その自筆譜は非常にきれいで、書き直したり修正したりした形跡が殆ど残っていないとよく言われます。
しかし、このハイドンセットに関しては何度も何度も手直しをした跡が残っているそうです。それほど彼はハイドンから学んだことを生かし再構築しようとした並々ならない努力があったようです。

2015年3月14日土曜日

K.596 歌曲「春への憧れ」

先週末は春のような陽気でしたが、今週は一転して寒波の襲来でした。
春の本格的な訪れはもうしばらくかかりそうです。

この時期の定番ですが、モーツァルトの最晩年の歌曲「春への憧れ」を聴いてみます。
作曲されたのは1791年(モーツァルトの亡くなった年)1月14日で、歌詞はオーヴァベックの童詩集「フリッツヒェンの歌」の中から採られています。
この曲の主題はすぐ前の1月5日に作られた最期のピアノ協奏曲(27番)K.595の第3楽章のものが用いられています。 ドイツ語で「喜ばしげに Frohlich」と指示されていて、天真爛漫な子供たちが無邪気に歌うような、澄み切った明るさに満ちています。 この頃のモーツァルトの生活は悲惨な窮迫のどん底にあったと伝えられていますが、そのような影は微塵も感じさせていません。


春への憧れ K.596 
〔歌詞〕(第1・2節)
来ておくれ、なつかしい五月よ、来て樹々をふたたび緑にしておくれ
そしてぼくのために、小川のほとりにかわいいすみれを咲かせておくれ!
どんなにかぼくはすみれの花をもう一度見たがっていることだろう
ああ、なつかしい五月よ、どんなにかぼくは散歩に出かけたいことだろう!

先回のきらクラ!
年度末の繁忙に紛れ、なかなか更新できませんでしたが、先回の「きらクラ!」BGM選手権には素晴らしい感動をいただきました。
山村暮鳥 作「風の方向がかはつた」 は季節の変わり目の風と後半の妻への愛に、とても心がほっこりする素敵な詩でした。この詩にディーリアス/「フロリダ組曲」から第2曲「河畔にて」があてられました。初めて耳にする曲でしたが、出だしを聴いた瞬間魅了されました。
こんなに詩の雰囲気とマッチし、相乗効果をもたらす曲があったなんて知りませんでした。投稿した方にも選んだコダマッチにも感謝です。歴史的名作だと思います。

2015年3月1日日曜日

K.387 弦楽四重奏曲(第14番)ト長調 第2楽章

新潟市・越前浜の夕景(2015.2.28)
3月が始まりました。その美しい姿で私たちを魅了した多くの白鳥たちも北国に帰って行きました。
今年の春の訪れは少し早くなりそうです。
昨日は穏やかな気候だったので、近くの越前浜を散歩してきました。日差しは春を感じさせましたが、激しく波打つ海面はまだ冬の日本海でした。

昨年の3月に第1楽章掲載した、通称「春」と呼ばれる弦楽四重奏曲(第14番)の第2楽章を聴いてみます。
有名なハイドン・セットの第1曲で、モーツァルトの並々ならない研鑽のあとが表れているそうです。
4分の3拍子ですが、リズムに工夫を凝らして2拍子のような感じも出ていて二重の影を持たせています。


弦楽四重奏曲 ト長調 K.378/第2楽章 Menuetto : Allegretto ト長調

今日のきらクラ!
番組継続、ご自愛ステッカー増刷も決まり、ようやく落ち着いた雰囲気になりました。
コダマッチの三寒四温をテーマにした選曲も素敵で、春の足音が聞こえてきました。
勝手に名付け親では、私にはあまり馴染みのない作曲家イベールの「フルート協奏曲」から第2楽章でしたが、とても懐の広い安らぎを感じる魅力的な曲でした。私は何も浮かびませんでしたが、相変わらずリスナーのみなさんの斬新な発想には脱帽しました。「樹海」「かぐや姫、月に帰る」「静かな平泳ぎ」「ふきのとう」「ハヤシライスの憂鬱」「方向音痴のひとり旅」…豊かな想像力に感心したり、笑ったり、本当に面白いです。
その後にかかったモーツァルト ピアノ協奏曲20番 ニ短調 K.466 のブルーノ・ワルター弾き振りの演奏には感激しました。1937年のモノラル音源ですが、張りつめた緊迫感の中に清廉な美しさと湧き上がる激しい感情が見事に顕現した素晴らしい演奏でした。カデンツァも新鮮でした。なぜかこういう古い録音は郷愁を誘って、想像力をかき立てて味わい深いものです。
ふかわさんも体のメンテナンス大変のようですが、ご自愛くださいませ。私も以前腰痛で随分苦しみましたから、その切なさは理解できます。どうか快方に向かいますようお祈りいたします。ふかわさんなくして『きら☆クラ!』はありえません。

2015年2月28日土曜日

K.504 交響曲(第38番)ニ長調 「プラハ」第3楽章

弥彦山頂より望む粟ケ岳方面(2015.2.21)
メヌエットがないので、この楽章が終楽章となります。 プレスト、4分の2拍子でとてもきびきびした音楽になっています。
冒頭のモティーフは『フィガロの結婚』のスザンナとケルビーノの二重唱「早く開けて」と同じで、フィガロの成功の余韻を感じさせ、華やかなフィナーレへと向かっていきます。


交響曲ニ長調 「プラハ」K.504/第3楽章 Presto ニ長調/Christopher Hogwood con. The Academy of Ancient Music

余談
プラハでの『フィガロ』の成功を受けて、モーツァルトは「識者と愛好家の会」から招待され、妻コンスタンツェと義兄を連れだって1787年1月11日にプラハを訪れています。1月15日にウィーンの友人への手紙で次のように書いています。
『じっさいここでは「フィーガロ」の話でもちきりで、弾くのも、吹くのも、歌や口笛も、「フィーガロ」ばっかり、「フィーガロ」の他はだれもオペラを観に行かず、明けても暮れても「フィーガロ」「フィーガロ」だ。』
このような状況の中で、モーツァルト自身の指揮で初演されたこの交響曲はプラハの市民にどのように受け入れられたのでしょうか? 確かな記録は残っていないそうですが、おそらく熱狂的な盛り上がりであったことが想像されます。彼にとって絶頂期といっていいでしょう。

2015年2月22日日曜日

K.504 交響曲(第38番)ニ長調 「プラハ」第2楽章

弥彦山から望む柏崎方面の日本海(2015.2.21)
とても穏やかな週末です。
第2楽章はトランペットとテンパニーが登場しないアンダンテで、全体的にとてもゆったりとした抒情的な楽章になっています。


交響曲ニ長調 「プラハ」K.504/第2楽章 Andante ト長調/ Christopher Hogwood con. The Academy of Ancient Music

写真に寄せて
昨日は冬の新潟では珍しい快晴の一日でした。
友人の誘いがあり、初めて冬の弥彦山に登ってきました。この山は標高が634mで東京スカイツリーと同じになっています。また麓の弥彦神社は越後国一宮として信仰をあつめ霊験あらたかです。
今現在、周辺の平地の雪は殆ど消えていますが、弥彦山の5合目より上は残雪に覆われていました。友人推薦のスパイク付ゴム長靴が大変役に立ち、スリップの不安なく登ることができました。
頂上では日本海から飯豊連峰まで、360度の大展望を楽しめました。今年の登山は素晴らしいスタートをきりました。

2015年2月15日日曜日

K.504 交響曲(第38番)ニ長調 「プラハ」第1楽章

弥彦山頂より望む新潟市街
「フィガロの結婚」の大成功によってプラハに招かれたモーツァルトが、彼自身の指揮によって1787年1月19日プラハの国民劇場で初演されたため、この交響曲は「プラハ」と呼ばれています。
作曲されたのは1986年12月6日で、メヌエット楽章のない3楽章形式になっています。
この第1楽章は36小節に及ぶ壮麗で堂々とした序奏に始まり、緊張を解放するような柔らかな弦の旋律から主要部分が展開していきます。緻密なオーケストレーションでフィガロのモチーフも織り交ぜながら、聴く者の心を一時も離さない見事な音楽を展開しています。
今日はホグウッドの指揮による古楽器の演奏で聴いてみます。音の細部まで透けるようなシャープな演奏で、大編成での重厚な演奏とは一線を画しています。


交響曲ニ長調 「プラハ」K.504/第1楽章 Adagio - Allegro/Christopher Hogwood con. The Academy of Ancient Music

モーツァルトの4大交響曲
8歳の時に作曲された第1番ら始まって、多くの交響曲を残したモーツァルトでしたが、この「プラハ」は彼の交響曲の作品群の頂点を形成するものだと思います。
前作の36番「リンツ交響曲」のあと3年余の空白期を経て書かれましたが、もはや完成への途上にある作品ではなく、それは1年数ヵ月後に書かれるいわゆる3大交響曲に比肩する高みに達していて、この作品も含めて4大交響曲と呼ぶのがふさわしいと思います。
モーツァルトの時代の演奏会の前座的な役割だった交響曲が、深い芸術的な主要ジャンルへ跳躍的に高まった記念碑的な作品だといえます。
私はピアノ協奏曲のジャンルでは1785年のニ短調 K.466にも同じような跳躍を感じます。
1785年から86年はモーツァルトの生涯にとっても分岐点となった年のようです。

2015年2月11日水曜日

K.493 ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 第1楽章

今日もフィガロの年(1786年)に書かれた曲を聴いてみましょう。
モーツァルトは2曲のピアノ四重奏曲( p, vn, va, vc)を書いています。1作目のト短調(K.478)は前年1785年の7月に書き、ホフマイスター社から出版されましたが、期待するような一般受けするものではなかったためか、2作目のこの曲はアルタリア社から1787年に出版されました。前作に比べるとかなり親しみやすい内容になっています。
モーツァルトが歴史上初めて書いたこのジャンルの曲はこれが最後になりましたが、これ以後ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスなどによって引き継がれ、室内楽の主要なジャンルとなりました。
この第1楽章はゆったりとしたトゥッティ(全合奏)で始まり、ピアノを中心とした弦のアンサンブルがきめ細かく表情豊かに展開されていきます。


ピアノ四重奏曲 変ホ長調 K493 第1楽章 Allegro 4/4 ソナタ形式

余談
モーツァルトの創作エネルギーには驚くべきものがあります。
この年は「フィガロの結婚」の上演で大忙しだったはずですが、その他にもこの曲を含めて、かなり多くの主要作品を残しています。一部を列挙します。

・オペラ「劇場支配人」K.486
・ピアノ協奏曲第23番 K.488、24番 K.491、25番 K.503
・ホルン協奏曲(第4番)変ホ長調 K.495
ケーゲルシュタットトリオ K.498
・弦楽四重奏曲 ニ長調「ホフマイスター」K.499
ピアノ三重奏曲 ト長調 K496、変ロ長調 K.502
・交響曲(第38番)ニ長調「プラハ」K.504 ・・・・・・

いずれも歴史上燦然と輝く名曲ばかり。また、私のモーツァルト教が始まりますが、凄すぎます!!!

2015年2月8日日曜日

K.494  ピアノのためのロンド ヘ長調

陽光を浴びて草を啄むカモ(上堰潟公園)
昨日は穏やかな週末でした。市内の雪はほとんど消え、春の到来を思わせる陽光がさしていましたが、また今夜から積雪の予報が出ていて、もうしばらく春は足踏みです。

今日は「フィガロの結婚」のすぐ後(1786年6月)に書かれたピアノの小品を聴いてみましょう。
このロンドの自筆楽譜には、「クラヴィーアのみのための小ロンド」と書かれています。しかし出版の際に2年後の1788年に作られた「アレグロとアンダンテ」K.533を第1・第2楽章とし、この曲をその第3楽章として1曲のソナタが構成されました。現在でもピアノ・ソナタ第15番として扱われることが多いようです。
このロンドは愛らしい冒頭のテーマでとても親しみやすい曲です。


ピアノのためのロンド ヘ長調 K.494 allegro

今日の『きらクラ!』
「大切なお知らせがあります」・・・・・思わせぶりなふかわさんの言い回し。
何なんだろう?・・・と不安な気持ちで前半を聞いていました。
我が家の鋭い洞察家は「ふかわさんが言った後、真理さんは引き気味にに笑っていた・・・・。」「そうだ!! 真理さんが4月から外国に行ってこの番組を降りるんだ。演奏家にはよくあるよね。」という結論に達しました。
「真理さんの代わりって誰だろう?」「難しいよね。ひとりでやるか、いっそのことコダマッチとやるのがいいんじゃない?」とまで話題は発展しましたが・・・・ふかわさんたら、う-----っもう!!!!! 心配かけて!!!!
ということで、番組がこれからも続くように一生懸命ボツ投稿を続けます。
それにしても今日のBGMも初めて聴く曲ばかり。みなさん守備範囲が広いのに驚きます。私の出来ることは626のモーツァルトの引出から探すことです。ぐわんばるぞ----!!! 老化防止のために。

2015年2月7日土曜日

吉田秀和「モーツァルト その音楽と生涯」 全巻刊行


昨年6月より順次刊行されていた、吉田秀和さんの『名曲の楽しみ「モーツァルト その音楽と生涯」』が先週最後の第5巻が刊行されて遂に完結しました。まことに嬉しいかぎりです。
 シリーズの新刊の発売日間近になると、毎日本屋さんに行ってそわそわしていた1年でした。
 全巻揃って本当に幸せな気持ちです。近年これほど待ち焦がれた出版物は記憶にありません。

 この本は、生前の吉田秀和さんが41年間続けたNHK-FMの「名曲の楽しみ」の中から、1980年4月から87年2月まで続いたモーツァルトの作品解説の集大成です。
 私は時々しか聞けませんでしたが、朴訥とした独特の口調で聴取者に淡々と語りかける分かりやすい解説は、今でも鮮明に記憶していま
す。本の活字を追うだけで当時の放送が蘇ります。実際CDも付属しているので、ファンにはたまりません。

 内容はその語り調をそのまま再現しているので、実に分かりやすく頭に入ってきます。洋書の日本語訳によくある、あの関係代名詞が続くような翻訳調に比較すると、読み心地は天地の差があります。
 時系列にモーツァルトの殆ど全作品を扱っていますから、伝記としても作品解説としても読めます。
 日本の日本人のためのモーツァルト解説本として歴史的な価値を感じます。

 このように充実した中身もさることながら、この本の装丁も実に素晴らしいものです。特にカバーの絵画は芸術的で、モーツァルトの色彩豊かな音楽の世界を視覚的に見事に表現していると思います。
 また、各巻の帯にあるコピーがとても好きなので、ここで転載させていただきます。
<第1巻>1761年-1772年
「名曲の楽しみ、吉田秀和です。またモーツァルトの作品を皆さまがたと一緒にきいていくことになりました。終わるまで何年かかるか私は存じませんが、気が向いたらどうぞ続けてきいてください」
<第2巻>1772年-1776年
「モーツァルトにとっての1773年は、イタリーの音楽の影響を十分に消化し、ウィーンへ行って、ドイツ・オーストリアの音楽の精神的な深みを汲み取る、そういう仕事をした年になるわけですね」
<第3巻>1777年-1782年
「彼はもっと広い大地で、自由な音楽家として、創造する芸術家として生きたいと思った。この1781年というのは、モーツァルトの大爆発があった、非常に重要な年になるわけです」
<第4巻>1782年-1786年
「モーツァルトは抒情的、歌謡的なものと、リズミックでダイナミックなものを表現する音楽と、その両方ができたんですね。だからやっぱりオペラの作曲家としての大天才だったということになる」
<第5巻>1787年-1791年
「モーツァルトはこれ以後いくつかの作品を書きましたけど、こんなに底抜けに明るくて、人の心をいつまでも突き刺すように染み通ってくる音楽を書く喜びを、もう何回も繰り返し味わうわけにはいかなかった」

 これらの言葉からだけでもモーツァルトの生涯が浮かび上がってきます。これからずーっと何度も何度も読ませていただきます。出版に携われた多くの方々に深く御礼申し上げます。
 そしてなにより、天国の吉田秀和先生、ありがとうございました。


2015年1月31日土曜日

K.492 「フィガロの結婚」 第4幕 フィナーレ

伯爵はスザンナと秘かに会えるのを楽しみにやってきます。
そして、スザンナの服を着た伯爵夫人をスザンナと勘違いして、甘い言葉をささやくのです。
これで動かぬ浮気の証拠が押さえられてしまいました。伯爵夫人は何も知らない伯爵に正体を明かします。スザンナと思って近寄った伯爵は、実はそれが自分の妻だったことを知って驚きます。
深く反省した伯爵のことを、夫人は温かく許してあげたのでした。
めでたし、めでたしでフィナーレを迎えます。


「フィガロの結婚」K.492 第4幕『フィナーレ』

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
 (前半略)
伯爵     伯爵夫人よ、許してくれ!
伯爵夫人 私はあなたより素直ですから、はい・・・と申します。
全員    これで、みんな満足でしょう

       苦痛と気まぐれで過ごした今日一日
       喜びと満足で締めくくるのは ただ愛だけだ!
       花嫁花婿・・・友達も
       みんな楽しく踊り、花火を上げよう!
       楽しい音楽に合わせて みんなで祝いに急ぎましょう。
余談
かなり簡略化した形ですが、なんとかフィナーレにこぎ着けました。
今回、改めてDVDを見たり関係書籍を読んでみて、このオペラのストーリーは人間関係が複雑にからんで、1度観ただけではなかなか理解出来ないのではないかと思いました。
物語は喜劇的ですが、権力に対する批判精神や、人間の心の深淵に触れる内容で、何回観ても飽きません。
それもこれもモーツァルトの素晴らしい音楽があればこそです。彼の音楽はどんな場面でも、その根底に人間への慈しみと愛にあふれています。台詞のひとつひとつが極上のハーモニーと旋律に乗って、私たちをこの上ない幸福感に包んでくれます。これからもずーっと愛され続けていくことでしょう。

2015年1月27日火曜日

K.492 第4幕 『早くおいで、美しい喜びよ』

Happy Birthday !!  Wolfgang Amadeus Mozart !!!

舞台は変わってその夜、屋敷の裏庭です。
伯爵を懲らしめるためにスザンナと伯爵夫人が衣装を交換してやってきます。スザンナはマルチェリーナからフィガロが来ていることを知らされ、いたずら心を込めて歌うのがこのアリアです。
本当はフィガロに向けた愛のアリアなのですが、陰で聞いているフィガロは伯爵に向けたものだと誤解して非常に憤慨します。


「フィガロの結婚」K.492 第4幕『早くおいで、美しい喜びよ』 アンダンテ 8分の6拍子 ヘ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
 スザンナ
  早くおいで、美しい喜びよ
  愛がお前を招いている所へ
  夜空に光がまたたいている間に。
  ここでは小川では、つぶやきそよ風も戯れ
  甘いささやきに心はよみがえる
  花はほほ笑み、草木はさわやかに
  すべてを愛の喜びに誘う。
  早くおいでいとしい人、この木々の茂みに
  あなたの額をバラの花冠で飾ってあげたいの。

生誕259年おめでとう !!
今年もこの日がやってまいりました。天上界のモーツァルト様、お誕生日おめでとうございます。
あなた様がこの世に出現されたことは、天からの人類へのかげがえのない贈り物でした。
本当にどれだけ感謝しても足りないくらいです。ありがとうございました。これからもよろしくお願い申し上げます。

2015年1月25日日曜日

K.492 第3幕 二重唱『やさしい夜の風が』

そこにスザンナが登場します。スザンナたちの結婚の行方を案じていたいた伯爵夫人は、スザンナから「万事うまく行きましたから」という報告をうけます。
安堵した夫人は、いよいよ伯爵を懲らしめるための作戦を立てます。スザンナが伯爵に今夜会う場所を知らせる偽の手紙を書くようにいいます。
そこで歌われるのがこの「手紙の二重唱」と呼ばれるカンツォネッタです。
手紙の文句を伯爵夫人がいって、スザンナが同じ文句を繰り返しながら筆記していくカノンの形で歌い続けられていきます。シンプルな歌ですが、モーツァルトの筆致は絶品です。


「フィガロの結婚」K.492 第3幕『やさしい夜の風が』アレグレット 8分の6拍子 変ロ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
スザンナ  そよ風に・・・
伯爵夫人 甘く優しいそよ風が・・・
スザンナ  優しいしそよ風が・・・
伯爵夫人 さわやかに吹く今宵・・・
スザンナ  さわやかに吹く今宵・・・
伯爵夫人 庭の茂み、松の木の下で・・・
スザンナ  松の木の下で・・・
         庭の茂み・・・松の木の下で・・・
伯爵夫人 それでわかるわ。
スザンナ  おわかりになりますわね。

今日の『きらクラ!』
ゲストにピアニストの三舩優子さんをお迎えして楽しいトーク炸裂でした。
なんといっても圧巻はふかわさんと三舩優子さんの連弾による「キラキラ星変奏曲」でした。
ふかわさんの音楽対する熱い思いが伝わってきて、とても好感がもてました。ほとんど楽器のできない私などでも、アマチュアでもプロでも本番への緊張感のすさまじさの一端を知ることができました。
これからも頑張れふかわさん! 真理さんとの「鏡の中の鏡」に向けて!!!

2015年1月24日土曜日

K.492  第3幕『どこへ行ったの、あの頃の喜びと嬉しさは』

その後、お話は複雑な経緯をたどり、裁判に敗れたフィガロが、実はマルチェリーナおば様と弁護人バルトロの二人が若かりし頃の恋の火遊びをした結果できてしまった子供だったことが発覚し(笑い)、フィガロとスザンナは無事に結婚できることになります。
一方、悲しみの癒えない伯爵夫人ロジーナは伯爵と結婚した当時の幸せな日々を回想し、今の身の上を嘆いて歌うのがこのアリアです。甘くてやるせない歌ですが、途中からアレグロになり気持ちの変化を表しています。


「フィガロの結婚」K.492 第3幕『どこへ行ったの、あの頃の喜びと嬉しさは』 アンダンテ ハ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
 伯爵夫人
  どこへ行ってしまったのかしら あの甘く楽しい思い出は
  どこへ行ってしまったのかしら 唇に交わされたあの誓い・・・
  涙と苦しみの中で 私にとってすべてが変わってしまったのに
  あの幸福な思い出はどうして 私の胸から消えてしまわなかったのかしら
  せめて私のひたむきな思いが あの人に伝わって
  薄情なあの人に伝わって その心を変える望みでも現れれば!

余談
『どこに行ったの、あの興奮と勝利の喜びは・・』 昨夜はふてくされて早く寝てしまいました。
朝起きてNHKニュースのスポーツコーナーを見ていたら、サッカーアジア杯のことには全く触れませんでした。国民の気持ちを汲んでいて好感がもてました。もうなかったことにしよう。
選手たちは一生懸命やっているのに、見勝手な人間ですみません<m(__)m>。

2015年1月18日日曜日

K.492「フィガロの結婚」 第3幕『もう訴訟に勝っただと』

様々な登場人物の複雑な思惑がからんだ、ドタバタで第2幕が終わって、舞台は伯爵家の居間です。
伯爵夫人との画策を進めるスザンナが現れ、伯爵に気のある素振りを見せます。
機嫌をなおした伯爵でしたが、スザンナが帰り際にフィガロにささやいた一言を耳にして、自分はだまされているのではないかと疑心暗鬼になって歌うアリアです。
傲慢身勝手な伯爵の本音をさらけ出した場面です。


「フィガロの結婚」K.492 第3幕 『もう訴訟に勝っただと』  マエストーソ 4分の4拍子 ハ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
アルマヴィーヴァ
  わしがため息をついている間に 召し使いが幸福を得ていいのか?
  わしが望んでかなわぬものを 召し使いが手に入れていいのか?
  わしに愛を目覚めさせておきながら わしを愛するでもなく
  あんな男と結ばれるのを 黙って眺めていてもいいのか?
  こんなことでいいのか?
  このまま安心させておくものか このまま満足させておくものか
  許せない 向こう見ずな奴!
  言語道断だ、主人を笑いものにするとは。
  わしの楽しみといったら 仕返しをすることだけ
  復讐こそが 残されて楽しみだ。

余談
いつの時代も、権力者というのは傲慢身勝手になりがちなのでしょうが、このアリアも伯爵のエゴ全開です。
今の時代にこんなこと言ったのが明るみに出たら、パワハラ、セクハラで一発失脚間違いなしです。

2015年1月15日木曜日

K.492「フィガロの結婚」 第2幕『恋とはどんなものかしら』

悲しんでいる伯爵夫人、そこへスザンナ、ケルビーノと相次いでやってきます。
伯爵夫人とスザンナは伯爵の行状を暴くために囮捜査をしようと画策します。
つまり、伯爵をスザンナの名前でおびき出し、女装させたケルビーノと会っているところを見つけて動かぬ証拠を突きつけようという計画です。
ここでケルビーノが伯爵夫人に歌うのがこの有名なアリエッタです。
このチャーミングなメロディーを美少年に歌われたら、ご婦人方の心は溶けてしまうことでしょう。


「フィガロの結婚」K.492 第2幕『恋とはどんなものかしら』 アンダンテ・コン・モート 4分の2拍子 変ロ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
ケルビーノ
  恋とはどんなものなのか ご存知のご婦人方・・・
  ご覧いただけましょうか 僕の心に恋があるかどうかを。
  僕が感じていることを申し上げようにも 初めてのことなのでわからないのです。
  でも胸には憧れに満ちたものを感じているのです
  それは時には喜びであり 時には苦しみです。
  凍るかと思えば燃え上がり またすぐに凍ってしまうのです。
  自分を幸せにするものを探しているのですが
  誰が持っているかも その正体もわかりません。
  ひとりでにため息が漏れ 悩み・・・胸はときめき。
  昼も夜も 静まる時がなかろうと 僕は好きなのです こうして悩んでいるのが。
  恋とはどんなものかしら 教えてくださいご婦人方
  僕の心に芽生えているかどうか 僕の心に恋があるかどうかを。

2015年1月12日月曜日

K.492「フィガロの結婚」 第2幕『愛の神様』

場面が変わって第2幕は伯爵夫人ロジーナの部屋です。
夫人はかつて自分をあんなに愛していてくれた伯爵が、今は心変わりして次から次に他の女を追いかけるのに夢中になっていることを嘆き悲しむカヴァンティーナです。微妙なニュアンスに富んだ気品ある音楽です。


「フィガロの結婚」K.492 第2幕『愛の神様』 ラルゲット 4分の2拍子 変ホ長調

<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
伯爵夫人ロジーナ
  愛の神様、慰めの手を差し伸べてください
  私のこの苦しみと嘆きに。
  大事なあの方を私にお返しください
  さもなければせめて私に死をおあたえください。

先日の「きらクラ!
まだ余韻に浸っています。素晴らしく充実した内容で、何度か聞き返してしまいました。 特に印象的なのが冒頭の3つの投稿です。
◇青森県階上町のねまき猫(?)さんの『音楽の中に湖面に映える輝きが、雪原の曲線的な影、草を分けて歩く足の感じなどを覚えて、もう一度素直な気持ちに戻って前を向いて行こうと思います・・・・』なんと素敵な表現でしょう。音楽のもつ力を感じさせてくださいます。
◇同郷の新潟県上越市・純米吟醸さんの『名曲と銘酒に支えてもらってよい一年にしたい・・・』お正月らしく、ふかわさん真理さんに大うけでした。
◇三重県四日市市・マロンさん。お友達の読み聞かせの会のお話よかったです。そこで終わるかと思ったら、なんと!!「BGM選手権スペシャルの開催を宣言します!」・・・ファンファーレ・・・・!!!
素晴らしい投稿をされたリスナーの方々、それを取り上げて遊び心一杯に演出されたコダマッチさん。きら☆クラ!ワールド炸裂でした。こんなに面白く幸せな気持ちにさせてくれる番組は宝物です。ふかわさん、真理さん、コダマッチさん、スタッフの皆さん、これからもよろしくお願いします!!!

2015年1月11日日曜日

K.492「フィガロの結婚」 第1幕『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』

伯爵がスザンナを口説きに部屋に来た際に、この恋多きケルビーノが、なんと伯爵夫人にまで想いを寄せているという話を偶然耳にしてしまします。
激怒した伯爵はケルビーノを遠隔地の連隊への配属を命じます。
そこへフィガロが村の娘たちを連れて登場。「私たちは殿様が廃止なさった、忌まわしい習慣(初夜権)から逃れられる初めてのカップルです。村の皆の衆と一緒にお礼を言わせてください」という。大勢の証人を頼んで初夜権廃止を再確認させようというフィガロの画策にしぶしぶ伯爵は同意します。
その後、配置換えを命じられて落胆するケルビーノを見つけたフィガロが、出征を励ますために歌うのがこの有名なアリアです。行進曲風の豪快な歌ですが、内容には皮肉が込められています。


「フィガロの結婚」K.492 第1幕『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』 アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調

<訳>  (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
 フィガロ 
  もう飛び回れぬぞ、愛の蝶よ
  昼夜かまわず飛び回り 美女の憩いを乱しには行けないぞ
  かわいいナルシスト、愛のアドニスよ。
  こんな羽根飾りももう無駄だ
  上品な軽い帽子をかぶるのも長い髪も、派手な服装も
  女のように紅をつけるのももうできないぞ。
  軍人になるのだ!
  口ひげ生やし、はいのう背負い 肩には銃を、腰には剣
  高い襟に鼻筋たてて 大きなかぶとに大きな頭巾
  名誉はたんまり銭は僅か!
  踊りの代わりに泥の中を進軍。
  野山を越え、谷を渡り 雪の中、暑さの中 ラッパの音にまじって
  砲声が雷のように耳をつんざくぞ。
  ケルビーノよ、いざ進め 輝かしい栄光と勝利に向かって。

今日の「きらクラ!
今日の放送は年に一度のBGM選手権スペシャルでした。冒頭の投稿で開会宣言とファンファーレが流れてぶっ飛び、大笑いしてしまいました(毎年してましたっけ?)。センス最高!!!!!!!
今回のお題は私は何も浮かばなくてパスしてしまいましたが、3つのお題それぞれにリスナーの感性が輝いていてとても楽しませていただきました。私の知らない曲が一杯出てきて、それぞれの音楽で詩の世界が予想もしない色彩を放って実に面白かったです。
プレイバックでは懐かしい記憶がよみがえりました。特に今回はBWV1000番様の貴重な資料があって倍楽しめました。これからもこの秀逸な企画を一生懸命応援していきます!!!!