このオペラではケルビーノという伯爵の小姓がたびたび登場します。
どんな女性にでも恋してしまう思春期の少年なのですが、メゾソプラノが歌う役柄(いわゆるズボン役)で、最初観るとこの少年役が女装するというシーンもあって混乱してしまします。 そのケルビーノが登場する第1幕の場面です。
スザンナがマルチェリーナと口論した後ひとりになると、小姓のケルビーノが部屋に入ってきます。
せんだって庭師アントニオの娘バルバリーナと一緒にいたところを伯爵に見つかって追放されそうなので、伯爵夫人にとりなしてほしいと懇願します。「あら最近彼女に恋しているの」とスザンナがからかいます。
彼は目下女性なら誰でもときめいてしまう年頃なのです。ここでケルビーノが歌うアリアです。
「フィガロの結婚」K.492 第1幕『自分で自分がわからない』
<訳> (小学館 魅惑のオペラ 01巻より転載)
ケルビーノ
自分で自分がわからない
火のように燃えては冷め 女と見れば顔は赤らみ 胸は高鳴る。
愛という言葉ひとつに 僕の心は乱れ なぜかはわからないけれど
恋を語らずにはいられなくなる。
目覚めていても恋を語り まどろんでいても恋を語る
水に、影に、山に、花に、草に、泉に、大気に、
むなしいひびきを運ぶこだまにも恋を語るのさ。
たとえ だれも聞いてくれなくても 自分ひとりで恋を語るのさ。
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