2016年12月31日土曜日

K.259 ミサ曲 ハ長調 「オルガン・ソロ・ミサ」

ミサ曲は教会音楽の中で最も主要なジャンルですが、モーツァルトは15曲の完成したミサ曲を残しています。ほとんどがザルツブルク時代に書かれていて、そのうち5曲が1775年~76年に完成しています。いずれもハ長調で、大司教の要請で比較的コンパクトな楽器編成と短めの演奏時間になっています。
この K.259 は特に短く、全曲通して約15分しかありません。また、第5曲の「ベネディクトゥス」にオルガン独奏があるため「オルガン・ソロ・ミサ」とも呼ばれています。
ここで聴く第6曲「アニュス・デイ」はヴァイオリンの歌謡的旋律とバス声部の悪戯っぽいピッチカートにみられるように、庶民的でわかりやすく、曲全体もオーストリア的な喜びに満ちています。


ミサ曲 ハ長調 K.259/第6曲 アニュス・デイ Adagio

<写真>新潟市西区丘陵地より望む新潟平野の日の出

大晦日に寄せて
2016年も最後の日を迎えました。
今年は諸般の事情で2月から10月迄の長期にわたりブログの更新を休ませていただきました。お忙しい中、訪れていただきました方々にはお詫び申し上げます。来年はなるべくコンスタントに更新するように努力します。
実際このブログを更新するために、各種の資料を調べながらモーツァルトの楽曲について学ぶことは、私にとりまして無上の喜びであります。そして掲載する写真の撮影も楽しいアウトドア活動です。
ド素人の稚拙な内容のブログですが、またお時間のある時にお立ち寄りいただき、モーツァルトの音楽をともに楽しんでいただければ幸いです。
ありがとうございました。よいお年をお迎えください。

2016年12月29日木曜日

K.238 ピアノ協奏曲(第6番)変ロ長調 第1楽章

今月はモーツァルト20歳(1776年)の作品を主に聴いていますが、この年モーツァルトはピアノ協奏曲を3曲書いています。
彼のピアノ協奏曲は番号が付いているものが27曲ありますが、1~4番は他者の作品の編曲ですので、この作品は彼のオリジナル作品としては K.175 ニ長調(第5番)に次ぐ2曲目にあたります。
第7番と第8番が素人演奏家のために作られたのに対して、この第6番は難しい演奏技法を要求する部分があることから、彼自身(または姉ナンネル)のために作曲されたと思われています。しばしば再演され、後のマンハイム=パリ旅行でも取り上げられています。
この第1楽章のアレグロには、「アペルト aperto」という発想記号が付いていますが、これは「開いた」という意味から、「はっきりとした」とか、さらには「堂々とした」というような意味のようです。 協奏的ソナタ形式で、第1主題は明快で淀みがありません。カデンツァはモーツァルト自身が残しているもので演奏されています。


ピアノ協奏曲 変ロ長調 K.238/第1楽章 Allegro aperto 変ロ長調 4/4

余談・今年最後の「きらクラ!」
年末も押し迫って来ました。
先日放送された「きらクラ!」では、リスナーの今年の1曲が紹介されていました。この番組は、ふかわさん、真理さんの魅力に加え、リスナーの投稿もユーモアあり感動ありの非常に豊かな内容が多く、毎回興味が尽きません。特に印象に残った今年の1曲を記載させていただきます。

横浜市・くらべすさん
 福島公開収録から:「群青」… (合唱)会津若松市立第二中学校 特設合唱部
 会場でお聴きになって涙が止まらなかったとのことですが、私もラジオを通して涙ぐんでしまいました。様々な部活の生徒さんが集まり、純粋に音楽に取り組まれている姿は心から感動しました。取り組まれた生徒さん・先生方にとっても一生の宝物になると思います。素晴らしい合唱を聴かせていただき深く感謝します。

山梨県中央市・ご自愛は442ヘルツさん
 フランク作曲:「バイオリン・ソナタ イ長調 第4楽章」(チェロ編曲版)
 4ケ月に及ぶ長期入院をされていらいした間、この曲を毎夜消灯後の眠りに就く前に繰り返し繰り返し聴き続け、折れそうになる心を支え、明日への活力になったそうです。
 現在は退院され、通院生活を送られていらっしゃるそうですが、この曲を聴き続けておられるそうです。

福井市・低音トランペッターさん
 エルガー作曲:「変奏曲“謎”から 第9変奏“ニムロッド”」
 新婚8ケ月の今年の3月、ご主人が車にひかれ1ケ月の意識不明の後に持ち直したものの、記憶障害等の大きな後遺症を負われていらっしゃるそうで、心よりお見舞い申し上げます。
 入院中のご主人の病院へ向かう車中で、豊かに実った田園地帯の風景をバックにこの曲を聴き胸に迫るものがあり、「人のあたたかさ、自然の美しさを感じ、今年を前向きに乗り切る原動力になった」そうです。
 想像を絶するご苦労がおありかと存じますが、どうか明るい光が差す日が来ることをお祈り申し上げます。

 それぞれの方々のそれぞれの実体験は心を打つものばかりです。
 音楽をはじめ芸術は私たちを鼓舞する力を与えてくれます。どんなに辛い体験にも音楽は無条件に寄り添ってくれます。来年もまた音楽を愛し、音楽に愛される生活を続けられることを祈ります。

2016年12月24日土曜日

K.243 聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調 第1曲 キリエ

教会音楽の中に「リタニア」という日本語ですと「連禱」と訳されて、先唱者が神や聖母マリアにたいする呼び掛けを行ない、会衆がそれに「われらをあわれみたまえ」、あるいは「われらのために祈りたまえ」を繰り返して応答する祈りの形式の曲があります。
モーツァルトはザルツブルク時代に4曲のリタニアを書いていますが、このK.243は最後の作品で、1776年3月に作曲され、その月の31日にザルツブルクの大聖堂で初演されたようです。
4部の混声合唱、4部の独唱に管弦楽で演奏され、全体は9曲から構成されています。4曲のリタニアの中で一番充実してるといわれています。
その中から、第1曲の「キリエ」を聴いてみます。「主よ、憐れみたまえ」「キリストよ憐れみたまえ」云々というテクストでできています。ソロと合唱による3部形式になっています。


聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調 K243 第1曲 キリエ Allegro moderato

<写真>新潟市西蒲区夏井のハザ木(12月12日夕刻撮影)

糸魚川大火に心よりお見舞い申し上げます
暮れも押し迫って、糸魚川市で大火が発生しました。
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。この寒風の年の瀬に住処を失うことの悲しさを思うと心が痛みます。私たちも出来る範囲の募金等で応援させていやだきますので、どうか気を落とさず復興に向けて進んでください。

2016年12月20日火曜日

K.244 教会ソナタ ヘ長調(第10番)

普段あまり耳にすることのない「教会ソナタ」というジャンルの曲を、モーツァルトはザルツブルクに居た時期の1772年から1780年の間に集中的に書いています。
この教会ソナタはミサの書簡朗読と福音書朗読の間に演奏され、ザルツブルクの大聖堂のためにモーツァルトは17曲残しています。
いずれも1楽章のみの短い作品で、全て長調の明るい音楽となっています。私のような素人は教会音楽というと格式の高い重々しいものを想像しがちですが、聴いてみると非常に軽快で明るいのに驚きます。
このK.244は1776年の4月に作られていて、教会ソナタの第10番にあたります。ヴァイオリン2部、通奏低音、オルガンの編成になっています。この作品で初めてオルガンは独立した機能を果たしています。


教会ソナタ ヘ長調(第10番)K.244 Allegro 3/4

<写真>新潟市西区四ツ郷屋浜・寒風をついて舞い飛ぶカモメ(2016.12.10撮影)※曲のイメージと合ってなくてすみません。

余談・今週のきらクラ! ふーまん・真理さん「鏡の中の鏡」ブラボー!!!!
今週のきらクラ!は最後にサプライズ!!。
ふかわさんと真理さんの好きな曲(たまたま一致)でアルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」が流れました。
非常にゆったりとしたピアノのアルペジオが周囲を一瞬にして静謐な空気に満たし、その中を朗々とした豊かなチェロの旋律が寄り添い、心をわしづかみにします。本当に素晴らしい曲です。
「只今の演奏は、遠藤真理のチェロ、フーマンのピアノでした」……!!!!(驚き)最高のクリスマス・プレゼントをいただきました。この曲に対する深い想い入れを感じさせる名演だと思います。
大事にCDに移して愛聴盤とさせていただきます。本当にありがとうございました。

Link►►   アリヴォ・ペルト作曲「鏡の中の鏡」、チェロ:遠藤真理、ピアノ:フーマン(on YouTube)
                           アルヴォ・ペルト作曲 「鏡の中の鏡」(ヴァイオリン、ピアノ版)(当Blog過去掲載)

2016年12月15日木曜日

K.253 ディヴェルティメント ヘ長調 第1楽章

K.253 のディベルティメントは「食卓音楽」シリーズの第4作目にあたります。
同じ楽器編成(オーボエ、ホルン、ファゴット各2本)で3楽章で構成されています。
この第1楽章はアンダンテのテーマと5つの変奏からなっています。多楽章構成の作品で、冒頭の楽章が主題と変奏になっているのはとても珍しく、モーツァルトの作品では他にフルート四重奏曲K.298 とピアノ・ソナタK.331 のみです。
この楽章は全体で126小節というかなり長い音楽になっていますが、おそらく大司教からのリクエストに合わせたものと思われます。
6本の木管楽器が緻密なアンサンブルを奏で、温かい雰囲気に終始しています。


ディヴェルティメント ヘ長調 K.253/第1楽章 Andante

写真に寄せて
写真は新潟市西蒲区の国上山(くがみやま)の五合庵(ごごうあん)です。
越後の高僧・良寛が長い漂泊の旅を終え、文化元年(1804年)から十数年、住まいした庵です。
ここでの良寛は何事にもとらわれず、何者にも煩わされない生活だったと伝えられています。
筍が顔を覗かせれば居間を譲り、子供にせがまれれば、日が落ちるまで鞠付きに興じ、「この子らと 手鞠付きつつ遊ぶ春 日はくれずともよし」という歌も残しています。また、良寛独特の書法もここで生み出されています。
良寛はモーツァルトの生年の2年後の1758年に生まれ、1831年に亡くなっています。西洋でモーツァルトが活躍していた時代に、極東の日本ではこのような清貧の高僧が生きていたのです。

2016年12月13日火曜日

K.240 ディヴェルティメント 変ロ長調 第1楽章

モーツァルトはこの時期に同じ木管楽器編成による、小規模なディベルティメントを5曲書いています。
いづれもターフェルムジーク(食卓音楽)で、おそらくザルツブルク大司教のお食事タイムのBGMとして作曲されたものと思われます。
この K.240 はその中の第2曲で1776年の1月に作られています。
オーボエ、ホルン、ファゴット各2本という編成になっていて、演奏時間は全体で10分少々です。
この第1楽章は3/4拍子、ソナタ形式になっていますが、第1主題、第2主題、展開部に続いて再現部が通常と異なり、第2主題で始まり、第1主題で終わる形になっています。
ちょっとユーモラスでリラックスした曲想の中に短調のフレーズも折込ながら、豊かな色彩を放っています。


ディヴェルティメント 変ロ長調 K.240/第1楽章 3/4 

<写真>新潟市西蒲区 国上寺(越後最古の古刹)の境内にて(2016年12月12日撮影)

余談・今週のきらクラ!
ラスクに始まった今週のきらクラ!でした。
注目のBGM選手権はふかわさんではありませんが「不倫に始まり、不倫に終わる」年を象徴したようなお題でした。
4つ紹介され、ベストはラベル作曲の「序奏とアレグロ」でした。
私は圧倒的に1曲目のアルベニス作曲「アストゥリアス」(名古屋市・大根おろしさん)を指示します。許されない愛の切迫感・背徳感を見事に表しています。
 他の3つもとても美しくよかったのですが、「この詩にこんな美しい曲を付けてはダメ!!(不倫が正当化される…)」という家人の叫びに、私も同感!! 家庭平和のために、ここは一致団結!!!! ……楽しいBGM談義でした。
ところで私はBGM2年連続ボツ生活が継続中です。(;O;) この苦難を乗り越えて乗り越えて耐えて耐えて…修練を積み、いつかコダマッチ様のお目に留まる作品を……なんてネ (^^) _U~~

2016年12月9日金曜日

K.250(248b)セレナード ニ長調「ハフナー」 第4楽章

第4楽章はロンド形式で、独奏ヴァイオリンが奏でる快活で愛らしい主題が4つのエピソードをはさんで反復されます。
それぞれのエピソードは性格を異にし、快活、典雅、力強さを示す主題になっています。3楽章もそうですが、通常のセレナードのイメージとは異なった雰囲気をもっています。
また、この楽章は後にクライスラーによりヴァイオリンとピアノの楽曲として編曲されて有名になりました。


セレナーデ ニ長調 K.250(248b)/第4楽章 Allegro ト長調 2/4 ロンド

参考  ロンド:アレグロ(クライスラー編曲)※冒頭部分


余談
ハフナーセレナードの全8楽章の内、通常の祝典音楽とは趣の異なる2楽章をご紹介させていただきました。
この機会に久しぶりに全曲を聴いてみましたが、各楽章とも変化に富んだ豊かな楽想に満ちていて、1時間があっという間でした。こんな素晴らしい曲が生演奏される中で結婚式を挙げるなんて、ハフナー家は最高に贅沢ですね。

現代の写譜屋さん---地味に凄い!!!
先日たまたまNHKの「サラメシ」(中井貴一さんがナレーション)を見ていたら、写譜屋さんの仕事が紹介されていました。正直、驚くことばかり。私なんかは現代は作曲家もパソコンのデータで作って、各パート譜もコンピュータで自動的に出来るものだと思っていました。
が、なんと!! 放映された映像では、本番ギリギリに作曲者(編曲者)から大量のファックスが送られて来て、受けた会社が各担当者に分配し、担当者は大急ぎで手書きで各パート譜等を書き上げていました。
ウォーー!!! 愛すべきアナログの世界! モーツァルトの時代とあんまり変わってない!!!
こうやって表舞台にはでなくても、陰で支えてくださっている方々のご苦労のおかげで、私たちは楽しませていただいているんですね。ほんとうにどこかのドラマみたいですが、「地味に凄い!!」方々に感謝・感謝です。

2016年12月7日水曜日

K.250(248b)セレナード ニ長調「ハフナー」 第3楽章

先月はマンハイム・パリ旅行での作品をいくつか取り上げましたが、今月はその前年の1776年、モーツァルト20歳頃の作品を聴いてみます。
この年は旅行に明け暮れていたモーツァルトには珍しくザルツブルクに落ち着いて、大司教に仕えながら、セレナード、ディベルティメントなどの多くの社交音楽を生み出しました。
このセレナードは当時ザルツブルクの裕福な商人で市長を勤めていたジークムント・ハフナーの娘の結婚式のために書かれました。全8楽章、編成も大がかりで交響曲・協奏曲のような趣向を感じさせます。このセレナードはのちに交響曲35番「ハフナー」K.385 に再編されています。
ここで聴く第3楽章はメヌエットで祝典音楽としては珍しくト短調(トリオはト長調)で書かれています。
単なる娯楽音楽で終わらせないモーツァルトの才気を感じさせます。ヴァイオリンのソロも活躍します。


セレナーデ ニ長調 K.250(248b)/第3楽章 Menuetto ト短調 3/4

余談・今週のきらクラ!
毎年12月5日は特別な気持ちになります。今年もいろいろありましたが、無事にモーツァルトの命日を迎えることができました。ありがたいことです。

今週の「きらクラ!」は舟歌祭りの余韻に浸る内容でした。やはり多くの方が感銘を受けいていたようで、本当によかったです。そしてふかわさんが心残りだったチャイコフスキーの舟歌も本人曰く「私のわがままで・・・」放送されて、すっきりしたことだと思います。ふかわさんのわがままは共感する方も多く、これからも遠慮なくわがままをしてほしいものです。
放送のやりとりを聞いていると、「きらクラ!」スタッフの皆さんの温かい人間関係が垣間見えて、聞いているだけでほっこりします。春の番組改編でも「きらクラ!」は絶対継続してほしいです。

2016年12月5日月曜日

K.339 ヴェスペレ 第5曲 Laudate Dominum 【御命日に寄せて】

モーツァルトが天に召されてから225年の歳月が流れました。
それから今日に至るまで、いつもどこかでモーツァルトの音楽は流れ続けています。
時代を超えて、私たちがその響きに身をゆだねられる幸せに心から感謝します。

この日に聴くのは、ヴェスペレ K.339 第5曲 ラウダーテ・ドミヌスです。
「諸々の民よ、主を讃えまつれ。我らにたまわるその慈しみは大きいからである」云々といった歌詞の内容で、ソプラノ・ソロで始まり、抒情的なゆったりとした天上的な美しさを湛えた旋律を奏でています。

ヴェスペレ《証聖者の盛儀晩課》K.339 第5曲 Laudate Dominum 主をほめたたえよ Andante ヘ長調

先人の言葉

  「――死とは・・・・・、モーツァルトを聴けなくなることです。」
          アルバート・アインシュタイン(物理学者・相対性理論の創始者)
※モーツァルト研究家のアルフレート・アインシュタインとはいとこ関係
ある人の「死とはどんなものだとお考えですか?」という問いに対する博士の答え。
(吉田秀和・高橋英郎編「モーツァルト頌」白水社刊 より引用)


2016年12月3日土曜日

K.339 ヴェスペレ《証聖者の盛儀晩課》第4曲

2016年も最後の月を迎えました。時節柄、宗教曲を聴いてみます。
ヴェスペレとは、カトリック教会の日没時に行われる祈りので、ミサに次いで大事な儀式だったようです。
モーツァルトは生涯で2曲のヴェスペレを書いていますが、そのうちの1曲です。
全体は6曲からなり、テクストは旧約聖書から5つの詩篇と新約聖書ルカ伝よりとられて、各々の曲の最後は「父と子と聖霊に栄えあれ」という一句で結ばれています。
この第4曲はラウダーテ・プリエ ニ短調。「主のしもべたちよ、主の御名を誉めたたえよ。今よりとこしえにいたるまで。主の御名は誉むべきかな」といった内容になっているそうです。対位法的な書き方がされています。


ヴェスペレ《証聖者の盛儀晩課》K.339 第4曲 Laudate pueri ほめたたえよ ニ短調

余談
私のように普通に日本的な生活をしていると、他国の宗教曲はなかなか敷居の高い音楽です。
しかし、宗教環境の違いを超えて音楽として胸に響くものを感ぜずにはいられません。
学生時代、友人から誘いをいただき、教会で混声合唱曲を聴いた時の清廉な美しさは今も忘れることはできません。

2016年11月30日水曜日

K.310(300d) ピアノ・ソナタ イ短調 第1楽章

パリ滞在中の1778年7月3日、モーツァルトの母は他界しました。
その悲しみ、心の不安をこの時期に書かれたヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304(300c)とこのピアノ・ソナタでモーツァルトは表現したともいわれています。
モーツァルトの母を失った悲しみは計り知れないと思われますが、ザルツブルクにいた父宛ての母の死を知らせる手紙では、父の気持に配慮した間接的な表現に留まっています。
このソナタの冒頭は烈しく暗い緊張をたたえた主題で始まり、様々な転調や強弱の変化を伴って再現されていき、一本の強い芯で貫かれたような悲壮感が胸を打ちます。
当時、他に類見ない革新的な表現で、次世代の作曲家に大きな影響をもたらした歴史的な曲だといわれています。


ピアノ・ソナタ イ短調 K.310(300d)/第1楽章 Allegro maestoso イ短調 4/4 ソナタ形式

Link▶▶ 第2楽章 Andante cantabile con espressione

余談
今月はモーツァルトのマンハイム=パリ旅行(1777年~1778年)の期間の曲を聴いてきました。
この旅でモーツァルトはザルツブルク(田舎町?)を離れ、大きな都市で就職口を得ようと試みましたが失敗に終わり、この後故郷へみじめな帰還をします。
モーツァルトほどの傑出した才能があったからこそ、現実社会でその才能に見合った職を見つけることは非常に困難であったと思われます。
もし、首尾よく就職できたとしても、雇い主に気を遣う創作活動には、いつか我慢できなくなる日が来たことでしょう。
結果的に彼は貴族に仕える道を断念し、ウィーンで自立した作曲家生活を始めますが、それはモーツァルトにとって必然的な道だったといえるでしょう。

2016年11月28日月曜日

K.306 (300l) ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 第3楽章

今日は6曲セットの「選帝侯妃ソナタ」の最後の6曲目を聴いてみます。
作曲されたのはパリ滞在中の1778年夏頃と思われます。
3楽章形式でこの最後の第3楽章は、フランス風に響く2/4拍子のアレグレットとイタリア風な6/8拍子のアレグロが絶え間なく交替され、即興的要素も含まれ、活発なコンチェルトでも聴くような趣向が凝らされています。
この作品を作曲していた頃、ともに旅をしていたモーツァルトの母は病状を悪化させていましたが、この作品を聴く限りそのような陰りは感じさせません。


ヴァイオリン・ソナタ ニ長調/第3楽章 Allegretto-Allegro ニ長調 2/4 ロンド形式

今週の「きらクラ!」 ブラボー!!! 「舟唄まつり」!!!
私の非常に狭い音楽の守備範囲の中で「舟唄」といわれても、パッと浮かぶものが殆んどありませんでした。
ですので、当初この企画を耳にした時「舟唄でお祭り……???」という疑問符状態で、昨日はアウェイ感を抱きながら放送を聞きました。
ところが、リスナーの皆さんからの多くのリクエストが紹介され、まだ知らなかった豊かな音楽の分野に触れさせていただきました。
どのメロディーも独特のゆったりと大海原を航海するような充足感に満ち、至福の2時間を過ごすことができました。
船頭:コダマッチ様はじめスタッフの皆様、本当に素晴らしい企画をありがとうございました。
このような斬新な企画を見事に達成できるのは、ふかわさん、真理さん、コダマッチさん、スタッフの皆様、そして素晴らしいリスナーの皆さんの音楽愛に支えられた結束の賜物だと感じました。

2016年11月26日土曜日

K.297(300a)交響曲 第31番 ニ長調 「パリ」 第3楽章

このパリ旅行でモーツァルトが作曲した多くの作品の中で、最も有名なのは、フルートとハープのための協奏曲 K.299(297c)と、今回聴く交響曲「パリ」でしょう。
この交響曲はル・グロの依頼で1778年6月~7月に作曲しました。ル・グロは例の協奏交響曲のスコアを見当たらなくし、上演しなかった当事者で、モーツァルトにとってあまり気の進まない注文であったと思われますが、断れる立場でもなかったようです。
当時のパリでは、オペラやオーケストラの音楽が非常に愛好されていて、そのパリっ子の好みを巧みに反映させ、依頼主を大満足させる作品に仕上がっています。
第1楽章は以前(2013年6月)取り上げました。この第3楽章は弱く始まって、急に強いトォッティになり、聴衆の好みを刺激してやんやの喝采を浴びたようです。疾走するように曲は展開し、一気呵成にコーダへ入っていきます。


交響曲 ニ長調 「パリ」K.297(300a)/第3楽章 Allegro ニ長調 2/2 ソナタ形式

Link▶  交響曲 ニ長調 「パリ」 第1楽章
    フルートとハープのための協奏曲 第1楽章 第2楽章 第3楽章

<写真>福島潟(新潟市北区)から望む五頭山と冠雪した飯豊連峰大日岳方面(11月26日撮影)

余談
新潟の11月は例年、どんよりした雲に覆われ、冷たいみぞれや雪に耐える日々が多いのですが、今年は珍しく好天が続きます。
今日も晴天の中、雪化粧を始めた峰々が青空を背景に光り輝いていました。冬は間近に迫っています。

2016年11月22日火曜日

K.264(315d)「リゾンは眠った」による9つの変奏曲 ハ長調

モーツァルトは生涯にわたって14曲(完成したもの)のピアノのための変奏曲を書いています。
そのうち8曲は旅行中に生み出されています。折々に訪れた土地の流行の曲を主題としていち早く取り入れ、変奏曲に仕上げ、自身の高度な技巧と作曲の才能を当地の人々に披露するのが目的だったと思われます。
そしてこのパリ旅行の間にも4曲も書いていることは、パリで職を得ようとする懸命な気持ちが伝わってきます。
このK.264(315d)の主題は、当時パリで名声の絶頂にいたニコラ・ドゥゼード作曲の喜歌劇《ジュリー》のなかのアリエット〈リゾンは眠った〉によります。
全32小節におよぶ長大な主題ですが、モーツァルトは斬新で意欲的な変奏を展開しています。ここではフォルテ・ピアノによる演奏を聴いてみます。


ドゥゼードの「リゾンは眠った」による9つの変奏曲 ハ長調 K.264 (315d)

今週のきらクラ!
今回も楽しい放送でした。まず、ハーモニカによるウィリアムテル序曲にはビックリ!!!
BGM選手権はお題からして、弦楽四重奏とか三重奏、チェロ・ソナタなんかが選ばれるかと思いきや、意外な曲が採用され、とても刺激を受けました。 ベストのフランクのヴァイオリン・ソナタもよかったですが、私的にはちょっとキーが高すぎかな……。次回の『舟歌』、一体どんな曲が付くのでしょうか?
また、ふかわさんが少し鼻声だったのが気になります。お忙しいと存じますが、時節柄ご自愛ください。

2016年11月19日土曜日

K.297b(Anh.9) (管楽器のための)協奏交響曲 変ホ長調/第1楽章

1778年3月23日、モーツァルトは母と二人で12年ぶりにパリの地を踏みました。
到着後まもなく、ちょうどパリにいあわせた4人の管楽器の名手のために1曲の協奏交響曲を書きました。
この自筆譜はコンセール・スピリチュエルで演奏するため、総監督のジャン・ル・グロに売り渡されましたが、この自筆譜はなぜか紛失し、せっかくの作品は演奏されずに終わったそうです。
このことについて、モーツァルトは父宛に憤慨して陰謀を疑う書簡を送っています。当時パリで活躍していた作曲家の誰かが、モーツァルトに名声を奪われることを恐れ、陰謀を企てた可能性は十分ありえそうです。

現在演奏されている楽譜は、モーツァルト研究家オットー・ヤーン(1813--89)の遺品から見つかった写譜が用いられています。自筆譜がないため現在でも真作か否かの議論が続いているようですが、私(音楽のド素人)はモーツァルトの作品として全く違和感は感じません。
全3楽章で、独奏楽器はオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットで、パリ風の典雅で豊かな響きに満ちています。


協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(Anh.9)/第1楽章 Allegro

Link▶ 第3楽章 Andantino 変ホ長調

<写真> 新潟市西区 佐潟の白鳥 (2016年11月18日撮影)

余談
12年前の1766年にモーツァルトがパリを訪れたのはわずか10歳の時です。神童ともてはやされ、貴族たちの前で驚愕の演奏を披露していた頃の記憶はすでに忘れられ、モーツァルトの就職活動はこのパリの地でも困難を極めました。
選帝侯へ就職を懇願しても返答はいつも『空席がない』の一言だったようです。
この協奏交響曲への妨害は、モーツァルトの才能を見抜いた作曲家が恐れをなして企てたとも考えられます。
既得権益者が新来勢力に対して身を守ろうとすることは、いつの時代も同じようです。

2016年11月17日木曜日

K.305(293d) ヴァイオリン・ソナタ イ長調 第2楽章

モーツァルトはマンハイム=パリ旅行の間に7曲のヴァイオリン・ソナタを集中的に作曲しています。
それ以前は、7歳~12歳の間に作曲した18曲程の習作的な作品があるのみですから、本格的にヴァイオリン・ソナタに取り組んだ最初の時期といっていいでしょう。
その中で、K.301~K.306の6曲は、当時のバイエルン選帝侯妃マリーア・アンナ・ゾフィーに献呈されたことから、「選帝侯妃ソナタ」と呼ばれ、パリで出版されました。
いずれも非常に充実した聴きごたえのある作品になっています。
このK.305はイ長調の明るくギャラントな雰囲気をもっています。2楽章形式で、この第2楽章はめずらしく主題と6つの変奏曲から構成されています。


ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K.305(293d)/第2楽章 Andante grazioso 主題と6変奏

余談
以前にも書きましたが、モーツァルトの時代はヴァイオリン・ソナタは主役がピアノでヴァイオリンは伴奏に回る形式になっていて、正確には「ヴァイオリン伴奏つきのピアノ・ソナタ」となっていました。
しかしモーツァルトはピアノとヴァイオリンが対等に渡り合う近代的な作風への先駆的作品を残していきました。
このブログでも今まで多くのヴァイオリン・ソナタを取り上げてきましたが、選帝侯妃ソナタの他の曲のリンクを下記に示します。お時間のある方はご覧になってください。
 Link ▶▶ K.301 ト長調、 K.302 変ホ長調、 K.303 ハ長調、 K.304 ホ短調

2016年11月14日月曜日

K.311(284c) ピアノ・ソナタ ニ長調 第1楽章

幼い頃から数多くの旅を経験したモーツァルトは、各地で様々な人や音楽との出合いの中でその才能を開花させていきました。
このマンハイム・パリ旅行でも、アウクスブルクのクラヴィア職人であったシュタインとの出会いはその創作意欲を刺激したようで、3曲のソナタ(ハ長調 K.309、ニ長調 K.311、イ短調 K.310)を書いています。
父宛の手紙にモーツァルトは次のように書いています・・・・
『シュタインの仕事をまだ見ていないうちは、ぼくはシュペートのピアノがいちばん好きでした。でも今ではシュタインの方がまさっていると言わざるをえません。 この方がレーゲンスブルク製のものよりも、いっそう共鳴の抑えが利くからです。強く叩くと、指をのせておこうと離そうと、鳴らした瞬間に、その音は消えてしまいます。思いどおりに鍵盤を打っても、音はいつも一様です。カタカタするとか、強くなるとか弱くなるとかということはなく、まして音が出ないなどということはありません。一言で言えば、すべてが一様なのです。』(岩波書店 「モーツァルトの手紙(上)」P70より)

シュタインのフォルテピアノによって新しい表現方法を発見したモーツァルトは、すぐにこれらの作品の中で具現化したといわれています。
この第1楽章はモーツァルトらしい明るく快活な光に満ちています。


ピアノ・ソナタ ニ長調 K.311(284c)/第1楽章 Allegro con spirito ニ長調 4/4 ソナタ形式

<写真>弥彦公園の池に映るもみじ谷の紅葉 (この写真はNHK新潟放送局「わたしの旬」〈11月10日放送〉で採用していただきました)

 今日の『きらクラ!』
今回の「勝手に名付け親」コーナーは興味津津でした。あの名曲に一体リスナーはどんな名前を付けるんだろう……と、全く枯渇した自分の発想を諦めて、ただただ拝聴させて頂きました。
さすがに素晴らしい投稿の数々で、ベストに選ばれたつくば市のたれもんたさんの「黎明――静かなる決意」には心から納得しました。既存の名前を凌駕するものだと感心しました。ところが今回、さらに付録がつきました!
この新世界の第2楽章全体を4部に分けた「交響的絵画 フランダースの犬」(小平市 ゆうせいさん)が彗星のように登場しました。大まかな内容が音楽に合わせて紹介されましたが、すごいピッタリ感! 誰でも知ってる名曲と児童文学の見事なコラボでした。フルバージョン聞きたい!!!!

そこで思ったのですが、いつもこのコーナーを聞くと、リスナーの投稿の中には非常に発想豊かなストーリーになっているものも多いので、特別版で「勝手にストーリー」として、オリジナル、アレンジ等を問わず、音楽に丸ごと合わせたお話を募集するのも面白いのではないかと思いました。
「BGM選手権」の完全逆バージョンになり、スタッフの方々の負担も多くなるかと思いますが、とても面白いと思います。コダマッチ様ご検討ください。

2016年11月12日土曜日

K.315(285e) フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調

モーツァルトがマンハイムに滞在していた頃(1777年10月-1778年3月)の作品をもう少し聴いてみます。
この地でオランダ人の医師で裕福だったフルート愛好家のドゥジャンから作曲依頼を受けて、モーツァルトはこの作品の他にフルート四重奏曲、フルート協奏曲などフルートのための作品を数曲残しました。
この作品の自筆譜には日付が記されていないため、時期は特定できませんが、K.313のフルート協奏曲の第2楽章が一般愛好家には難しい面があったため、平易な形に書き直したものだとも考えられています。

弦のピッツィカートに管の響きが加わるお穏やかな導入部から、すぐに独奏フルートがのびやかに主題を歌います。
中間部で愁いを帯びた短調に転じ、再現部を経てカデンツァのあと第一主題に戻り静かに曲を閉じます。


フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調 K.315 (285e) 2/4 ソナタ形式

余談
年をとると朝早く目が覚めます。気が向くと時々NHKの「ラジオ深夜便」を聞きます。
今朝(11日午前4時)にたまたま聞いた放送がとても心に残りました。
リラ・プレカリア(祈りの立て琴)プログラム・ディレクター キャロル・サックさんのお話でした。
病床にある方や心身に痛みを持つ方に、ハープと歌による祈りをお届けする活動をボランティアでなさっておられる方でした。
その目的は、訪問を利用してくださる方一人ひとりに「あなたはそのままで価値のある大切な存在です」と伝えることにあるといいます。ベッドサイドで利用者の呼吸に合わせながら音楽を奏でることで、共感と敬意をもって利用者と共に在ること、そしてそれが利用者の癒やしとなることを目指しているそうです。
実演も聴かせていただきましたが、深い安らぎに包まれる幸福感に満たされました。何か音楽のもつ力の本質に触れた思いでした。

2016年11月9日水曜日

K.308 (295b) アリエット「淋しく暗い森で」

K307(284d)と対をなす作品です。
前作とは異なって、歌詞の内容によってテンポや調性が激しく変化する作品です。
歌詞はアントワーヌ・ウダール・ドゥ・ラ・モット(1672-1731)によるものです。
この対の作品は、モーツァルトの歌曲の中で初めて完全なピアノ伴奏パートを伴っていて、フランス語の歌唱とあいまって、豊かで繊細な表現に満たされています。

<歌詞大意>
さびしく暗い森で先日私が散歩をしていると、木蔭で愛の神(キューピッド)たる子供が1人眠っていた。
近づくと私はその美しさに引き込まれたが、それは、忘れようと誓った不実な女の目鼻だちそのものだったのだ。
彼は赤い唇をし、彼女のようなきれいた顔をしていた。
私がため息をもらすと、わけもないのに彼は目覚め、すぐに翼を広げると、復讐の弓をつかんで飛び立ちながら、私の胸を傷つけた。
「お行き、もう一度身をこがしにシルビィアのもとへ行くがよい。おまえは一生彼女を愛するのだよ。ぼくを目覚めさせてしまったから」。 (音楽の友社「作曲家別名曲解説リブラリー モーツァルトⅡ」より)


アリエット「淋しく暗い森で」K.308 (295b) Adagio 2/2 変イ長調

2016年11月7日月曜日

K.307 (284d) アリエット「鳥たちよ、毎年」

大変長らくご無沙汰しておりました。
久しぶりにモーツァルトの歌曲を聴いてみます。

この曲は1777年10月から翌年の3月までに書かれたと思われています。
この時期、モーツァルトは母と二人で就職活動のためにパリを目指していましたが、途中マンハイムで5ヶ月半もの長居をして、ザルツブルクの父をいらいらさせていました。
その際書かれた2曲の歌曲の第1曲であり、当地のフルート奏者ヴェントリングの娘アウグステ(当時25か26歳)のために、彼女の求めに応じてフェラン(Antoine Ferrand, 1678-1719)によるフランス語の詩に曲ををつけたものと思われます。
2分に満たない短い曲で、フランス趣味豊かななめらかな旋律の曲です。

<歌詞大意>
鳥たちよ、おまえたちは毎年、木の葉の落ちる冬になるとここを去っていってしまう。
冬を避けるためではなく、花の季節にしか恋ができない運命だからだ。
そして一年中恋ができるように、花の季節が過ぎるとおまえたちはそれを別の土地へ探し求めるのだ。
   (音楽の友社「作曲家別名曲解説リブラリー モーツァルトⅡ」より)


アリエット「鳥たちよ、毎年」K.307 Alegretto 2/4 ハ長調

<写真>弥彦神社 もみじ谷(11月7日撮影)

余談
長い長い間、更新しませんで、大変申し訳ありませんでした。
またぼちぼち始めますので、お時間のある方は是非お立ち寄りください。
当地は紅葉の盛りを迎えています。今日は予想外の晴天に恵まれて、弥彦神社に行ってきました。菊祭りで随分賑わっていましたが、カメラを抱えた多くの人々はもみじ谷を目指していました。
太陽の光を一杯に浴びた一面の紅葉が実に見事で、自然の営みの美しさに言葉を失いました。

2016年1月28日木曜日

K.482 ピアノ協奏曲(第22番)変ホ長調 第2楽章

第2楽章はアンダンテ、ハ短調。
ロマン派を予告するようなメランコリックで魅力的な旋律が弱音器を付けた弦で始まります。その後ピアノの第1変奏と続き、随所でクラリネット、ファゴットあるいはフルート等の組み合わせで美しい木管のアンサンブルが室内楽のように豊かな旋律を奏でます。
弦楽器、木管楽器、そしてピアノの音色が見事に融和し、奥深い陰影を湛えた楽章となっています。
この協奏曲が初演された時、特にこの楽章は評判がよくアンコールされたそうです。


ピアノ協奏曲(第22番)変ホ長調 K.482/第2楽章 Andante ハ短調

≪参考≫ 第3楽章 アレグロ ―→ こちらから

ブログの更新をしばらくお休みします
ザルツブルク、ウィーンを中心にモーツァルトの足跡を辿る気ままな旅に出てきます(個人的妄想による大ウソ!)。
そのため申し訳ありませんが、ブログの更新をしばらくお休みさせていただきます。
春頃にはリフレッシュして元気に再開出来ることを祈っています。それまで皆様もどうかお元気でお過ごしください。

2016年1月27日水曜日

K.482 ピアノ協奏曲(第22番)変ホ長調 第1楽章

Happy 260th Birthday!!  W.A.Mozart!!!
1785年(モーツァルト29歳)の年に3曲のピアノ協奏曲が書かれています。
第20番 ニ短調、第21番 ハ長調、そしてこの22番 変ホ長調です。いづれも名曲の誉れ高い傑作揃いで、翌年書かれた3曲と合わせてピアノ協奏曲創作の最充実期といっていいでしょう。
このK.482はピアノ協奏曲で初めてクラリネットが用いられた作品としても知られています。全体的に規模も大きく、堂々たる交響的構築をもち、後期の充実した筆致を示しています。
この第1楽章はアレグロ、4分の4拍子、ソナタ形式で書かれています。
冒頭のユニゾンの朗々とした響きに続き、木管の音色が美しく歌います。おもしろいことにこの楽章ではピアノが主題を奏でることはなく、オーケストラが主題をうけもち、ピアノは自由に小さなカデンツァのように輝きを放っています。


ピアノ協奏曲(第22番)変ホ長調 K.482/第1楽章 Allegro
生誕260年おめでとう!!!
本日はモーツァルトのお誕生日です。また、きりのいい生誕260年ということで、ミニイベントもあるようです。
260年経っても愛され続けるモーツァルトの音楽は正に天からの人類への贈り物です。ありがとうございます。
<写真>朝霧高原から望む富士山(2016年1月初旬撮影)
      撮影した時期は冠雪が少なく、夏の富士のようでしたが、先日の寒波で今は見事な雪化粧をしています。

2016年1月25日月曜日

K.481 ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 第3楽章

第3楽章は主題と6つの変奏からなっています。主題はアレグレット、4分の2拍子、変ホ長調。
第1変奏はヴァイオリン、第2変奏はピアノ、第3はピアノの動き回る左手の変奏、第4はヴァイオリンが主役。第5はピアノの流れるような旋律。
最後の第6変奏は8分の6拍子のアレグロで華やかに全曲を閉じます。 短調の変奏がないのはめずらしく、全体にとても明るい印象を残しています。


ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481/第3楽章 Allegretto
今日の「きらクラ!」
今回のドンはモーツァルトの「魔笛」から夜の女王のアリア。ネアピンでこれまたモーツァルトのピアノ協奏曲第20番がかかって、モーツァルト・ファンにとってはたまらない冒頭部分で十分楽しませていただきました。
ピアノ協奏曲の第20番は、現在このBlogに載せている1785年の作品で、2月に完成しています。本当に名曲中の名曲で、冒頭の弦楽のシンコペーションを耳にすると心が震えます。
また今回のBGM選手権のお題は結構難しく、みなさんがどのような音楽を当てるのか興味深く聴かせていただきました。なかなかよかったと思いますが、3作品ともカラーが似ていて、贅沢にもやや物足りなさを感じてしまいました。もっと明るくて意外な曲とのコラボがあると面白かったかな?などと分不相応で身勝手なことを思ってしまいました。ご苦労されているコダマッチさんはじめスタッフの皆様、ごめんなさい m(__)m。

2016年1月23日土曜日

K.481 ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 第2楽章

第2楽章はアダージョ、変イ長調で、自由な形式で書かれています。
2つのエピソードと主要主題の変奏された反復を伴うロンドで、半音階的な転調に富んでいる和声が非常に魅力的で、後にシューベルトなどに影響を与えたともいわれています。
アインシュタインはこの楽章を
『魂の深淵に導く異名同音的転換において頂上を極める迷宮的な転調を伴うアダージョほど、モーツァルトがベートーヴェンに近づいている場合はない。』と述べています。
モーツァルト以後のロマン派への先駆けとなっている音楽といえるかもしれません。


ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481/第2楽章 Adagio 変イ長調
余談
全国的な寒波の予報が出ています。どうか皆様、寒さ対策を万全にして乗り切ってください。
ところで、昨夜から今日にかけてのU23サッカー・オリンピック予選は本当にしびれる試合でした。90分を見ていたら勝てる気がしませんでしたが、延長戦での爆発的得点シーンには感動を頂きました。もう1勝に向けて、頑張れNIPPON!!!
<写真に寄せて>
この富士山本宮浅間大社の湧玉池の水は、富士山の伏流水に満たされた、素晴らしい透明度の見たことのないような美しい池でした。ここに住むカモたちは幸せそうでした。

2016年1月20日水曜日

K.481 ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 第1楽章

モーツァルトは生涯に亘って40曲以上のヴァイオリン・ソナタ(ピアノとヴァイオリンのためのソナタ)を書いています。
この作品はその中の最後から3番目にあたり、非常に充実した構成になっていて、アインシュタインが「三大ソナタ」( K.454、K.481、K.526)と称した中の一つです。
この年(1785年)の後半には「フィガロの結婚」の作曲に取り掛かっていて、多忙の中で作曲されましたが、その目的ははっきりしていません。1786年にホフマイスターから出版されていることから、生活費を捻出するためとも考えられています。事実このころモーツァルトがホフマイスターに借金を無心する手紙が残されています。
この第1楽章はモルト・アレグロ、ソナタ形式で快活・明朗な楽章です。第1主題はピアノが担い、第2主題はピアノとヴァイオリンが対等にかけあいます。展開部に入るとジュピター交響曲の最終楽章の有名なモティーフが現れるのも興味深いところです。


ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481/第1楽章 Molto allegro
<写真>富士山本宮浅間大社 湧玉池にくつろぐカモたち(2016年1月上旬撮影)

2016年1月15日金曜日

K.411(484a) アダージョ 変ロ長調 

引き続き1785年のモーツァルトの作品を聴いてみます。
この年にはフリーメイソンに関係したいくつかの作品を書いていますが、これもその一つです。
クラリネット2本、バセットホルン3本の管楽器による小品です。
フリーメイソンの何らかの儀式、おそらく会員の入場のための序奏として演奏されたものと考えられ、ゆったりした旋律と厳かな雰囲気を湛えています。


アダージョ 変ロ長調 K.411(484a)

写真に寄せて
この冬、初めての積雪となりました。朝は氷点下の冷え込みでした。
遅ればせながら本格的な冬の到来のようです。写真は薄らと雪化粧した上堰潟公園です。
いつもの冬が来て安心しました。でも雪も積りすぎないようにと勝手なお願いをしています。
太平洋側にお住まいの方は想像しにくいかと思いますが、当地は冬の間(概ね11月から2月)はほぼ毎日写真のような重たい曇天となります。だからこそ春の喜びはひとしおになります。

2016年1月13日水曜日

K.478 ピアノ四重奏曲 ト短調 第3楽章

第3楽章は主調のト短調には戻らないで、ト長調をとっているのがこの曲の特徴的なところです。
そのため通常のモーツァルトの短調の作品で感じるような痛切感がありませんが、主楽章でみせた烈しさを内に含みながら、美しい透明感に溢れた楽想で、いきいきとしたテーマが見事な構成力で進行します。
テーマのひとつに40番ト短調交響曲の冒頭のモティーフが何度か現れます。この頃からモーツァルトの中ではあのト短調交響曲の構想が出来上がっていたのかも知れません。


ピアノ四重奏曲 ト短調 K.478/ 第3楽章 Allegro moderato ト長調
余談
このピアノ四重奏曲は、ウィーンの出版社ホフマイスターからの依頼で書かれました。
この第1曲が出来上がったら出版社が「この楽譜を見たら、みんなが難しすぎるので受けないだろう」と嘆いたため、モーツァルトは嫌気がさしたのか自ら連作の契約を破棄して、次作の第2番をアルタリア社から出版したと伝えられています。
もし、ホフマイスターが作品そのものの素晴らしさを正当に評価し、モーツァルトに賛辞を送っていたら、もっと多くのピアノ四重奏曲が残っていたと思われます。

2016年1月10日日曜日

K.478 ピアノ四重奏曲 ト短調 第2楽章

第2楽章はアンダンテ、変ロ長調、8分の3拍子で、展開部を省いたソナタ形式になっています。
第1楽章とは対照的に、控えめな表現のゆったりとした心安らぐ曲想になっています。


ピアノ四重奏曲 ト短調 K.478/第2楽章 Andante 変ロ長調

今日の「きらクラ!」
今日は「BGM選手権スペシャル」でした。
リスナーの皆さんの素晴らしい投稿と選曲に大きな感動をいただきました。
多くの投稿の中からセレクトして構成されたコダマッチさんには脱帽です。
どの作品も斬新な着眼点と幅広い選曲で秀逸でしたが、特に心に残ったものは・・・・・
「ノーザンライツ」では
・バーバー:弦楽のためのアダージョ(合唱版)
       合唱の曲があてられることはめずらしいと思いますが、静謐な雰囲気が素晴らしい。
       崇高な気持ちにさせられる感動的な作品でした。
・ヴィヴァルディ:マンドリン協奏曲
       この詩に、マンドリンの音をあてるという発想が非凡だと思います。
       実際聴いてみると、目をみはる化学反応! 暖かい気持ちになりました。
「うられていったくつ」では
・ルロイ・アンダーソン:「忘れ去られた夢」
       とても美しい曲(私は初めて聴きました)で、少年の純粋な気持ちが伝わってきました。
       涙腺タイムになるくらいの感動的な仕上がりでした。
今回は全部で12作品が放送されましたが、どれも甲乙付けがたい充実したもので、全部にベストを贈りたい内容でした。また、ひとつひとつの作品に対するふかわさんの感性豊かなコメントには大いに共感しました。
「同曲異文」
コダマッチさんの推奨で、過去の作品から同じ音楽で違う詩(文)をあてた作品が流されました。
この試みを聴いてみて、ふかわさんもコメントされていましたが、改めて音楽の力って本当に凄いと思いました。人の心にダイレクトに届く人類共通の芸術文化だと感じました。

2016年1月9日土曜日

K.478 ピアノ四重奏曲 ト短調 第1楽章

モーツァルトはピアノ四重奏曲を2曲書いていますが、このK.478 ト短調は1785年の10月に完成しました。
ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという組み合わせは当時は一般的ではなかったようですが、この後の時代ではベートーヴェンをはじめ多くの作曲家がこのジャンルの作品を書いています。
ト短調といえばモーツァルトの宿命の調性ともいわれますが、交響曲第40番や弦楽五重奏第3番のような切迫した雰囲気はこの曲全体からはあまり感じられません。このことは第1楽章以外は短調が避けられているからかと思われます。
この楽章はアインシュタインが「運命のモティーフ」と呼んだ、烈しい内的な緊張を含んだ旋律が全体を支配しています。


ピアノ四重奏曲 ト短調 K.478 第1楽章 Allegro
余談
(遅ればせながら…)新年おめでとうございます。今年も不定期・気ままな更新のBlogですが、何卒よろしくお願い申し上げます。m(_ _)m

<写真>早朝の田貫湖から望む富士山方面(2016年1月8日撮影)
当地・新潟はいまだに無雪状態で思うような写真が撮れなかったため、所用のついでに富士山方面を撮影してきました。運よく好天に恵まれ、40年ぶりに美しい富士を間近に堪能させていただきました。
富士山は心のふるさと。広大な裾野と気高い頂にはただただひれ伏すのみです。富士山がある国土に生まれ育った幸せを感ぜずにはいられません。