2018年9月24日月曜日

K.456 ピアノ協奏曲(第18番)変ロ長調/第2楽章

1784年に書かれた5番目のピアノ協奏曲は変ロ長調で、自作目録では9月30日付になっています。
ウィーンの盲目のピアニスト、マリア・テレージア・フォン・パラディスのために作曲されたといわれています。彼女は3歳のとき視力を失いましたが、ピアノとオルガンそして歌手として活躍し、マリア・テレジア女帝により年金を支給されているほどの才能があったようです。また彼女は、当時ウィーンでモーツァルトの宿敵だったレオポルト・コゼルフの弟子でしたが、そんな事に頓着しないで曲を書いたモーツァルトは寛大な心の持ち主だったのか、世事に疎かったのかは分かりません。
今日はその第2楽章を聴いてみます。この楽章はピアノ協奏曲では非常に珍しいト短調で書かれていて、楽章の構成は美しい2部形式の主題に、5つの変奏から出来ています。 冒頭の弦楽の響きが哀愁を帯びた旋律で主題を奏でた後に、独奏ピアノが加わるところはとてもチャーミングです。
第1変奏はピアノが主導し、第2・第3変奏はオーケストラとピアノがそれぞれ主導し、第4変奏はト長調に転じます。第5変奏はまたト短調に戻り、主題の冒頭のモティーフが心残りのように何度が演奏され楽章を閉じます。


ピアノ協奏曲(第18番)変ロ長調 K.456/第2楽章 Andante un poco sostenuto ト短調

余談
一時の暑さが嘘のようにすっかり涼しくなりました。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものです。
当地のお米もほぼ刈入れが済んだようです。大きな天災の被害はなかったのですが、夏の高温のために作柄はあまり好ましくなかったようです。
昨日の「きらクラ!」では常連の方々のお名前をたくさん聴けました。BGM選手権では、BWV1000番さんをはじめ、ハイレベルな作品にすっかり魅了されました。
来週は300回記念の「ご自愛ステッカー大盤振る舞い」だそうで楽しみです。この番組がこんなに長く続くのは、何といってもふかわさん、真理さんの素晴らしいコンビネーションの賜物だと思います。これからも陰ながら応援していきます。

2018年9月8日土曜日

K.455 グルックの主題による10の変奏曲 ト長調

1784年8月25日付けで自作目録の7番目にこの変奏曲が記載されていますが、初演されたのは前年の3月23日の皇帝ヨーゼフ2世が臨席されたコンサートで即興で演奏された事で知られています。
この演奏会には、当時ウィーンで帝室作曲家として確固たる地位を築いていた大御所グルックも出席していて、モーツァルトがグルックに敬意を払って演奏したといわれています。(他にもこの演奏会では K.398(416e)の変奏曲も演奏されました。)
この曲のテーマは、グルックの書いたジングシュピール『メッカの巡礼』の一節で「わが愚かなる庶民どもは考える」という上から目線の言葉を滑稽に扱った旋律から取られています。
この頃、ウィーンでのモーツァルトの人気はうなぎ登りで、それをやっかんだ同業者からの妨害もあったようでしたが、このグルックは終始モーツァルトに好意的で、モーツァルトの演奏会にもたびたび姿を見せていたようです。
作品の主題はト長調。4分の4拍子で前半が4小節、後半が8小節の2部形式で、その後装飾的な10の変奏が次々と展開されます。5番目はト短調で、9番目のアダージョはこれまでにないような幅広い豊かな表現が見られ、最後は名人芸的な旋律が華々しく繰り広げられて終結します。


グルックの主題による10の変奏曲 ト長調 K.455(フォルテ・ピアノによる演奏)

余談
大きな自然災害が立て続けに私たちの国を襲っています。被災された方々の辛さを思うと心が痛みます。 一日も早い復興をお祈り申し上げます。
地球のプレートが複雑に入り組んだ境界上に位置する私たちの国は、多くの自然の恩恵と同時に、その活動の凄まじいエネルギーのスパークをまともに受ける宿命を背負っていますが、これだけ続くとさすがに落ち込んでしまいます。

2018年9月3日月曜日

K.454 ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調/第1楽章

K.451のピアノ協奏曲を作曲後、モーツァルトはピアノと管弦楽のための五重奏曲 変ホ長調 K.452ピアノ協奏曲(第17番)ト長調 K.453と矢継ぎ早に傑作を生みだします。
そして4月には、今日聴くヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調を作曲しました。
ヴァイオリン・ソナタはモーツァルトが7才から32才の長い期間にわたって書き続けられた最も息の長いジャンルですが、この作品を含めた最後の4曲が1788年迄に作られ、いずれも完成度の高い充実した内容になっています。
このソナタは、当時ウィーンを訪れていたイタリア生まれの非常に優れた女流ヴァイオリニストのレジーナ・ストリナザッキのために書かれたことで有名で、4月29日にウィーンのケルントナートーア劇場で、彼女のヴァイオリン、モーツァルトのピアノによって初演されました。
前作のピアノ協奏曲にも見られた交響楽的なスケール感がこの作品でも反映されています。第1楽章はラルゴのゆったりした情感豊かな導入部で始まり、そのあとアレグロの主要部になり、第1主題とヘ長調の第2主題が活発に展開します。


ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454/第1楽章 Largo - Allegro

Link >> 第2楽章   第3楽章

<写真>ザンクト・ギルゲン(モーツァルトの母の出身地)市庁舎前のヴァイオリンを弾くモーツァルト像