2018年12月3日月曜日

K.467 ピアノ協奏曲(第21番)ハ長調/第1楽章

前作のニ短調協奏曲の僅か1ケ月後に、モーツァルトは一転してハ長調の明るいピアノ協奏曲を書き上げています。このように短調を作曲した直後に、対照的な長調の曲を書くことは、モーツァルトによく見られる傾向です。
この作品も、彼自身の予約演奏会(1785年3月10日開催)のために書かれましたが、多忙のためか前作同様に演奏会の前日に書き終えたという慌ただしさだったようです。しかし出来上がった作品は、そのような繁忙さを微塵も感じさせない素晴らしい完成度で、聴く者を魅了せずにはいません。
ここで聴く第1楽章は、行進曲風の明朗なリズムの第1主題で始まります。終始明るい響きの提示部の後に、木管の音色に誘われるように独奏ピアノが登場して、主題を改めて提示します。流麗な旋律を奏でた後に、唐突にト短調の第40番交響曲の冒頭の旋律が現れ意表を突かれますが、この旋律はここで1回のみしか使われないところはユニークです。
その後ピアノがト長調の平明な第2主題をもたらし、色とりどりの短調を装いながら、目くるめく絢爛な響きの世界を展開していきます。オーケストラとの掛け合いも緻密で、豊かな交響的な雰囲気を醸し出しています。
カデンツァ(モーツァルトの自作の譜面は残っていない)の後は冒頭のリズムにより静かに楽章を終えます。


ピアノ協奏曲(第21番)ハ長調 K.467/第1楽章 Allegro maestoso (Cadenza: Barenboim)
Link >> 第2楽章 Andante

余談
モーツァルトの数あるピアノ協奏曲の中でも、この楽章は私の最も好きなもののひとつです。
前作のニ短調の緊張から解放されたかのように、のびのびとしてとにかく美しい!!
最初の音が響いてから全てが流れるように瑞々しく、明快でかつ奥深く、時に哀愁を帯びて心を揺さぶります。特にピアノが第2主題を奏でてから、自由奔放に豊かな旋律を描きながら、オーケストラと天衣無縫のタペストリーを紡いでいく美しさには我を忘れます。
モーツァルトが生涯でこの1曲しか残さなかったとしても、私は大好きになったと思います。(考えてみると、そう言える曲は他にも山ほどありますが・・・・)

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